一級建築士・一級建築士事務所とは?建築家との違いはあるの?
家を建てるときの情報を集める中で、「一級建築士」という言葉も、建築家と同様に目にしたことがある人も多いでしょう。
「一級建築士ってどんな人?何の仕事をするの?」「住宅は依頼できる?どこまで家づくりに関わるの?」このような疑問を持つ人もいるかもしれません。
そこで今回の記事では、一級建築士とはどのような人を指すのか、建築家と何が違うのかを説明します。また、一級建築士事務所の仕事内容についても解説しますので、ぜひ参考にしてください。
- 一級建築士とは、国土交通省大臣の認定を受け、建築の設計や工事監理、その他の業務を行う専門家
- 多くの「建築家」と呼ばれる人たちは一級建築士の免許を持っている
- 一級建築士事務所の業務内容は、企画調査・設計図の作成・工事監理・引き渡しの立ち会いなど
- 住宅を依頼するときは、資格の種類だけではなくあなたにあった家を建ててくれるか、経験が豊富かという点に着目するのがおすすめ
1. 一級建築士・一級建築士事務所とは
家づくりに関わる情報を集めていると、設計事務所のWebサイトや交換した名刺に、「一級建築士」などの肩書を目にした人も多いでしょう。
ここでは、一級建築士とはどんな人を指すのか、一級建築士事務所とは何か、建築士と建築家の違いは何かの 3 点について解説します。
1-1. 一級建築士とは?どんな仕事をする人?
一級建築士とは、国土交通省大臣の認定を受け、建築の設計や工事監理、その他の業務を行う専門家のことをいいます。
一級建築士は、大型商業施設や病院・学校などの公共施設や病院、個人住宅など、ありとあらゆる建物の設計ができます。建物の安全性を考慮して設計するのが仕事です。
また、一級建築士は資格の名前でもあり、建築士の資格の一つです。建築士の資格には、一級建築士・二級建築士・木造建築士の 3 つがあり、資格ごとに設計できる建物の規模や構造に違いがあります。
一級建築士は、取り扱える建物の規模が大きいため、二級建築士や木造建築士と比べて、設計業務の内容も高度かつ幅が広いのが特徴です。
一級建築士の仕事内容には、設計業務と工事監理業務があります。さらに設計業務は意匠設計・構造設計・設備設計の 3 つに分けられます。建物の設計と聞くと、外観や内装のデザイン、部屋の配置や間取りを想像する人が多いかもしれません。
しかし、ひとつの建物を設計するには、法律や構造、換気や給排水、ガス、防災など、さまざまな要素を考えながら設計していく必要があります。これは、商業建築物だけでなく、戸建て住宅も同様です。
どこかに不具合があれば、違法建築や安全性が保たれない建物が出来上がってしまいます。そのため、一定の規模以上の設計をするには、国家試験に合格して免許を取った建築士だけが業務を行うことができるように定められています。
1-2. 一級建築士事務所とは
街の看板などで、「○○一級建築士事務所」という名称を見たことがある人もいるかもしれません。「一級建築士事務所」と名前をつけることは、その事務所に属する管理建築士が一級建築士であることを示しています。管理建築士とは、設計士事務所の業務のうち、技術的な事項を統括する建築士です。
しかし事務所の名前に「一級」と入っていないから一級ではない建築士が行っているとは限りません。一級建築士事務所の名称には、明確な決まりはないからです。「○○デザイン室」「アトリエ○○」「○○建築設計事務所」などの名前であったとしても、一級建築士が営む事務所だというのは、よくあることです。
1-3. 建築士と建築家の違いは
一級建築士と似たような表現に、建築家という職業の呼び方があります。「建築家」の呼び方に、明確な定めはありません。一般的には、建築士資格を持ち、「意匠」の設計を担当する建築士が「建築家」と呼ばれています。
一方で、建築士は、建築士の国家資格を持っている人を指します。しかし建築士の免許を持っていても、設計業務を行わない人も少なくありません。都道府県庁や市役所の建築職や、教育現場で建築を教える人などがいることを踏まえると、分かりやすいかもしれません。
建築士は免許を持つ専門家を指し、建築家は建て物のデザインから構造、設備まで総合的な設計を手がける人を指すと言えるでしょう。
設計事務所や建築家について、もっと詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
2. 一級建築士事務所は何をするの?仕事内容を解説
建築士事務所で行われる主な仕事は、建物の設計と工事監理です。一つの建物が完成するには、企画段階から引き渡しまでおおまかに以下4つのプロセスに分けられます。
- 企画調査をする
- 設計図を作成する
- 工事監理を行う
- 引き渡しに立ち会う
ここでは、一級建築士事務所が行う仕事内容に焦点をあて、それぞれのプロセスごとに解説します。
建て主の目線で、家を建てる流れを詳しく知りたい人は、こちらの記事をご覧ください。
2-1. 企画調査をする
建築士事務所の仕事は、まず企画調査からはじまります。
- 既存建物の調査…構造調査や改修・建て替えのアドバイスなど
- 土地の測量と調査…敷地の調査や周辺の調査
- 企画調査…建物の用途や規模の検討、法的規制や条例などの調査
- 資金計画…建物全体の資金計画
この企画調査は、建物を設計する前の情報収集をするプロセスだと言えます。
2-2. 設計図を作成する
企画調査が終わったあとの設計事務所の仕事は、設計図の作成です。
- 基本設計…建物の形を作り、工事費概算を出して予算内で実現できるかの確認
- 実施設計…意匠図・仕様図・構造図・構造計算・設備図など設計図書の作成
- 建築確認申請・その他諸官庁申請業務
