ピロティの設計で失敗しないためのコツ
高級住宅などでよく採用されているピロティについて取り上げていきます。
住宅全体を浮かせたようなデザインになるピロティですが、設計上気を付けないといけないポイントもあります。 ピロティのメリットやデメリット以外に気を付けるべきポイントや、titel(タイテル)の建築家による事例も紹介していきます。 特に、デザイン性が重要な要素でもあるピロティの事例は、検討している方であれば参考にしてみてください。
それでは今回の記事のまとめポイントを、冒頭にお伝えします。
- ピロティとは、 2 階以上の建物で 1 階部分が柱だけで構成された屋外の空間で、建物や希望によって様々な空間として活用できる。
- ピロティがあるメリットは、スタイリッシュな外観以外にプライベートな屋外空間を確保できること。
- ピロティを設計する上でのデメリットは耐震性能に配慮が必要になることと、コストとしては高くなりがちである点。
- 設計で失敗しないために、構造計算をもとに耐震性をしっかり確保する。また、バリアフリーの観点では不利になることに注意。
1. ピロティとは
まず「ピロティ」は、 2 階以上の建物で 1 階部分が柱だけで構成された屋外の空間のことを指します。
事例写真ように、屋外空間ではあるものの、 2 階部分が屋根となっている空間です。
駐車場や庭といった役割を果たすこともありますが、建築のデザインとして取り入れられ、テラスとなっている場合もあったりと様々です。
まずはピロティを設けるメリットからみていきましょう。
2. ピロティのメリット
戸建住宅においてピロティを設ける主なメリット、 3 つを紹介していきます。
2-1. 外観をスタイリッシュ・スマートに仕上げる
1 つは、スタイリッシュな外観を創り上げることです。
1 階部分がピロティとして空間が空いていると、建物全体がフロート状(浮いている)の印象を与え、スタイリッシュ・圧迫感を減らすといった効果をもたらします。
一般的な住宅に比べて特別感を演出するには、ピロティは有効な設計方法でもあります。
2-2. 雨に濡れない駐車場やテラスになる
2 つ目のメリットは、駐車場やテラスとして活用できるという点です。
せっかくの空間であれば、インナーガレージ駐車場といった用途に利用するという方法もよくあります。マンションでは比較的一般的に取り入れられており、街中でも 1 階部分が駐車場になっているマンションをよく見かけます。
戸建てでは、ピロティを天候に左右されない多目的テラス・庭の確保として設計することがあります。ピロティを1階部分のテラス、もしくは庭として設計すると、屋根があるため雨天時でも使うことができるメリットがあります。
バーベキューなどのアウトドアが好きな方であれば、天候に左右されにくい状態で友人などを招いて楽しむことができます。小さいお子さんがいる家庭であれば、雨天時も屋外空間で遊んだりすることができたりと、ご家庭の状況や趣味に合わせて使用用途も様々です。
2-3. プライベートが確保された特別な屋外空間
3点目は、プライベート感が確保された屋外空間の確保です。
2点目のように天候に左右されないメリットと同時に、屋外空間とはいえ建物に覆われている部分の為、プライベート感を確保しやすいです。
建物で覆われているので周囲からみても、ピロティは半屋内のような空間となっています。
バーベキューなどのアウトドア以外にも、お子さんの遊び場としても安心感が高いです。
このようにピロティには、外観以外にも空間の有効活用という機能面で様々なメリットがあります。
3. ピロティのデメリット
メリットとは異なり、ピロティのデメリットも見ていきましょう。
3-1. 耐震性
ピロティは柱だけで 1 階部分を支えることから、壁と柱両方で支える工法に比べて耐震性が弱くなりがちです。
壁がない柱において耐震上、特に気を付けたいポイントは「柱と基礎の接合部」、そして「柱と梁の接合部」です。
壁があれば地震のエネルギーが分散されやすいですが、柱だけで構成されているピロティは接合部に地震のときのエネルギーが集中しやすくなります。そのためピロティがある住宅の場合、特に接合部については一般住宅に比べて強固な設計・施工で作り上げていきます。
もっともピロティの 1 階部分は、鉄骨や鉄筋コンクリート造で構成していくことがほとんどなので、構造計算は必須になってきます。許容応用力計算を使った構造計算であれば、こういった接合部の強度確認も構造計算を行うため必要以上の心配は不要ですが、耐震への配慮は一般的な住宅以上に必要になってきます。
このように、構造計算や建物のバランスまで考えた設計が必要なため、経験が豊富な建築家に依頼するのがオススメです。
3-2. 建築費用が高くなる
ピロティがあることにより単純に建築費用としては高くなります。
理由としては、耐震性の観点から耐震に優れた柱や部材を使用すること、ピロティ部分の構造・断熱などの追加費用、そして構造計算を行うにも数十万円のお金がかかります。
構造の費用が高くなる以外にも、このように計算の費用や、確認申請費用が 2 階建てに比べて高額になってきます。
3-3. 同じコストで作れる居住スペースが少ない
上記の建築費用と同じようはポイントではありますが、ピロティがあることで居住空間の面積の割にはコストが高くなります。
ピロティはいくらプライバシーが確保しやすいとは言え、屋外空間のため居住空間としては活用できません。しかしピロティがある分、構造躯体や外壁などが必要になってくるため、同じ居住空間を作るという視点からコストが高くなります。
同じ建築面積で、一般的な 2 階建てと同じ居住面積を確保しようとすれば、単純に 3 階建て( 1 階ピロティ・ 2 階~ 3 階が居住スペース)に近い設計になってきます。
このようにピロティを設けることで、屋内空間の確保・コスト面ではやはりデメリットになってくると言えます。
