狭小住宅だからこそ建築家と創る理由と事例10選
都市部で土地の面積が大きく取れない場所にピッタリの「狭小住宅」を特集していきます。 土地の面積だけではなく、隣地が近かったり日射が確保できないといった、その土地ならではの事情が複雑になっているのが都市部の特徴です。
建築家では、工法から間取りまで全てが自由設計になっていることから、一般的なハウスメーカーとプランニングの差が出やすくなります。 今回は、ハウスメーカーや一般的な工務店ではなく、建築家にプランニング・建築を依頼する理由や、狭小住宅の事例をみていきましょう。 また、小さな空間を有効利用する工夫のポイントも解説していきます。
それでは、今回の記事のポイントを冒頭にお伝えします。
- 狭小住宅では、日射や日当たりの確保・隣地との視線・狭さを感じさせないプランニングが重要
- 床面積が確保できない設計の場合、狭さを感じにくい工夫として「視線の抜け」と「天井高さ」を上手く組み合わせる
- 建築家では、工法から自由設計のため土地に合わせた設計をつくりやすい
1. 狭小住宅を建築家に依頼する理由
それでは、まず建築家に狭小住宅を依頼する理由をさぐっていきましょう。
1-1. 狭さを感じさせない視線とデザインの両立
ハウスメーカーなどではなく、建築家で狭小住宅を設計する最大のメリットは、狭さを感じさせない様々な工夫が生み出せることに加えて、デザイン性と両立できる点です。
人間が感じる広さは、単純に床面積だけでは決まることはなく「視線の抜け」をどこまで創れるか?がポイントです。 「視線の抜け」とは、部屋に入った時もしくは部屋でくつろぐ場所から、窓や廊下などで遠くに視線がいくような工夫を言います。 特に住宅では対角線上に視線の抜けを設けることで、床面積以上の部屋の大きさを感じることができます。
建築家は、このような視線の抜けを窓や間取りで創り出し、狭小住宅でも窮屈な印象を与えないような設計でカバーしてくれるでしょう。
そして ” 標準仕様 ” が決まっている住宅会社とは異なり、施主様の要望を超えるデザイン設計を提供できる点も建築家に依頼するメリットです。
1-2. 一般の住宅会社との差
結論から申し上げると「工法・デザインを1から創り上げることができる」点が最も大きい違いです。
例えば一般のハウスメーカーでは独自の工法を採用しているがゆえに、型式認定を取得していることが多く、自由設計と言えど制約が意外と多いことがあります。 また、図面を設計士が描く会社もいれば、営業が自分でプランニングする会社もあり、会社や人によるプランニング能力の差が非常に大きいことが特徴です。 一方で、建築家はその人が一からプランニングを起こすため、過去の建築事例を見ると傾向やレベル感が分かりますが、どれもレベルの高い建物ばかりです。
狭小住宅の場合も、最適な工法を選択し、デザインで狭さを感じさせない設計を組み立てることもできることから、プランニングや唯一無二のデザインにこだわりたい方には建築家がピッタリと言えます。
2. 狭小住宅の設計のコツ
それでは、建築家が狭小住宅を設計するときに考えているコツの一部を紹介していきます。
2-1. 窓の工夫
まずは、窓の設計によって「視線の抜け」を創り出すことです。 窓は一般的な腰高や掃き出し窓だけではなく、天窓・高窓・地窓といった窓との組み合わせや、事例のような吹抜との組み合わせ等で光を取り込むとともに広さを演出します。
特に狭小住宅の特性としては、必然的に隣地が近くなります。
吹抜が取れない場合、プライバシーを確保しやすい窓として、天窓・高窓・地窓といった主張しすぎないオシャレな雰囲気を出しやすい窓を活用するのも良いでしょう。
これらの窓を上手く活用することで、設計上に必要な「視線の抜けを確保」し「隣地の視線とのバッティング」を防ぐこともできます。
2-2. 階段の工夫
つづいて狭小住宅をプランニングする上で悩みになりやすい点が階段です。
狭小住宅は土地の面積が限られていることから、3階建て以上になることも多いです。
一般的に箱型階段と呼ばれる、階段の両側に壁があるタイプの階段では、なかなか開放感を出しにくいですが、オープン階段やらせん階段を組み合わせることで、コンパクトな建築面積を有効的に活用できます。
