新築前に知っておくべき延べ床面積のキホンと坪数別の事例
今回は住宅の大きさを表す表現の 1 つでもある「延べ床面積(延床面積)」を解説します。
延べ床面積でコストや家の設計も変わってくることを知っていましたか? そんな延べ床面積に関して、新築前に知っておいた方がいいキホン、を今回はわかりやすく一緒にみていきましょう。
それでは、まず今回の記事のポイントです。
- 延べ床面積とは、柱の中心から柱の中心を結んで囲まれた建物内の面積のこと
- 注文住宅における2020年度の平均延べ床面積は 37.6 坪(124.4㎡)
- 天井高さが 1.4m 以下の場所や、バルコニーなど、延べ床面積に含まれない箇所がある(詳細条件あり)
- 延べ床面積は固定資産税の算出に使われ、新築後 3 年間は延べ床面積 120㎡ まで優遇が受けられる(2021 年 12 月時点・令和 4 年 3 月 31 日までに新築)
1. 延べ床面積(延床面積)とは
住宅の面積を表す基準には様々な言葉があります。 その中でも最も、頻繁に使われる「延べ床面積」は、単なる面積を表すものだけではありません。
新築時において、知っておいた方がトクする延べ床面積について紹介していきます。
1-1. 延床面積とは柱の中心を基準にした面積
まず延べ床面積とは、正確には部屋の面積とは異なり、柱の中心から柱の中心を結んで囲まれた面積のことを指します。
そのため「延べ床面積で 50㎡ 」といっても、実際の部屋の大きさとしては 50㎡ 分の面積はなく、柱や壁の厚みの分少し狭くなります。
また延べ床面積は、すべての階の面積の合計です。例えば 2 階建ての建物であれば、1 階の床面積と、2 階の床面積を足した面積が「延べ床面積」です。
延べ床面積は建築する時に必ず提出すされる、確認申請にも記載されており、この面積が後々に解説する固定資産税の算出などに影響してきます。
1-2. 延べ床面積の平均は 37.6 坪(124.4㎡)
全国平均の注文住宅における平均の延べ床面積は 37.6 坪(124.4㎡)です。(出典: 2020 年度 フラット 35 利用者調査 )
また、同資料によると建売住宅は全国平均で 30.5 坪(101.1㎡)となっており、注文住宅と比較すると少しコンパクトな建物が人気です。
建売住宅に比べて、注文住宅の面積が大きい理由は、注文住宅には建替のケースも含まれており、建物だけにかけられるコストが異なってくることが一番大きな理由です。 建売住宅は、どうしても建物+土地のコストを同時に支払うことになるため、総予算に占める割合が少なくなることから、建物側にかけることができる予算が限られてきます。
もっとも、建売住宅は都市部で比較的多いこともあり、その分土地面積がコンパクトに設計されており、建築できる建物もコンパクトになりがち、という側面もあります。
1-3. 延べ床面積に含まれない場所がある
ここからは、延べ床面積について「知っておくとトク」な部分の解説です。
延べ床面積は、1 階・ 2 階などのフロアごとの床面積を合計したものと紹介しましたが、「延べ床面積に算入されない場所」があります。
その場所とは下記のとおりです。
- 天井高さ 1.4m 以下の場所(その階の面積の 2 分の 1 以下であれば延床面積から除外)
- 吹き抜け
- バルコニーやベランダ(主に 2 階に設置される屋外エリア・出幅が 2m 以下の部分は除外)
- 地下室(地下室~土壌面が 1m 以内で、住宅全体の延べ床面積の 3 分の 1 までは延べ床面積から除外)
- ビルトインガレージ(住宅全体の延べ床面積の 5 分の 1 以内であれば延床面積から除外)
このような条件を満たす場所は、延べ床面積に含まれません。
さて、上記のような「延べ床面積に含まれない場所」になると、なにが変わるの?という点ですが、主なポイントは「容積率」と「固定資産税」の2つです。
それではまず1点目の「容積率」について紹介していきましょう。
1-4. 容積率を左右する延べ床面積
容積率とは、その土地面積に対して何%までの延べ床面積の家を建築できるか?を表した割合です。
土地の面積が 100㎡ のとき、容積率が 150% の場合、建築できる建物の延べ床面積は、最大 150㎡ までとなります。 この「%」である容積率は、同じ市内であっても用途地域と言われる、エリアごとに設定されている基準で変わってきます。土地購入の際には、ぜひ参考にすべき項目の1つと言えます。 土地面積に対して、建築できる家の大きさが限られている土地の場合、延べ床面積に含まれない場所があることで、収納できるエリアなどを増やしたりすることができます。
