後悔しないための陸屋根のポイント解説!事例も紹介
スマートな住宅の外観を創り出す手法の1つとして、よく採用される屋根形状が「陸屋根」です。
陸屋根の住宅は、スタイリッシュかつスマートな外観の印象を与えると同時に、気を付けるべきデメリットもあります。 メリットだけではなく、デメリットもふまえて陸屋根を採用するかどうかの参考にしてください。 そして、titel(タイテル)の建築家による陸屋根で設計された事例もみていきましょう。
それではまず、今回の記事の重要なポイントです。
- 陸屋根(りくやね・ろくやね)は「平らな屋根」のことで、スタイリッシュかつスマートな外観を創り上げます。
- 陸屋根のメリットは、屋上に有効的な空間をとることもでき、屋上庭園や屋上テラスなど贅沢な空間を創り出すことです。
- 太陽光発電の容量を寄棟等に比べて多く搭載でき、雪が多い地域では雪の滑落も防止できます。
- 陸屋根のデメリットは、定期的な防水メンテナンスが必須であることです。
1. 陸屋根とは
まず陸屋根とは、カンタンに解説すると「平らな屋根」のことです。 建築用語で「陸」(りく・ろく)は、水平という意味を表しており、読み方は「りくやね」とも「ろくやね」とも呼ばれることがあります。
建築用語では、よく不陸という言葉が使われていますが、意味としては水平が取れていない、ということになります。
それでは、まず陸屋根のメリットからみていきましょう。
2. 陸屋根のメリット
主な陸屋根のメリットは 4 つです。
2-1. デザイン性
まずは家の外観をスタイリッシュに仕上げることができる点です。
「家は三角屋根」が一般的なイメージがあるのではないでしょうか。しかし上図の事例のように、ガルバリウム鋼板のシャープなイメージの住宅であれば、むしろ屋根を平らに仕上げる方がマッチしています。
内観と合わせて、スタイリッシュ・シャープなイメージに仕上げていきたい方にはオススメの屋根形状と言えます。
2-2. 屋上として空間を利用できる場合もある
陸屋根は平らであることから、一般的な屋根とは異なり、人が上りやすいことから様々な空間利用ができます。
例えば、夏場の遮熱対策を兼ねて「屋上緑化」として、簡易的なガーデンを創ることもできます。 都心部の狭小地で庭が取れない方で、プライベートなガーデニング空間を楽しみたい方にはピッタリの設計です。
また、屋上空間をテラスのようにウッドデッキなどを敷き詰めることでバーベキューをしたり、洗濯物を干す場所にしたりと、庭の代わりにすることができます。2 階建てであれば、陸屋根の屋上部分は実質 3 階部分に位置し、隣家などからの視線が交わることも少ないです。
中には露天風呂を屋上部分に設計するようなこともあり、通常の庭に比べてプライベート感もあり、贅沢な空間として様々な利用方法があります。
2-3. 雪の滑落のリスクが少ない
積雪が多い地域では、あえて陸屋根にすることがあります。 特に札幌や旭川においては、陸屋根が主流になっており街並みさえ、本州の一般的な温暖地とは異なります。
理由は、三角屋根にしていくと雪が滑落してきて危険なためです。そのため、陸屋根にすることで滑落を防ぎ、家の中心部に排水溝を設けて排水を行うことで、家の四方に雪が大量に滑落することを防止しています。
その際は、積雪の重量に耐えることができる構造設計になり、一般的な構造より太い柱や梁を使用するなどの対策が必要です。 また、場合によっては陸屋根は屋根に上りやすく、雪下ろしの作業がしやすいこともあります。
2-4. 太陽光発電の容量を多く搭載可能
実は陸屋根は、寄棟や切妻屋根に比べて太陽光発電を多く搭載することができます。
寄棟や切妻屋根では南面を中心に太陽光発電を搭載するため、載せることができない面が出てきます。 それに対し、陸屋根であれば全面に搭載が可能で、かつ外観を気にすることなく設置できます。
太陽光発電はメリットが多いアイテムではありますが、外観を気にする場合に設置に躊躇される方も少なくありません。その際、陸屋根であれば下から見たときに、目立つことなく設置できます。