オープンな階段は、1 階 ~ 2 階の光を通しやすく下階の採光を確保しやすい特徴があります。 しかし、らせん階段やオープン階段はインテリア全体のバランスだけなく、構造躯体にも関わってくるため設計が難しいのですが、建築家には幅広い引き出しがあります。
2-3. 吹抜・天井高の工夫
同じ床面積でも天井高で視線の広がり、在室している時の圧迫感が変わってきます。
狭小住宅では、北側斜線・道路斜線といった法的な規制によって、建物の高さが制限さrれることがあり、土地や間取りによっては建物全体から考える必要があります。
また、 2 階建ての 2 階にリビングを持ってくると、屋根裏を利用して勾配がついた高い天井高を実現しやすくなったり、隣地との視線も気になりにくくなります。
2-4. 外部との連続性の工夫
家は室内だけでなく、時に外部の景色・風景も室内の一部として取り込むことがあります。
上図の事例は、壁や床を面一(フラットな納まり)にすることで、坪庭とリビングの連続性を強調しています。 まるで坪庭が、リビングと繋がっているかのような窓サッシの設計を行うことで、リビングが少し広がったような錯覚を生み出します。 ここで重要なポイントは、窓サッシの枠を極力小さくすることで、外部との連続性が出ることと、引き違い窓のような枠が目立ちやすい窓ではなく FIX 窓のような窓を設計することです。
また外部からの視線を気にしなくてよい坪庭にしていることで、カーテンを常に閉じなくても快適に過ごせるような設計になっており、連続性の特長をふんだんに活用しています。
3. titel(タイテル)による建築家の事例 10 選!
それでは皆さんが気になる titel(タイテル)の建築家による事例をみていきましょう。
3-1. 曲線美の吹抜が魅せる RC 造の狭小住宅
こちらの物件は、敷地面積 112.91 ㎡ に建つ RC 造の施工事例です。
3 階建てになっていますが、落ち着いたダイニングの壁面が天井との連続性で曲線を描いているのが特徴的な事例になっています。 単純な吹抜を設けるのではなく、RC 造だからこそできるコンクリートでの曲線と、そのカーブを照らす照明との組み合わせで幻想的なインテリアを創り出します。
まさにオシャレな家族にピッタリな、都会的な建物です。
3-2. 吹抜で開放感を演出する都市型住宅
こちらの事例は、東京都内で敷地面積が 87.76 ㎡ に建つ事例です。 都内等は駐車場を確保しようとすると、1 階が駐車場や寝室、2 階以上にリビングをもってくるケースが多くなってきます。
この際に隣地も同じような条件であることが多く、視線の被りが発生することも考えられるため、今回の事例では吹抜を大きくとり、吹抜からリビングに採光をしっかり取り込んでいます。 リビングの上部に大きな開口を設けることで、隣地や道路からの視線を気にせず生活することができます。
3-3. 「採光 × 吹抜」を活用した狭小住宅
敷地面積 52.18 ㎡ に建つ住宅ですが、梁が露わになった吹抜がある 2 階リビングが印象的な案件です。 3 階の室内開口と面する部分に格子状の床面を作ることで、安全上の配慮と同時に 2 階からの視線の抜けを確保できています。 建物は木造の準耐火構造ですが、梁のみ燃え代を確保することで木をあらわにすることができ、全体に木のやさしさとナチュラルなリズムを与えている点も、建築家のデザインへのこだわりと言えます。
また施主様が車を所有していないことから、1 階は一般的に車庫になるスペースを大きな土間に設計しています。 用途を限定しない土間エントランスは、すべて開け放てる建具を併用しており開放的な使い方もできるようになっています。
3-4. スキップフロアに吹抜を組み合わせた狭小住宅
こちらの事例も、土地の幅は狭い都市型住宅です。
右図の図面で解説していくと、家の中央部に位置する吹抜にそれぞれの部屋が面するスキップフロアの多層階構造になっています。 それぞれの部屋がスキップフロアと面することで、室内側に広さを感じることができます。 また、階段には蹴上板(階段の踏板との間にある垂直の板)がないことで、より一層オープンな空間を創り出すことができ、狭さを感じにくい工夫がされています。
3-5. スキップフロアで生み出す多層階の空間と広がり
