建築家と建てる鉄骨の家 | 3つのメリットと注意点

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今回は鉄骨造の住宅について深掘りしていきます。

木造住宅に比べて頑丈なイメージのある鉄骨住宅ですが、本当のところはどうなのか?また、鉄骨住宅のメリット・デメリットや、気になる費用についてもみていきましょう。

建築家による代表的な 6 つの施工事例も紹介しますので、鉄骨で検討している方はぜひ参考にしてください。

それでは冒頭に、建築家と建てる鉄骨の家の重点ポイントをお伝えします。

  • 鉄骨には重量鉄骨と軽量鉄骨があるが、住宅用では軽量鉄骨が多いです。
  • 鉄骨造のメリットは、広い空間+連続した開口で開放感を演出しやすいことと、躯体自体の寿命が長いことです。
  • 鉄骨造のデメリットは、断熱性能を高めにくいことと、木造と比較したときにコストが高いことです。
  • スパンを飛ばしたいときや、大きな開口などで開放的な間取りを設計したい場合に、鉄骨住宅が向いています。

<目次>

  1. 1. 鉄骨住宅の一般的な特徴と誤解
    1. 1-1. 広い空間を設計しやすい
    2. 1-2. 躯体の耐用年数が長い
    3. 1-3. 火災保険が安い
  2. 2. 鉄骨住宅を建てる際の注意点(デメリット)
    1. 2-1. 断熱性能を高めにくく防錆対策が必要
    2. 2-2. 減価償却が緩やかで固定資産税が高め
    3. 2-3. 建築コストは木造に比べて高い
  3. 3. 鉄骨住宅の坪単価(目安)
    1. 3-1. 建築家の鉄骨住宅は 100 万円 / 坪~
  4. 4. 建築家で鉄骨住宅を建てるメリット
  5. 5. 建築家での鉄骨住宅の事例
    1. 5-1. オープンな2階リビングの鉄骨の家
    2. 5-2. ガラスで構成された壁が特徴の鉄骨住宅
    3. 5-3. RC造 × 鉄骨造の複合住宅
    4. 5-4. 鉄骨造が生み出す開放感が魅力の家
    5. 5-5. 床面~天井までの全面開口のカフェ風の鉄骨住宅
    6. 5-6. 木と鉄が融合した鉄骨造の家
  6. 6. まとめ

1. 鉄骨住宅の一般的な特徴と誤解

まずは鉄骨住宅における一般的なメリットを中心とした特徴と、よくある誤解点などを紹介していきます。

具体的な解説に入る前に、鉄骨住宅を語る上で重量鉄骨と軽量鉄骨の違いをカンタンにふれておきます。

重量鉄骨と軽量鉄骨の違い
  • 重量鉄骨:鋼材の厚みが 6 mm以上
  • 軽量鉄骨:鋼材の厚みが 6 mm未満

2 つの違いは鉄骨そのものの鋼材の厚みの差になります。一般戸建てに使われるのは軽量鉄骨が多いですが、構造や階数によっては一部で重量鉄骨を使う場合もあります。

重量鉄骨の方が頑強で、耐震性が高く良さそうに見える方もいるでしょう。しかし、コストの問題や家の自重が増えることも加味すると、必ずしも重量鉄骨が優れているとは限りません。

建築家では、耐震設計や設計コンセプトなどで最適な工法を選びますので、どちらが良いか?は建築家にお任せするのが良いでしょう。

1-1. 広い空間を設計しやすい

雪ノ下の家 (建築家 : 石井 秀樹) の作品画像 雪ノ下の家 (建築家 : 石井 秀樹) の作品画像 雪ノ下の家 (建築家 : 石井 秀樹) の作品画像
雪ノ下の家 石井 秀樹 | 石井秀樹建築設計事務所株式会社

それでは、鉄骨住宅のメリットの 1 つ目ですが、広い空間を設計しやすい点です。

鉄骨は、木造に比べてスパン(柱と柱で支える間隔)を飛ばしやすい特徴があり、リビングなどで大きな 1 つの空間を創り出しやすいです。

またスパンが飛ばせることは、開口を連続して広く取れることにも繋がります。例えば木造であれば 2 間(約 3.6 m)までしか開口として取れなかった箇所が、躯体を鉄骨にすることで 3 間(約 5.4 m)まで飛ばせたりと、間取りの自由度は上がります。

1-2. 躯体の耐用年数が長い

つづいて 2 点目のメリットは躯体の耐用年数が長いことです。

鉄骨造はその名の通り、鉄でできているため錆びなければ初期の強度が保たれます。住宅で使われる鉄骨には、当然防錆のメッキなどが施されていることが多く、主流としては溶融亜鉛メッキやカチオン電着塗装などの鉄骨専用の塗装で防錆処理がなされます。いずれも腐食に非常に強い塗装になっており、適切な施工がされていれば腐食のリスクはほぼないと言っても良いでしょう。