また、太陽光発電のベストな設置時の傾斜角は 30 ~ 40 度と言われていますが、陸屋根に並べて設置する場合、傾斜角度は 0 ~ 10 度程度になります。
傾斜角の面では不利になりますが、朝から夕方まで光が当たる時間が長くなり、効率が少々落ちても日射の当たる時間でカバーできます。
そのため、陸屋根でも発電量の面で不安になる必要はありません。
3. 陸屋根のデメリット
つづいて、陸屋根のデメリットを解説していきます。 陸屋根では、このデメリットをしっかり把握した上で取り入れることをオススメします。
3-1. 雨漏りリスクが他の屋根に比べて高い
陸屋根は様々な設計があり一概には言えませんが、他の屋根に比べて雨漏りリスクが高い傾向にあります。
当然、新築時点においては防水シート、アスファルトなどを用いて防水を行うことは当たり前のことですが、傾斜角度を付けにくくスムーズに排水できない場所が出来てしまうこともあります。
陸屋根風の傾斜屋根であれば、一般的な片流れ屋根と変わらないのですが、家の中心部に排水を持ってくる設計の場合は、特に雨漏りには注意が必要です。
落ち葉なども溜まりやすいこともあり、排水が詰まらないように定期的に掃除をしたりすることも必要です。
(※ 屋上に上れる設計でない場合、一般の方がハシゴなどで上ることは危険なため避けてください。必ず専門業者によるメンテナンスをお願いしてください)
また経年などによって、水たまりができやすいポイントに、カビが発生するといったこともあり、陸屋根は雨漏り・防水対策をしっかり行うことが必須です。
一般的な木造住宅で三角屋根が多い理由は、「構造」と「防水上の理由」からです。
実は一般的な木造軸組工法では、柱・梁で構成される構造躯体と屋根は分離しています。 そのため本来の屋根の役割である、雨水や日光を遮るもののため三角形の構造物である屋根を、構造躯体本体の上に乗せることが最も合理的だからです。 三角形は雨水が流れやすい構造であり、平らな陸屋根は古来から木造建築では少なかったのです。
ただ木造住宅でも、水が溜まらないような傾斜を設けたり防水処理を施せば、陸屋根の設計・施工を行うことは可能です。
一方で、鉄骨造や鉄筋コンクリート造では陸屋根の割合が増えますが、これは人が乗っても問題ない構造上の強度なども関係しています。
マンションなどの高さが高い建物は、強度以外に、メンテナンスのために階段で屋根部分に行けるように陸屋根にしている、という側面もあります。
3-2. 屋根メンテナンス費用が比較的安いが頻度が多い
上記の雨漏りリスクと相関するデメリットですが、一般的な瓦屋根に比べてメンテナンスの頻度が多くなります。
防水のやり替え工事の目安は 10 年です。 防水工法によっては、 15 年程度まで耐用年数がある工法もありますが、できれば 10 年程度のサイクルで行った方が無難でしょう。
それ以外にも積雪や大雨の時に、排水が追いつかずオーバーフローすることを避けるため、排水処理をしっかり行う必要性が高いです。 三角屋根に比べ、ゴミが溜まりやすいことから排水詰まりを避けるためのメンテナンスも同時に必要です。
ただし、陸屋根の場合は頻度が多いですが、足場を組まなくても良い場合が多いため、1 回あたりのメンテナンスコストは三角屋根に比べて安くなる傾向にあります。 メンテナンスコストおよび専門業者に依頼した方がいい頻度は、陸屋根の設計にも左右されてくるため、建築家に相談してベストなメンテナンス周期を把握しておきましょう。
3-3. 断熱材を薄くすると夏に熱いことも
断熱方法にもよりますが、三角屋根は 2 階の上に小屋裏空間があるため、直接日射を上から受けにくいです。 一方、陸屋根は 2 階の上部が直接的に日射に晒されることから、断熱を厚めに行うことが必要です。
昨今は、断熱性能が高い断熱材も多くありますので、種類や厚さなどは建築家が最適な断熱材を選んでくれますが、相談する際には気にかけておきましょう。
また日射を避ける方法としては、屋上緑化にすることや太陽光発電を載せる方法があります。 建物本体から直接的な日射を防ぎ、夏場の暑さをある程度軽減することができます。
