玄関の三和土(たたき)はどこのこと?デメリットや今どきの実例などを紹介
三和土(たたき)はもともと、土間の仕上げ方法の一つでした。しかし現在はそのデメリットから土間スペースを指す言葉となり、仕上げは他の材料に代わっています。もしおしゃれな三和土を作りたいと考えているなら、現代風にアレンジされた仕上げを参考にしてみましょう。
この記事では三和土の意味や注意点、さらに今はどのような仕上げが三和土として使われているか解説しています。現代風の三和土の実例も豊富に紹介していますので、どんな仕上げにすればおしゃれになるかイメージがつかめるはずです。
まず、この記事のまとめポイントです。
- 三和土はもともと、土間の表面を硬く仕上げる方法の一つ。
- 現在は玄関まわりの靴で歩く場所を指す言葉に変化している。
- しっかり工事できる職人に頼めば非常に硬く仕上がり、屋外や庭にも施工できる。
- 割れやすく工事には経験や知識が必要、工事期間や費用がかかるなどの欠点がある。
- きれいに割れにくく作るには高い技術と多くの手間が必要で、DIY では残念な結果になる恐れがある。
- 土間の仕上げに使うにはデメリットが多く、現在はタイルやモルタルなど他の材料に代わっている。
1. 三和土は玄関土間の仕上げ
三和土とはもともと玄関内の、靴を履いたまま歩く土間の床仕上げの一種でした。昔の土間は土むき出しで欠けたり削れたりすることが多かったため、硬く仕上げる方法として三和土が考え出されました。
三和土は、土と消石灰(しょうせっかい)とにがりを混ぜて叩いて固めます。3種類の材料を混ぜることから「三和土」という字が使われ、叩いて仕上げることから「たたき」と読むようになったと言われています。
2. 現在は土間スペースを指す言葉に
現在はこの後で紹介する三和土のデメリットから、仕上げに使われることは減っています。その代わり「玄関まわりの靴を履いて歩くスペース」という意味で、三和土という言葉が使われています。ちなみに土間という言葉も、もとは玄関に入った所の土の仕上げを意味していました。しかし現在は三和土と同じく、玄関まわりの靴で歩くスペースを意味する言葉になっています。
3. 屋外や庭にも施工できる
豊富な経験と高い技術を持った職人が施工した三和土は、かなりの硬さになります。このため屋外や庭にも施工でき、雨がかかっても崩れることはありません。しかし作るときに気温や湿度に合わせた材料の配合をして、丁寧で念入りな叩きをしないと雨に濡れると欠けたり割れたりしてしまいます。
また屋根の軒先の下など雨だれが落ちるところは、硬い三和土であっても削れてしまうことがあります。そうしたところは雨だれで削れないように、砂利などで「雨落ち」を作ります。このように屋外や庭に三和土を作るには、高い技術と庭造りに対する細かな配慮が必要です。屋外に三和土を作るときは、施工経験の豊富な職人に任せることをおすすめします。
4. 三和土の 4 つのデメリット
昔は人が歩くところを硬く仕上げる方法が少なかったため、三和土が良く用いられました。しかし現在は、タイルやモルタルなど他の仕上げがあります。それらと比べると三和土には次のようなデメリットがあり、徐々に使われることが減っていったのです。
4-1. 欠けたり削れたりしやすい
三和土はとても硬く仕上がりますが、それでも靴で歩いたり硬い物を置いたりすると欠けや削れが起きます。三和土はあくまで土などを叩いて固めた材料であり、焼き物のタイルなどに比べると強度は劣るのです。
4-2. 豊富な経験と知識が必要
三和土を硬くするには、土の種類や工事をするときの気温、湿度などによって材料の配合割合を調整しなければなりません。そのため三和土の豊富な施工経験と、材料についての豊富な知識が必要になります。
4-3. 工事の期間が長い