ただデメリットでも解説する点で、熱伝導率が高いことから結露しやすいため、鉄骨で建築する場合は、鉄骨自体の結露防止の断熱方法はしっかり確認して置きましょう。

1-3. 火災保険が安い

火災保険の認定上は、木造に比べて「燃えにくい素材」となっています。具体的には火災保険は 3 つの構造級に分類されます。

  • M構造 (イ構造) 耐火建築物の共同住宅(マンション)
  • T構造 (イ構造) 鉄筋コンクリート造・鉄骨造・準耐火建築物・省令準耐火建築物
  • H構造 (ロ構造) M構造とT構造以外

火災保険上は、燃えにくい建築物として順番に、M 構造 → T 構造 → H 構造となります。

鉄骨造は真ん中の T 構造に該当し、一般的な木造住宅の H 構造に比べて耐火性能が高い建築物とされています。火災保険料も木造の H 構造と、鉄骨増の T 構造であればおおよそ 2 倍近い差があります。

ただし、これはあくまで火災保険上の認定の話の為、実際は設計によっては木造住宅が火災に弱いとは限らないことを補足しておきます。

2. 鉄骨住宅を建てる際の注意点(デメリット)

それでは、メリットをここまで紹介してきましたが、デメリットについても見ていきましょう。

2-1. 断熱性能を高めにくく防錆対策が必要

鉄は素材の特性上、熱伝導率が高いため断熱性能をあげにくいです。

熱伝導率が高いとは、わかりやすく言い換えると素材自体に熱が伝わりやすい、ということです。

熱伝導率

真冬に鉄と木を屋外に置いておくと、どちらが冷たくなるか?想像してみると、鉄の方が冷たくなりますよね。熱伝導率とは、その冷たさを数字で表したもので、木材に比べて100倍以上の熱の伝わりやすさであるが故に、構造躯体としても熱を伝えやすくなります。

熱橋とは

上図は壁の中の構造を図解したものですが、柱が熱を伝えやすい鉄の場合、断熱材が壁の中に入っていたとしても、柱から熱を室内に伝えてしまいます。この熱を伝えやすい部分を「熱橋」といって、鉄骨住宅における断熱に関する弱点です。

家の断熱性能を表す UA 値でも、熱の伝えにくさの平均値をとるため、この熱橋部分で平均値を押し上げて(断熱性能が悪化方向)しまいます。

もっとも、柱自体に断熱材を巻いたり対策を施している会社が昨今は増えてきましたが、こういった断熱対策がしっかりされているか?を確認しましょう。

2-2. 減価償却が緩やかで固定資産税が高め

鉄骨住宅は減価償却の計算上、19年~34年になっており鉄骨の種類によっては減価償却の年数が長くなります。

まず減価償却とは、資産購入から時間が経つにつれて資産価値が下落する考え方を言いますが、住宅も同じように資産価値が下落していきます。

この資産価値をもとに、固定資産税の金額が決まるため、資産価値が低い家は安くなります。木造住宅では22年となっており、鉄骨の厚みによっては木造住宅に比べて減価償却年数が長く、その分資産価値が落ちにくく、それに比例して毎年支払う固定資産税も下落しにくいです。

資産価値が落ちにくいことはいいことのように聞こえますが、これは実際の耐久年数とは比例せずあくまで机上の計算上の話しであることだけご留意ください。

2-3. 建築コストは木造に比べて高い

一般論ではありますが、建築にかかるコストは木造に比べて鉄骨造の方が高くなります。

鉄骨でも構造や階数によって厚みが変わったり、比較基の木材も様々な種類があるため、一概にいくら高くなるとは断定できませんが、少なくとも一般的には鉄骨の方が高いです。

昨今はウッドショックの影響があり、木材の原価が急騰していることもあり、鉄骨との差は以前に比べて縮まっているという話しも聞きますが、コスト面では木造と比較すると不利です。

3. 鉄骨住宅の坪単価(目安)

それでは、みなさんも気になるコスト面を紹介していきます。

3-1. 建築家の鉄骨住宅は 100 万円 / 坪~

建築家による鉄骨住宅の目安の坪単価は、100 万円~とお考え下さい。

大手ハウスメーカーの鉄骨住宅のシリーズでは、おおむねこのぐらいの坪単価が目安になってきますが、建築家による鉄骨住宅でも同レベルから、となります。もちろん、例えば 3 階建てになれば使う鉄骨の太さや厚みが変わったり、建物の形状が複雑になれば、支えるための鉄骨が標準的なタイプより強固なものに変わったりすれば、この坪単価は大きく変わってきます。