4. 陸屋根の雨漏り対策(メンテンナンス)
それでは陸屋根の重要な対策である、雨漏りを防止するメンテナンスについて紹介していきます。 陸屋根を採用する場合、ここはしっかり確認していきましょう。
4-1. メンテナンス周期は 10 年~ 15 年に 1 度
デメリットの解説の際に少し触れましたが、メンテナンス周期は 10 年周期を推奨しています。 新築時に施工した防水方法にもよりますが、最も耐久性の高いアスファルト防水では 20 年程度の耐久性があります。
ただ、早めに点検をかねて雨漏りの確認を業者にしてもらい、必要に応じて防水処理を施す方が良いでしょう。
雨漏りを 1 度起こしてしまうとやり替え作業が非常に困難で、夏場であればカビや腐食の進行が早くなります。
4-2. 防水方法は 4 種類
メンテナンス時の防水処理は、新築時に行った防水処理と同じ方法で行うことが一般的ではありますが、防水処理の種類に少し触れておきます。
費用面・耐久性、注意点や向いている用途などを一覧表にまとめています。
防水処理方法 | 費用 | 耐久性 | 特徴・注意点など |
---|---|---|---|
ウレタン防水 (採用が最も多い) |
並 | 並 (10 年) |
形状に合わせて施工しやすく、 メンテナンスにも採用が多い 工期が長い( 1 週間前後) |
シート防水 (比較的採用が多い) |
安い | 並 (10 年) |
コスト重視の方におすすめ 繋ぎ部分など施工が難しい |
FRP防水 | 安い | 低 (6 ~ 7 年 目安) |
人が出入りする陸屋根向き メンテナンス周期が早い |
アスファルト防水 | 高い | 高 (20 年 目安) |
RC・鉄骨の新築向き |
陸屋根の形状・用途・構造躯体の種類によって、建築家がベストな方法をオススメしてくれますが、一般的な違いがこちらになります。
5. 建築家による陸屋根の事例 11 選
それでは多くの方が気になる、titel(タイテル)の建築家によるデザイン性の高い陸屋根の建築事例の紹介です。
自分に合った建築家と話がしてみたい・良い設計事務所を紹介してみてほしいという方は、タイテルの建築家紹介 も便利です。
5-1. 諏訪山の家|Suwayama House
こちらの事例は、鉄筋コンクリート造の陸屋根の事例です。
屋上空間はテラスのような開放的な空間として、安全に上がれるようになっています。
ベンチなども備え付けてあり、バーベキューなど大人数が乗っても大丈夫な設計になっており、贅沢な空間になっています。
夜間は照明による演出で、さらに高級感を創り上げています。
5-2. 木箱の家
こちらの事例は、木造住宅における陸屋根の事例です。
家のコンセプトもできるだけシンプルに仕上げることを目指しており、内装・外観のシンプル美を引き出すため、陸屋根による設計になっています。
陸屋根の庇もスマートなタイプを採用し、きれいなスクエア型を創り上げています。
5-3. 湯布高原のVILLA
面と線で直線的に設計された建物での、陸屋根の採用事例です。
石で作られた大きな壁が特徴になっている建物ですが、直線で構成されたデザインになっており、陸屋根がピッタリな建物です。
5-4. 八重咲町事務所併用住宅|Yaezakicho Office & Residence Compound
建物全体が鉄筋コンクリート造で構成されており、陸屋根で仕上げることでデザイン性をよりスタイリッシュにしています。
鉄筋コンクリート造の無機質な雰囲気と、窓の配置・ガレージともに直線的な構成でデザインされており、陸屋根がマッチしています。
事務所併用住宅として設計されており、事務所部分が正面の陸屋根で構成されています。
5-5. House In Kita-Koshigaya 北越谷の住宅 / 2018
こちらの事例は、陸屋根に上れる階段室があり、テラス状になっている事例です。