特に都市部の狭小地においては、この容積率に含まれない緩和措置が活きてきます。 例えば容積率 100% のエリアで 70㎡(約 21 坪)の敷地面積に、2 階建てを建築すると仮定しましょう。 建物の延べ床面積は 70㎡ までの制限になりますが、たとえば 1 階の一部をビルトインガレージにしたとすると、実質的な床面積として 70㎡ の 5 分の 1 、すなわち 14㎡ 以内のビルトインガレージであれば延べ床面積から除外されます。
また、ロフトなどで天井高さが 1.4m 以下の部分(その階の 2 分の 1 以内)は、延べ床面積から除外されるため、収納エリアや趣味の部屋などを増やしたい場合は、天井高さを調整しましょう。 小屋裏などは空間を有効的に活用すると同時に、延べ床面積の不算入の特例も使えます。 容積率など土地にかかる規定、土地や建築にかかる費用に関してもっと詳しく知りたい!という方は、「 家を建てる費用はいくらかかる? 土地あり・土地なしの場合の考え方を解説 」も併せてご覧ください。
1-5. 延べ床面積で固定資産税が変わる
2 点目の固定資産税に関してです。 固定資産税に関してはさまざまな噂も流れていますが、真偽を冷静に確かめておく必要があります。
まず延べ床面積についての基準は、確認申請で提出された床面積、すなわち延べ床面積が基準になってきます。 そのため、天井高さの低いロフトや吹き抜けなどは、固定資産税の対象基準からは除かれます。
ちなみに、新築住宅にかかる 120㎡ 相当部分までの固定資産税が 2 分の 1 減額になる特例もありますので、120㎡ までの部分は税金対策としては優遇が受けられます。 なお、2021 年 12 月時点では令和 4(2022 年)年 3 月 31 日までに新築した物件のみ、新築から 3 年間だけの特例措置となっています。 そのため、固定資産税だけを気にしすぎず設計してもらう方が良いでしょう。
1-6. 施工面積にだまされないように
延べ床面積と間違えやすい言葉で、「施工面積」もしくは「施工床面積」という表記があります。 施工面積とは、延べ床面積では含まれないバルコニー、吹き抜け、玄関ステップなども面積として算入する面積の呼称です。
建物の面積としては、建築基準穂や確認申請に用いられる、延べ床面積で表記されることが一般的に多いですが、施工面積で見積などを提出すると、実態より大きく見せけかえることができます。
最近は減ってきましたが、施工面積を床面積として、お客様へ提示して実態より大きく見せる手法があります。 例えば、同一の 3000 万円の新築でも、延床面積 35 坪と施工面積 40 坪で表記するのでは印象が異なります。 よく用いられる坪単価で換算すると、延床面積では坪単価 85.7 万円、施工面積では坪単価 75 万円となり、パッと見のコスト間でも割安感が出せるためです。
坪単価表記でコストを計算している会社などでは、施工面積・延床面積どちらで計算しているか?を冷静に判断しましょう。
2. タイテルの坪数別 間取り事例 10 選!
それでは、タイテルの建築家による実際の施工例を、坪数とともにみていきましょう。
2-1. 20 坪台の間取り事例
KPM house / 楽器と暮らすリノベーション(2 階建て・延床面積:76.49㎡)
こちらの事例は新築ではなく、リノベーションの事例です。
延べ床面積としては 76.49㎡(約 23.1 坪)となっており、決して大きい家とは言えませんが、明るい内装や最低限の柱などで空間を広く取っています。
お施主さんは、演奏家・作詞作曲家であり、南米やアフリカを飛び回るワールドミュージック系楽団の座長さんとのこともあり、オリジナルの家づくりを満喫されている事例です。
中野南台の家(2 階建て・延床面積:77㎡ + ロフト 12㎡)
2 階建ての事例で、延べ床面積としては 77㎡(約 23.3 坪)ですが、ロフトがある事例です。
ロフトは延べ床面積には含まれませんが、ロフト面積としては 12㎡ あり、ロフト部分まで含めると(約 26.9 坪)となります。
ロフトに窓もあり、採光と夏場の暑さこもり対策もばっちりです。
つづきまのいえ(2 階建て・延床面積:82㎡)
東京都内に建築された事例で、敷地面積も 78㎡(約 23.6 坪)のコンパクトな住宅の事例です。
延べ床面積としても、木造 2 階建ての 82㎡(約 24.8 坪)となっており、コンパクトかつ上質な家になっています。