また、この坪単価はあくまで目安の金額として捉えてください。木造住宅の坪単価の考え方と同様ですが、同じ建築家でも使う素材や構造・仕様によって金額は大きく変わります。

まずは、気になる建築家とご自身のライフサイクルコストと共に相談することが良いでしょう。

4. 建築家で鉄骨住宅を建てるメリット

建築家と鉄骨住宅を建てる最大のメリットは、「開放感とデザイン性の組み合わせ」です。

一般的な工務店や、ハウスメーカーでも鉄骨住宅自体は建築できますが、鉄骨の特性を最大限生かした自由かつ開放的な設計は建築家が長けている点です。建築家では、土地の形状や周囲環境、お施主様の希望に合わせて設計していきますが、違いは自由度と、設計の幅の深みと言えます。

次章での施工事例でも紹介する通り、建築家ならではの連続した開口、そしてプライベート感も考えられた開放的な空間の演出です。

また構造などによって、鉄筋コンクリート造の躯体との組み合わせなど、ハイブリッド的な設計も、 titel(タイテル)の建築家ならではの特長です。

5. 建築家での鉄骨住宅の事例

それでは、鉄骨住宅のメリットを最大限に活かした titel(タイテル)の建築家による代表事例を 6 つ紹介します。

5-1. オープンな2階リビングの鉄骨の家

雪ノ下の家 (建築家 : 石井 秀樹) の作品画像 雪ノ下の家 (建築家 : 石井 秀樹) の作品画像 雪ノ下の家 (建築家 : 石井 秀樹) の作品画像
雪ノ下の家 石井 秀樹 | 石井秀樹建築設計事務所株式会社
雪ノ下の家 (建築家 : 石井 秀樹) の作品画像 雪ノ下の家 (建築家 : 石井 秀樹) の作品画像 雪ノ下の家 (建築家 : 石井 秀樹) の作品画像
雪ノ下の家 石井 秀樹 | 石井秀樹建築設計事務所株式会社

鉄骨ならではの特徴を最大限に活かした事例です。

2階のリビングを囲むようにガラス張りで設計されていることと、寄棟屋根をそのまま天井にしており、開放感を最大まで創り出しました。

こちらの事例の最大のポイントは、窓と窓の間の柱の細さが創る、全面的な開口です。木造や鉄筋コンクリート造では、どうしても耐力壁などが必要になってくるため、ここまでの連続した開口は難しくなるため、この設計は、まさに鉄骨造ならではの設計で、木造でも鉄筋コンクリート造でも成しえない設計です。

5-2. ガラスで構成された壁が特徴の鉄骨住宅

東村山の家 (建築家 : 石井 秀樹) の作品画像 東村山の家 (建築家 : 石井 秀樹) の作品画像 東村山の家 (建築家 : 石井 秀樹) の作品画像
東村山の家 石井 秀樹 | 石井秀樹建築設計事務所株式会社
東村山の家 (建築家 : 石井 秀樹) の作品画像 東村山の家 (建築家 : 石井 秀樹) の作品画像 東村山の家 (建築家 : 石井 秀樹) の作品画像
東村山の家 石井 秀樹 | 石井秀樹建築設計事務所株式会社

こちらの事例も、壁一面をFIXガラスで構成し、室内に奥行き感と広がりを創った事例です。

特徴的なポイントは、構造躯体とガラスを分離することで、入隅(内側に向いた角部分)や出隅(出っ張った方向の角部分)もガラス同士を留めで納めている点です。2 枚目の事例でわかるように、柱の外側にガラスを持ってくることで空間の縁が切れず、ガラスの連続性を創り出せます。

構造躯体の鉄骨部分も、円柱形に化粧することで圧迫感をなくし、部屋のデザインの一部として融け込ませています。

5-3. RC造 × 鉄骨造の複合住宅

渋谷の住宅 〜交差する中庭と住空間〜 (建築家 : 納谷 学) の作品画像 渋谷の住宅 〜交差する中庭と住空間〜 (建築家 : 納谷 学) の作品画像 渋谷の住宅 〜交差する中庭と住空間〜 (建築家 : 納谷 学) の作品画像
渋谷の住宅 〜交差する中庭と住空間〜 納谷 学 | 納谷建築設計事務所

こちらの事例は、地下一階が鉄筋コンクリート造、1 ~ 2 階は鉄骨造、そして離れは木造という複合的な構造をしている住宅の事例です。敷地に高低差があるため、建物の半分以上が土中になる地下 1 階が鉄筋コンクリート造となっており、1 ~ 2 階は全体的に開放感を創るため鉄骨造を選択されました。