三和土は他の仕上げ材に比べ、工事の期間が長くかかります。下地を作り材料をまいて叩く作業に数日、さらに乾燥して固まるまでが早くて 10 日から 2 週間、季節や材料の種類によっては 1 ヵ月以上かかることもあります。その間は上を歩くことができず、新築なら家の工事全体が遅れてしまいます。
4-4. 費用が高め
三和土の工事費用相場は ㎡ あたり数万円からと、モルタルやタイルなどに比べ高めになっています。三和土は工事手間がかかることや、高い品質で工事できる職人が少ないことなどが原因です。
これらのデメリットから、現在は三和土の味わいある質感を求めて部分的に施工されることが多くなっています。従来の靴を履いて歩くところに施工されるのは、かなり少ないのが現状です。
5. 三和土の DIY は難しい
DIY で三和土を作るのは、かなり難易度の高い作業になります。しっかり仕上げるには経験に基づいた材料配合の知識や、優しく根気よく叩き続ける時間と体力が必要です。どれかが欠けただけでも、三和土は割れたり浮いたりしやすくなります。
また表面を平らで滑らかに仕上げるにも高い技術が必要であり、手間や費用をかけた割に残念な仕上がりになる可能性があります。特に人目に触れるところに三和土を作るなら、プロの職人に頼んだ方が間違いないでしょう。
6. 三和土の作り方
参考までに、三和土を作る具体的な作業を大まかに説明します。
- 砕石を敷く
- 材料を混ぜる
- 1 層目を施工する
- 2 層目を施工する
- 仕上げ
三和土を作る場所の下地を均し、その上に砕石を敷いて転圧機械などでしっかり固めます。転圧が不十分だと、完成した後に割れや浮きが発生してしまいます。
三和土は 2 層で仕上げますが、層ごとに材料の配合が違うため 2 回材料を混ぜます。 1 層目は土と砂、消石灰、にがりの 4 種類、 2 層目は土と消石灰、にがりの 3 種類を混ぜていきます。
砕石の上に水をかけ 1 層目(下打ち)の材料を敷き、半分程度の厚みになるまでゆっくり丁寧に叩きます。
次に 2 層目の材料を敷き、やはりゆっくり優しく叩いていきます。 1 層目より硬く仕上げるためより時間をかけて叩き、ときおり定木で水平を確かめます。
最後に水をかけながらコテで表面を滑らかに仕上げます。その後数週間かけて乾燥させ完成となります。
7. 三和土の代わりに使われる材料
靴を履いて歩くところは、今では三和土の代わりに次のような材料が使われるようになっています。それぞれの違いを知り、目的に合った材料を選ぶようにしてください。
7-1. タイル
粘土などを高温で焼いて固めた板状の材料です。非常に硬くデザイン性もあるため、玄関内だけでなく外のポーチ階段、アプローチなど人目につく床の仕上げによく使われます。今回紹介する材料の中では費用が高めですが、見た目も良く長持ちするためコストパフォーマンスは高い材料と言えます。
7-2. レンガ
レンガもタイルと同じく粘土を焼いた材料です。表面が滑らかなタイルと違い、少しザラついた質感で独特の味わいがあります。表面が若干欠けやすいのですが、そのおかげで濡れたときに歩いても滑りにくくなります。
7-3. コンクリート
コンクリートはセメントと砂、砂利、水を混ぜて固めた材料です。圧縮に対して強いため、ガレージや駐車場の床など重量がかかるところに適しています。ただし表面に気泡や砂利の粒が出やすいため、玄関内など人目につくところはきれいに仕上がるモルタルの方が良く使われます。
7-4. モルタル
モルタルはセメントと砂、水を混ぜて固めた材料です。表面をなめらかにしたり、コテや刷毛の跡をわざと残したりとさまざまな質感に仕上げられます。ただしコンクリートの仕上げに比べ収縮が大きく、ひび割れなどが起きやすいという注意点があります。
7-5. 天然石