コンセプトとして、本格的な仕事場・多種多様な趣味・アクティビティの居場所を取り入れた住宅になっており、テラスはまさに多様な使い方ができる場所です。
都心部で庭などが広く確保できない場所でも、こういった開放的な空間があることにより生活にも、気分的にも充足感を与えてくれるでしょう。
5-6. 「 H 」型の平面形状
こちらの事例は、直線で構成されたスクエア型の住宅における陸屋根の事例です。
1階・2階がツートーンで分けられていることも特徴的ですが、陸屋根がスマートな魅力をさらに引き出しています。
構造体は「SE構法」を採用する事で、正面側他に大開口を実現すると共に、大空間のLDKもあり、外観に合わせた開口もデザイン性よく設計されています。
陸屋根部分の庇も目立ちにくい納まりになっており、シャープな印象に仕上げています。
5-7. L-Court House
メリットの項目でもご紹介した事例ですが、シルバー色のガルバリウム鋼板の外壁との組み合わせた陸屋根の事例です。
正面側に窓がなく、接道側からの見た目もスマートな印象に、陸屋根がちょうどいい設計になっています。
内装も含めてシンプルなデザインで統一されており、外観も陸屋根でシンプル美を最大限に引き出す設計になっています。
5-8. 東浪見の別荘
こちらの事例は、増築部分の平屋の上を陸屋根およびテラスにしている事例です。
暖かい日には、テラスに出てバーベキューや昼食などを楽しむこともでき、開放感溢れる別荘になっています。
1 階の屋根を陸屋根として設計していることで、上階に上ったときも高すぎない位置で恐怖感も少なく、テラスを楽しむことできます。
1 階部分のテラスとのシンクロもデザイン的にも、使い勝手的にも天候などに応じて幅広い使い方ができます。
5-9. 初台の住宅 〜アトリエのある住まい〜
こちらの事例は、縦張りのブラック色のガルバリウム鋼板と、ピッタリ合っている陸屋根の事例です。
アトリエを併用した住宅になっており、作品を見に来た方にもスタイリッシュな印象を与えてくれます。
アトリエとして、デザインに重きを置いた設計になっており、陸屋根で高いデザイン性を実現している事例の1つと言えます。
5-10. RIGID FRAME 02
正面から見た時に、縦に広い霞ガラスによる窓が印象的な建物でも、陸屋根採用事例です。
夜間には照明によって、やさしい光で近未来的なデザインを創り出します。
こういったスマートな設計の建物では、陸屋根のデザインが合いやすく、今回の事例も陸屋根を採用して直線的なスタイリッシュなデザインに仕上げています。
5-11. WHITE COURT HOUSE
外観はホワイトを基調としたシンプルな装い、内部はブラック・ホワイトでデザインされたナチュラルモダンの住宅事例です。
縦滑りの細い窓でスタイリッシュな印象ですが、陸屋根にすることでシンプル美が魅力的な事例です。
庇はシルバーで統一されており、全体的にホワイトでシンプルな印象へシャープさを付け加える役割にもなっています。
6. まとめ
titel(タイテル)の建築家による、陸屋根の事例を 11 件紹介してきました。
全ての事例で、シンプル・スマート・スタイリッシュな外観を追求した住宅になっています。
雨漏り対策でメンテナンスが必要である側面もありますが、モダンな住宅に合いやすい陸屋根はデザインを求める方にピッタリの屋根形状です。
それでは最後に、もう 1 度今回の記事のまとめを振り返っておきましょう。
- 陸屋根は「平らな屋根」のことで、スタイリッシュかつスマートな外観を創り上げます。
- 陸屋根は、屋上庭園や屋上テラスなど贅沢な空間を創り出すこともでき、狭小地でもプライベートな空間を創りあげることができます。
- 陸屋根は、定期的な防水メンテナンスが必須ですが、足場を設けずに工事ができます。
- 防水メンテナンス方法は4種類あるが、新築時の施工方法・構造躯体・用途などによって総合的に建築家が判断してくれます。
タイテルでは、家づくりの専門家・一級建築士の資格をもつ建築アドバイザーによる相談を無料で受け付けております。もし判断に迷った場合は、ぜひお気軽にご相談ください。