リビング(左手前)とダイニングキッチン(右奥)の間に地下~、そして 2 階まで繋がる階段を挟んだ中間的な干渉空間は、全面的に窓で開放的な間取りになっています。

このように土地の形状や要望に応じて、時には建築工法も複合的に組み合わせて提案できる点が建築家ならではのポイントとも言えます。

5-4. 鉄骨造が生み出す開放感が魅力の家

小網代の家|Koajiro House (建築家 : 武富 恭美) の作品画像 小網代の家|Koajiro House (建築家 : 武富 恭美) の作品画像 小網代の家|Koajiro House (建築家 : 武富 恭美) の作品画像
小網代の家|Koajiro House 武富 恭美 | d/dt Arch./ディーディーティー
小網代の家|Koajiro House (建築家 : 武富 恭美) の作品画像 小網代の家|Koajiro House (建築家 : 武富 恭美) の作品画像 小網代の家|Koajiro House (建築家 : 武富 恭美) の作品画像
小網代の家|Koajiro House 武富 恭美 | d/dt Arch./ディーディーティー

4 つ目の事例は鉄筋コンクリート造と鉄骨造を組み合わせた事例です。

車庫部分を鉄筋コンクリート造、その上に建つ1 階~ 2 階を鉄骨で仕上げました。鉄骨で設計された最大のメリットは、写真のような連続した窓です。特に入隅部分に開放的な大きな窓を設計し、晴れた日には遠目に映る富士山を室内から臨むことができる贅沢なロケーションが実現しました。

他の部屋も鉄骨ならではの特徴を活かして、開口を多く取ってどこの部屋もあかるいインテリアに設計されています。

5-5. 床面~天井までの全面開口のカフェ風の鉄骨住宅

HOUSE MI (建築家 : 伊原 孝則) の作品画像 HOUSE MI (建築家 : 伊原 孝則) の作品画像 HOUSE MI (建築家 : 伊原 孝則) の作品画像
HOUSE MI 伊原 孝則 | FEDL
HOUSE MI (建築家 : 伊原 孝則) の作品画像 HOUSE MI (建築家 : 伊原 孝則) の作品画像 HOUSE MI (建築家 : 伊原 孝則) の作品画像
HOUSE MI 伊原 孝則 | FEDL

5 つ目の事例は、リビングに床面~天井まで、高さのあるFIXで構成し開放感を創った事例です。

2 方向に広がった視線は、ステキな広いガーデンの豊かな緑と、室内の洋風カフェのようなインテリアと調和した事例です。また、開放感を存分に引き出すために山側に大開口を設計することで、道路や隣家からの視線を気にせず使える点の配慮も忘れていません。

そして、天井高も一般的な住宅より高くとって吹き抜けにしていることで、季節を問わず金持ちの良い開放的な間取りに仕上がっています。

5-6. 木と鉄が融合した鉄骨造の家

新野の住宅改修 (建築家 : 鴻野 吉宏) の作品画像 新野の住宅改修 (建築家 : 鴻野 吉宏) の作品画像 新野の住宅改修 (建築家 : 鴻野 吉宏) の作品画像
新野の住宅改修 鴻野 吉宏 | futuretank architects 一級建築士事務所
新野の住宅改修 (建築家 : 鴻野 吉宏) の作品画像 新野の住宅改修 (建築家 : 鴻野 吉宏) の作品画像 新野の住宅改修 (建築家 : 鴻野 吉宏) の作品画像
新野の住宅改修 鴻野 吉宏 | futuretank architects 一級建築士事務所

最後の住宅では、無機質な鉄骨をあいて構造体として見せる意匠に仕上げている点が特徴の事例です。

インテリア全体は一見、木造住宅を思わせる雰囲気ではあるものの、梁を隠さずにそのまま見せています。梁の重量鉄骨を淡いグレー色で塗装することで、目立ちにくい印象になると共に、尖りすぎない、やさしいモダンなテイストも創り上げています。

鉄骨でもスタイリッシュ寄りのインテリアだけでなく、こちらの事例のようなナチュラルなインテリアに設計することもできます。

6. まとめ

titel(タイテル)の建築家による事例でも感じていただけたような、鉄骨造ならではの開放感はいかがだったでしょうか。

木造や鉄筋コンクリート造では創りえない、連続した開口から、出隅部・入隅部の開放感を実現しています。木造では、開放感と比例して耐震性の部分が弱点になりがちですが、鉄骨では木造に比べて耐震性能が取りやすい点も魅力と言えます。

このように、開放的な間取りを検討したい方は、ぜひ titel(タイテル)の建築家に相談してみませんか? まずは一級建築士の資格をもつタイテル建築アドバイザーがあなたのご希望を伺い、理想の家づくりをサポートいたします。