設計事務所にはどんな種類があるの?業務分類による違いを詳しく解説!
ひとことに設計事務所といっても、さまざまな種類があります。そこで以下のような疑問を持つ人も多いでしょう。
「設計事務所だったら、どこでも家の設計をしているわけじゃないって本当?」「設計事務所にはどんな種類があるの?」
そこで今回は、設計事務所の種類と仕事内容について詳しく紹介します。設計事務所に関して、ありがちな質問についても解説するので、ぜひ参考にしてください。
- 建築設計事務所には意匠設計・構造設計・設備設計の3種類がある
- 意匠設計事務所は、アトリエ系・組織系・コンサル系の3種類がある
- 住宅を依頼するのは、主にアトリエ系設計事務所
- 設計事務所に家の設計を依頼するとあなただけの家づくりができ、施工を公平な専門家目線でチェックしてもらえることが最大のメリット
- 建築家に依頼すると、構造・性能・品質についても予算の掛け方次第で柔軟に対応してくれる
1. 設計事務所とは?種類による仕事の違いはなに?
建築設計とは、建物と設備に関わる仕事が含まれています。そのため、ひとことで設計事務所といっても業務は多岐に渡り、どの仕事を主軸としているかは設計事務所によって違います。
仕事内容によって、建築設計事務所は大きく分けると以下 3 つがあります。
- 意匠設計事務所……建物の外観や内装のデザイン設計
- 構造設計事務所……耐震・耐荷重など安全安心を守るための設計
- 設備設計事務所……電気設備や衛生設備などインフラの設計
大手の設計事務所では、一社の中にそれぞれの部署があることもあります。次の項からは、それぞれの設計事務所の特色と仕事内容を解説します。
2. デザイン性の高いおしゃれな建物を建てる!意匠設計事務所
マイホームを建てるときには、設計事務所の中でも意匠(いしょう)設計事務所に仕事を依頼することになります。
意匠設計では、主に建物の外観や内装のデザインを行いますが、設計するのは形や見た目だけではありません。お客様から要望を聞き取り、デザインとともに間取りや使い勝手を決め、予算内で建てられるか、建築基準法に適合しているかを検証します。
意匠設計を行う設計事務所は、大きく分けて以下3つに分けられます。
- アトリエ系設計事務所
- 組織系設計事務所
- コンサル系設計事務所
ここではそれぞれの設計事務所について詳しく紹介します。
2-1. アトリエ系設計事務所
アトリエ系の設計事務所とは、建築家が主催する設計事務所です。規模は、社員が 5 〜 10 名ほどの小規模の事務所が多くみられます。また、個人や夫婦で営む設計事務所もあります。安藤忠雄や伊東豊雄のような、いわゆる建築家と呼ばれる人たちが属しているのが、アトリエ系の設計事務所です。
アトリエ系設計事務所が主に手掛けているのは、住宅・店舗併用住宅・小規模の商業施設・公共施設などです。企画や設計コンペティション、基本設計や街づくり設計などに力を入れている事務所も多くみられます。
アトリエ系設計事務所が得意とするのは、観念的な部分を深く追求し、それを建築で表現することです。例えば、建築と人とのつながり、社会の中での建築のありかた、人の住まいと家の関係性などを建築デザインで表現することも得意だといえるでしょう。
アトリエ系設計事務所についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
2-2. 組織系設計事務所
組織系設計事務所とは、100 〜 1000 人規模で設計専門業務を行う事務所のことです。主要都市に支店があり、意匠設計、構造設計、設備設計から施工監理までを行う会社が多くみられます。
組織系設計事務所が手掛けるのは、主に商業施設や公共施設などの設計です。東京スカイツリーなど時代を象徴する建築物を手掛けることもあります。住宅の設計を受けるケースはあまり多くありません。
2-3. コンサル系設計事務所
商業施設や公共施設などの建物を建てるときなどに、建築全般の意見を聞くアドバイザーとしての業務を行うのが、コンサル系設計事務所です。
建物だけでなく、街づくりや都市計画、確認申請、資金面やマンションの修繕計画など、その他建築に関わる業務を行います。
住宅コンサルタントという名前で、バリアフリーデザインなどの相談に応じる事務所もありますが、基本設計や実施設計を行うケースは基本的にありません。
3. 建物の耐震性や構造のプロ!構造設計事務所
建築構造設計事務所は、建物にかかる荷重や強度を計算し、建物の安全な設計を考える業務を行います。建物の地盤についても同様です。
主に、意匠設計事務所や建設会社、宮内庁から構造計算業務を依頼され、構造図の作成を行います。
一般住宅の構造計算を、建て主が構造設計事務所に直接依頼するケースは多くありません。住宅で、鉄筋コンクリート造、鉄骨造、または特殊な構造の設計をするときは、意匠設計事務所を通じて、構造設計士に計算を依頼することがほとんどです。
4. 電気と給排水設備の専門家!設備設計事務所
建築設備設計事務所は、設備設計を行う事務所です。設備設計には、電気設備設計と衛生設備設計の 2 つがあります。
- 電気設備……照明やコンセント、インターネット配線など
- 衛生設備……排水・給水経路や位置、空調換気など
設計事務所と聞くと、意匠設計や構造設計を思い浮かべることが多く、設備はプラスアルファだと考える人も少なくありません。しかし設備は、建物の中で人が快適に過ごすために、必要不可欠なものです。
室内環境を整え、エネルギー効率をよくする重要な役割を担うため、デザインや構造とともに、設備もしっかりと設計する必要があります。
主に、設備設計事務所が担うのは商業施設や公共施設などの仕事です。一般住宅では意匠設計事務所が設備関連も計画するため、直接依頼するケースは少ないでしょう。
5. 設計事務所の種類についてよくある質問
設計事務所は、意匠・構造・設備とそれぞれに専門が異なるため、一般の人からみると、具体的な仕事の違いが分からないこともあるでしょう。
ここでは、設計事務所に関して、よくある疑問を解説します。
5-1. 設計事務所に家の間取りを依頼するメリットは?