「着慣れた服のように、ここちよい和のすまい」をコンセプトに、家全体のコンセプトとしても純和風なデザインで統一されています。
三鷹の家(3 階建て・延床面積:91.44㎡)
こちらの事例は 3 階建てで、延べ床面積 91.44 ㎡(約 27.6 坪)の住宅で、中のデザインは多層的な設計になっています。
各方位からの日射の取り入れ、吹き抜けを有効的に活用した事例で、延べ床面積以上の広さを感じることができる事例です。
延べ床面積に吹き抜けは含まれませんが、立体的な設計で高さと開放感を感じられます。
2-2. 30 坪台の間取り事例
経堂の住宅〜テラスに寄り添う〜(2 階建て・延床面積:119.25㎡)
延べ床面積としては、119.25㎡(約 36.07 坪)の 2 階建ての事例です。 構造としては、木造 2 階建とロフトに和室を設けた事例です。
オープンな吹き抜けで天井高さが高く、2 階リビングの開放感が抜群の設計になっています。 光りを取込みやすい 2 階にリビングを設計し、敷地に沿って東西に細長いテラスを用意。 そのテラスにプライバシーを確保しつつ、LDK などの居住空間が寄り添うように設計されています。
スパイスカレーと珈琲ティケthikhai!(2 階建て・延床面積:120㎡)
こちらの事例は、店舗併用住宅です。 東京から長野に移住されたクライアント様のカレーと珈琲の店と、ヨガスタジオの家です。
延べ床面積としては平均的な 120㎡(約 36.3 坪)の住宅となっており、天井はあらわしにすることで、空間を最大化しています。
インテリア・エクステリアともに木の質感の印象を多く与え、セメントタイルの床仕上げ、空間を特徴づけるインド製の本棚とテーブルが印象的な事例です。
武蔵野の家 | Musashino house(2 階建て・延床面積:130.58㎡)
こちらの事例は、RC造壁式の構造で建築された 130㎡(約 39.5 坪)の事例です。
2階建てになっており、外観はコンクリート打放しあるものの、杉板本実型枠を使用した壁と洗い出しの床が、コンクリートの堅い表情を和らげます。
内装も木材をふんだんに使っており、やさしい和風のスッキリしたデザインが印象的な事例です。
2-3. 40 坪台の間取り事例
北茨城の平家 〜川に寄り添う〜(平屋・延床面積:134.15㎡)
こちらの事例は、平屋でも大きい部類に入る 134.15㎡(40.58 坪)の事例です。
平屋で約 40 坪になると、ゆったりとした大きな住宅になってきます。
窓が大きく、開放的なリビングが印象的な設計になっており、前面に見える川との調和が映える自然と共生するようなデザインにまとまっています。
2-4. 50 坪以上の間取り事例
おおたかの森の家 | Otakanomori house(2 階建て・延床面積:168.07㎡)
「森の中の図書館」をイメージされ、1 階部分がRC造・ 2 階部分が木造の組み合わせで設計されている住宅です。
開口が広く取られつつも、プライバシーが確保された落ち着いたインテリアと本棚が特徴になっています。
延べ床面積としては 168.07㎡(約 50 坪)と比較的大きい住宅で、敷地面積 256.2㎡(約 77.5 坪)です。
都島の家|Miyakojima House(3 階建て・延床面積:199.5㎡)
こちらの事例は、都心部における 3 階建ての事例です。
敷地面積は 122.16㎡(約 36.9 坪)、建築面積としては 88.76㎡(約 26.8 坪)となっている 3 階建ての事例です。
3 階建てであることから、トータルの延べ床面積は 199㎡(約 60 坪)と大きくなっていますが、敷地面積としては都心部ではありがちなコンパクトな土地サイズです。
内観は、吹き抜けの大きなリビングもあり、狭さを感じさせない広さが魅力です。
3. まとめ
以上のように、titel(タイテル)の建築家による延べ床面積別の事例をご覧いただき、感じられたことはありましたでしょうか。 延べ床面積が比較的少なくても、開放感がある家・狭いと感じない家が実現できるのでは?と感じた方も多いのではないでしょうか。
延べ床面積には含まれない吹き抜けなどの活用や、建築家自身が三次元的に考えて視線の抜け・留めによる広さの感じ方をデザインしています。 このように単純に延べ床面積として算出される面積以上の価値が、建築家に設計を頼めば実現できます。
気になった事例などがありましたら、ぜひ一級建築士の資格をもつタイテル建築アドバイザーまでご相談 ください。