天然石は自然の中から切り出した石を平らにした材料です。深みと高級感のあるデザインは本物の石ならではです。他の材料に比べ高価なものもあり、広い面積に貼ると費用が高額になることがあります。
7-6. 砂利洗い出し
豆砂利や小砂利などの小さな砂利をモルタルと混ぜて施工し、完全に乾く前に水をかけて砂利を浮き出させる仕上げです。砂利の粒が立体的な模様になり、個性的で深みのある雰囲気になります。ただし施工に手間がかかるため費用は高めになっています。
8. 三和土のある住まいの実例 9 選
実際に現代風の材料を使った、おしゃれな三和土の事例を紹介します。
8-1. タイル仕上げのモダン三和土
シックな雰囲気の通路に作られた、タイル仕上げの三和土です。限られたスペースに貼られた重みのある色合いの床や壁、さらに足下の印象的な照明によって、まるで異世界へ通じるトンネルのような空間に仕上がっています。
8-2. 古民家のモルタル三和土
古民家の中に作られたモルタル仕上げの三和土です。滑らかでありながらあえて残されたコテ跡による影が、どこか懐かしさを感じさせます。モルタルが外からの光を反射して、空間を明るくしているところもポイントです。
8-3. 天然石と砂利洗い出しの三和土
天然石の板と小砂利の洗い出しで、アプローチに作られた三和土です。天然石の無骨な風合いと洗い出しの繊細さが、明るめな色合い同士ながら目を引くコントラストを生み出しています。
8-4. 緑の中の大谷石三和土
火山灰でできた大谷石を敷いた三和土です。生い茂った緑の中でもしっかりとした存在感を放っています。風化したような質感が堅苦しさを感じさせず、リラックスできる庭づくりに貢献しています。
8-5. シンプルなモダン和風の三和土
シンプルなモダン和風の建物に作られた、くつろぎスペースの三和土です。塗り跡やツヤの無い仕上げで脇役に徹し、シンプルな内装の味わいを引き立てています。色合いを明るめにし、全体とバランスを取っている点にも注目です。
8-6. 洋風の玄関三和土
NY などでアーティストが集まるアパート風の玄関内に設けられたモルタルの三和土です。照明や棚、手洗いなどのラフな雰囲気とトータルでデザインされています。塗り跡を残す素朴な仕上げも、内装のコンセプトとマッチしています。
8-7. 薪ストーブのあるタイル三和土
存在感のある薪ストーブの下に作られた、タイルの三和土です。タイルは耐熱性が高く、薪ストーブまわりに施工するには最適な材料です。壁に同じく耐熱性のあるレンガが貼られ、暖かみのある雰囲気を高めています。
8-8. リビングの中の三和土
入り口からそのままリビングまで続くモルタル仕上げの三和土です。モルタルのラフな素材感と、キッチンや部屋全体のインダストリアルな雰囲気が見事に融合しています。
8-9. 2 世帯をつなぐ三和土
リノベーションした 2 世帯住宅で、親世帯と子世帯をつなぐ通路に施工されたモルタルの三和土です。もとの建物の重厚な柱や梁と、モルタルの素朴な質感と明るい色合いが程よいバランスになっています。
9. まとめ
三和土はもともと、玄関内の土間を硬くする仕上げの一種でした。適切な材料配合と丁寧な叩きをすれば、雨のかかる屋外にも施工できる強度があります。
しかし他の仕上げに比べ欠けや削れが起きやすく、施工の難しさや工事に時間がかかることなどから仕上げとして使われるケースは減っています。そのため現在使われる三和土の意味は、土間と同じく玄関まわりの靴を履いて歩く場所を指す言葉に変化しました。
代わりに現在は、タイルやモルタルなど他の材料が仕上げに使われています。それぞれに違ったデザインとメリットがあり、空間全体でしっかりプランニングすればよりおしゃれな三和土を作ることができます。
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