こちらの事例ではスキップフロアを活用した事例です。
スキップフロアは階段を組み合わせた、多層階の設計であることから、吹抜と併用しやすい設計手法です。 事例でも必要最小限のリビングながら、スキップフロアが創り出す天井高さと、大きな開口によって開放感を確保できています。
都市型の狭小住宅ではありますが、狭苦しいような雰囲気は全くなく、周囲とのつながりも意識されて設計されていることで、明るくのびやかな建築に仕上がっています。
3-6. 採光用の吹抜を活用したモダン住宅
3 階~ 2 階への連続した吹抜が印象的な狭小住宅の事例です。 トップライトからの光を、3 階のキッチンを経由して 2 階の個室まで明るく照らします。 LDKの真ん中にはトップライトがあることで、太陽の動きに伴って室内の印象が異なる影を創り出す点も建築家ならではの工夫です。
こちらの事例は3 階にも大きな開口を確保している一方、2 階はセットバック(奥ませるような設計)しています。 これはプライバシーを確保しやすくすると共に、テラスができることで敷地前の川に面した場所がうまれます。 季節によっては、心地良い風が抜ける癒しの場所を創り出しています。
3-7. 幅が 2.3 m の狭小賃貸併用住宅
7つ目の事例はなんと家の幅が 2.3 m と、狭小住宅の中でも特に幅が狭い事例です。 幅は非常にコンパクトでも、奥行きを上手く活用していることから狭さを感じにくい工夫がされています。
物件自体は、賃貸併用住宅となっていますが、オーナーが居住する 2 階 ~ 3 階は奥行きに加えて高さや階段を上手く活用して、視線の抜けを創っています。 事例写真の 2 枚目の 3 階部はロフトで生活空間を確保しつつ、2 階へ繋がる階段をオープンなデザインにしている点が建築家のポイントと言えます。
3-8. 庭との連続性とプライバシーを両立した狭小住宅
都内に建つ木造 2 階建ての住宅の事例ですが、特筆すべきポイントはリビングと中庭(玄関~門までの通路)との連続性です。 リビングと中庭との境は、大きな FIX 窓になっており枠などを設けていません。 窓枠がないことで中庭と連続性が出て、まるでそのまま庭に出ていけるような雰囲気を創り出します。 これにより、リビングの床面積以上の広さを感じることができることと同時に、フレームがない美しさでデザイン性を際立出せています。
3-9. ファサードから見える階段が特徴の 3 階建て二世帯住宅
土地の幅としては、約 2 間( 3.6 m )に建つ都内の二世帯住宅です。 屋上へ伸びる階段ホールに 4 つ目の窓を設けることで 4 階建てのような設計になっている事例です。
細長い敷地形状のため、家の奥まで光が届くような配慮がされています。 各階の南側の大きな窓はできるだけ大きく確保されており、光を取り込む目的と空間の広がり・風の抜けを創り出します。
3-10. 高天井が特徴の建築家の自邸
最後は、高天井によって広さを創り出している事例です。 各部屋の幅を 1.55 m に設定していますが、これは 1.55 m の幅があればどの居室でも生活できることを自ら証明するために設計したとのこと。 この少しコンパクトな幅の中で感じる親密な感覚とともに、天井の高さ(長さ)によって空間の解放感を感じることができ、訪れる方で窮屈さを感じる方はいなかったとのことです。
建物の最上部に窓を設けることでプライバシーを確保しながらも、日中は陽射しを感じることができる工夫がされており、新しい空間の創り方を提案してくれる事例になっています。
4. まとめ
事例をご覧いただきながら、狭小住宅を建築家と創る「理由」を感じていただけましたでしょうか。 事例の写真からも、コンパクトながらも窮屈さを感じさせない雰囲気が伝わっていたのではないでしょうか。
これも建築家による設計力によるものが大きいことと、建築家だからこそできる工法やプランニングの自由度から生み出せる設計力が最大の魅力です。 狭小住宅は特に、大きい家に比べて繊細かつ差が出やすい特性もありますので、都市部で狭さを感じにくい、オシャレな狭小住宅を検討している方は、ぜひ titel(タイテル)の建築家に相談してみてください。
タイテルでは、専門家による相談を無料で受け付けております。もし判断に迷った場合は、ぜひお気軽にご相談ください。