設計事務所に家の設計を依頼すると、あなただけの家づくりができることが最大のメリットです。
ハウスメーカーとは違い、設計事務所にはパッケージ化された商品はありません。そのため、設計事務と家を建てると、ゼロから間取りを設計していきます。
土地の形や気候などの環境、家族構成や趣味によって、ライフスタイルは十人十色です。設計事務所なら、建主にあわせた家をつくるために、柔軟に対応できます。
また、設計事務所に依頼すると、施工は別の工務店に依頼します。工務店やハウスメーカーに依頼すると、設計と施工が同じ立場で行われ、建主からは見えにくい調整が行われることも少なくありません。
第三者の立場である設計事務所に依頼することで、施工が公平に行われているかプロの目でチェックしてもらえます。
設計事務所と一緒に家を建てるメリットについて、もっと詳しく知りたい人はこちらもぜひ参考にしてください。
5-2. 設計事務所とデザイン事務所の違いは?
設計事務所とデザイン事務所の違いに明確な決まりはありませんが、一般的にデザイン事務所と設計事務所は行う業務が違います。
一般的に、建築で「デザイン」といえば視覚的・表面的なものを表します。対して、計画を実現させるために検討・検証を行い、設計図を作るのが「設計」です。この設計には、建築関連法案に適合しているかの検証も含まれます。
例えば、デザイン事務所で建築関連の仕事を行う場合、店舗などのイメージ図だけを作り、実際の施工図面は設計事務所に依頼することもあるでしょう。
住宅の設計では、都市計画法や建築基準法が深く関わるため、設計事務所に依頼します。
5-3. リフォームやリノベーションはどの設計事務所に頼めばいいの?
リフォームやリノベーションの依頼先は、意匠設計事務所です。
住宅の耐震診断は、意匠設計事務所も構造設計事務所も行っています。しかし、耐震診断を受けての補強設計や改修の設計はデザイン(意匠)の範疇となるため、意匠設計を行っている事務所を選んだほうがスムーズです。
5-4. 設計事務所って図面だけ頼めるの?
一般的には、設計事務所に描いてもらった図面を持って、工務店に施工を依頼しても引き受けてもらえることが多いでしょう。
しかし、設計事務所は図面だけを描いて終わりではありません。図面通りに施工が行われるか、工事の監理するのも設計事務所の仕事です。
基本的には、間取りの設計から(場合によっては土地探しから)引き渡しまで、設計事務所が関わります。建築業者の見積もりに対しても、設計事務所が建主の立場に立って交渉してくれることもあるでしょう。
5-5. 設計事務所で家を建てる場合は住宅の性能も求められる?
設計事務所は、品質や性能に関しても柔軟に対応しています。地震に強い家、長持ちする家は、設計や予算の掛け方次第で実現可能です。住宅性能表示や長期優良住宅認定制度を利用するのも良いでしょう。
ハウスメーカーでもらった耐震性や品質を訴求するカタログをみると、とても高性能に見えるかもしれません。一般の人に分かりやすい構造資料を持つ設計事務所はほとんどいませんが、施工を監理する立場であるのは大きな強みです。
ハウスメーカーとは違い、施工業者としがらみのない設計事務所は、建て主であるあなたと同じ立場から、住宅の品質や構造をチェックします。
6. まとめ
設計事務所には、大きく分けて意匠・構造・設備設計事務所があり、意匠設計の中でもデザイン系・組織系・コンサル系の設計事務所に分かれます。
マイホームを建てるときには、意匠設計事務所に依頼します。リノベーションも同様です。設計事務所との家づくりは、敷居が高いイメージがあるかもしれません。
しかし、柔軟性があり幅広い要望に対応しやすいのは、実はパッケージプランを持たない設計事務所です。あなただけの家を建てるなら、設計事務所に一度相談してみてはいかがでしょうか。