- 積算…設計図や仕様書を基に工事費を算出
基本設計は、建物の配置図や間取り・外観・面積・概算の工事費などを検討する業務です。これは設計の中でも最も重要な工程で、建て主と完成する住宅のイメージを共有するために行います。施主と打ち合わせを重ねながら要望にあわせ、法律を遵守した建物の設計を行います。
基本設計のあとに行われるのが、実施設計です。実施設計では、建物を施工するための細かな仕様や構造を書き込んだ設計図を作成します。実施設計をもとに、実際の工事見積もりが行われるため、とても重要なプロセスです。
そして実施設計で作成した設計図の一部を使い、建物を建てる自治体に建築確認申請の手続きをします。その他、性能表示制度や補助金の申請業務がある場合もあるでしょう。
次に、実施設計で作成した図面を基に、工事にかかる費用を算出する積算を行います。
2-3. 工事監理を行う
建築士事務所では、工事監理の段階で、以下の業務を行います。
- 施工業者選定…見積依頼、見積もりのチェック
- 契約…工事請負契約
- 工事監理・工程管理…工事期間中の各種検査、施工工程のチェック
- 竣工(しゅんこう)検査…完成引渡し前の検査
一級建築士事務所が行う仕事の一つに、工事監理があります。工事監理とは、設計図や仕様書の通りに工事が行われているかを確認することです。
実際に、工事現場に立ち会い、工事担当者と打ち合わせを行います。そして、工事の工程の中で、施主に代わって、構造や設備の施工が正しく行われているかの確認を行うのも、建築士の仕事です。
例えば、基礎の鉄筋の数量や配置の確認、躯体金物の接合箇所の確認、給排水や空調換気工事が適切に行われたかを目視で確認します。
2-4. 引渡しに立ち会う
工事が完了すると、建築士事務所は、設計者と工事監理者の立場から、設計図どおりに建物ができているかを検査します。不具合がみつかれば、手直しが行われます。その上で行われるのが、建て主を交えての施主検査です。
そして建築士と建て主とは別に、自治体の建築主事が、建築基準法に基づいて完了検査を行います。各検査が無事に終わると、引き渡しとなります。
3. 建築士事務所に関するよくある質問
実際には、建築士事務所と聞いても具体的なイメージが沸かず、疑問が出てくることもあるでしょう。
ここでは、建築士事務所に関する、よくある質問に回答します。
3-1. 住宅を建てるのに一級建築士と二級建築士の違いはある?
一般的な戸建て住宅を建てるときは、二級建築士が担当しても問題ないケースが多いです。
一級建築士と二級建築士は、設計できる建物の規模や構造に違いがあります。二級建築士は木造・鉄筋コンクリート造・鉄骨造の設計が行えますが、高さ 13 メートルを超えたり、軒高が 9 メートルを超えたりする建物を設計できません。一方で、一級建築士には制限がなく、あらゆる建物を手掛けられます。
これを言い換えると、「 160 坪の 3 階建て木造住宅」や、「 90 坪以上の鉄筋コンクリート造の住宅」といった豪邸は、一級建築士でなければ設計できません。しかしこれにあてはまるケースは少ないでしょう。一般的な戸建て住宅が 40 坪ほどであることを考えると、どれくらいの広さかイメージできるかもしれません。
そのため資格の種類ではなく、依頼する建築家は住宅の経験が豊富か、自分にあった家を設計してくれるかに着目した方が賢明です。
3-2. 設計料はどれくらいかかる?
建築士に住宅の設計料を依頼すると、一般的な相場は工事費の 10 〜 20 %です。しかし設計料の算出方法に決められた方法はないため、設計事務所の方法や、建築家の知名度によっても設計料の割合が異なることがあります。
また、坪単価で算出されることもあるため、設計を依頼する前に聞いてみるのがおすすめです。
ちなみに国土交通省が定めている設計料の算出方法もありますが、その方法では高額になるケースが多いため、多くの事務所は独自の方法を持っています。
設計事務所の設計料についてもっと詳しく知りたい人は、こちらの記事をご覧ください。
3-3. ハウスメーカーでは設計料がかからないのはなぜ?
ハウスメーカーの見積書では、規格住宅などの場合「設計料」の項目がないこともあります。しかし、住宅の設計には労力や時間がかかるため、設計料がかからないことは考えられません。もしくは、それなりの設計しか行わないことを意味しています。
実際に設計と監理の手間がかかっていても項目としては載せず、総工事費のほかの項目に、分散して含まれていることも考えられます。
また、ハウスメーカーは、規格プランをもとに設計をして、手間を簡略化・簡素化することがあります。これは住む人がどんな暮らしをするのか、土地の周辺環境はどうかといったことを考慮していないのかもしれません。あらかじめ決められたプランだけでは、一邸一邸にあわせた対応ができないことも多いのです。
また、ハウスメーカーでは設計と施工を一つの会社で行うため、工事見積もりの精査や施工業者の選定、工事監理コストをかけません。これは、第三者目線で施工がチェックされないリスクが考えられます。
4. まとめ
一級建築士事務所と、建築士事務所の業務内容を紐解いていくと、建築家の仕事はとても専門的な内容で、かつ幅が広いことが分かります。
建て主の要望を踏まえたうえで、構造・設備、法令のチェック、監理・積算、あらゆる角度から建物の実現性を検証していきます。それが建築家の仕事であり、腕の見せどころです。
あなただけの家を建てるなら、一邸一邸ゼロから建物を考える、建築家に依頼してみるのも一つの方法です。
タイテルでは一級建築士の資格をもつ建築アドバイザーとの無料相談 も行っていますので、個別のご相談などがある際はぜひお気軽にご利用ください。