4. ピロティを設計する上で気を付けるポイント
そして、ピロティを設計する上で気を付けるポイントを紹介していきます。
4-1. 床面積への不算入および条件
屋外空間であるピロティは、基本的に床面積には不算入です。
単純にテラスや駐車場(壁などに囲まれていない駐車場)として、「外気に解放された空間」であれば床面積に不算入になり、都心の狭小住宅など容積率が厳しい土地では有利に働きます。
ただ駐車場や駐輪場でも、壁などがあって、屋内空間として囲うことができるビルトインガレージのような用途の場合は、床面積に含まれます。床面積の算入・不算入の判断基準としては、壁などがなく屋外への開放空間であるかどうか?という点です。
容積率を左右することになるため、設計士へ相談をしましょう。
4-2. 構造計算が必須になる場合がある
住宅建築において、木造平屋や 2 階建ての場合は「 4 号特例」といって簡易的な壁量計算で、確認申請を通すことができます。
しかしピロティがある住宅は、鉄骨造もしくは鉄筋コンクリート造になってくることが多く、構造計算が必須になってきます。
構造計算は、壁量計算に比べて詳細な計算を行って、建物の耐震性能を診断します。費用や計算に時間もかかることから、建築士に相談しながらすすめましょう。
4-3. 必ずしも津波に強いとは限らない
津波に強いという記事も見かけますが、一概に強いとは言い切れません。
その理由は、ある程度大きい津波がきた場合、海水が流れてくるだけではなく様々なものが同時に流れてきます。そのため、車・廃材・壊れた家などが流れてくれば、いくらピロティで空間が空いていたとしても柱にぶつかったりすることで、耐震性に影響を及ぼします。
海水は塩水であるため、一度かぶってしまうと鉄など金属を中心として腐食の原因となります。津波の後も、安全に住み続けることができるとは言い切れず、津波に強いとは言い切れません。
一般的な住宅と同じようにハザードマップなどを確認して、建築地をえらんで頂くことをオススメします。
4-4. バリアフリーの観点を考慮
現時点で健康であったとしても、家は数十年単位で長く住み続けるものです。ピロティがある住宅は、主な居住空間が2階以上になるため、必ずと言っていいほど階段を毎回上がる形になります。
齢をとってからでも、安心して使えるような設計も家族の事情などに合わせて考えておくことをオススメします。
不安な場合は、例えばホームエレベーターを取り入れる、もしくは取り入れやすい間取りにしておく、という工夫も良いでしょう。
5. ピロティの費用
ピロティの設計、構造にもよりますのでどれくらい高くなるか?の目安は一概に示すことが難しいです。しかし少なくとも数百万円以上~、建築費用としては高くなる見込みと考えてもらった方が良いでしょう。
まず一般的な木造住宅に比べて、構造を鉄骨にすることで材料としての費用が上がります。また実質3階建てになれば、鉄骨もさらに頑丈なものを使用したりと耐震性能を確保するために構造もグレードアップに費用がかかります。
鉄筋コンクリート造の場合においても同様に木造比で考えるとコストアップになります。また鉄筋コンクリート造は鉄骨造よりも、さらにコストが上がる可能性が高く、建築家とコストをよく相談しましょう。
(参考: 国税庁HP・地域別・構造別の工事費用表(1 ㎡当たり)【令和3年分用】 )
木造でコストを抑えつつ、ピロティを設計できる場合もありますので、建築士にコスト・構造をよく相談しながらすすめましょう。
6. おしゃれなピロティの事例 7 選
それでは、みなさんが気になる titel(タイテル)の建築家による事例を紹介していきます。
自分の希望や条件に合ったピロティをデザインしてくれる建築家と話がしてみたい・紹介してみてほしいという方は、タイテルの建築家紹介 も便利です。
6-1. 上原の家
こちらの事例は、 1 階のテラス部分としてピロティを取り入れています。
また、ピロティを取り入れる場合、鉄骨造・鉄筋コンクリート造が主流である旨の解説をしましたが、こちらの事例は木造設計です。
用途としては、写真の通り子どもたちの屋外の遊び場になっており、天候に左右されないピロティの活用法の参考になる事例です。
外観もブラック色で統一され、 1 階部分が半分程度ピロティになっており、デザイン性も高い事例になっています。
6-2. 上野桜木の家
都心部において、ピロティを駐車場と兼用している事例です。
間口が 2 間半にも満たない細長い敷地であることから、駐車場のスペース確保とともに、居住空間を最大化させるためにこの設計になっています。
6-3. 東浪見の別荘
こちらの事例は、増築部分にピロティを設けています。
ピロティの上部は屋上になっており、ピロティ内部・屋上共に開放的な空間になっています。
ピロティ内部はテラスと兼用になっており、ウッドデッキとして暖かい季節は気持ちの良い空間です。
6-4. 愛宕の山荘|Atago Cottage
こちらの事例でのピロティは、V字型の木製柱によってツリーハウスのように空中に持ち上げられています。
柱を何本か立てて支える構造が一般的ですが、このV字型が家のデザイン性を高めて印象的に仕上げています。( 2 本の補助柱もありますが、遠目からは目立たないようなデザインになっています)
ピロティ内は砂利が敷いてあり、駐車場としても使えるようになっています。
6-5. 石神井公園の家|Shakujii Koen House
こちらは、玄関ホールと駐車場を兼ねたピロティになっています。
全体的にはシルバーを基調としたスタイリッシュな雰囲気の住宅ですが、ピロティ内は木目を使ったデザインでやわらかいアクセントにもなっています。
柱は鉄骨 1 本で支えられており、駐車場の車の出入りの際もラクにできる設計です。
6-6. 岡本の家|Okamoto House
丘の上にたたずむ、こちらの事例では接道に面したピロティを駐車場として活用しています。
2 台分の駐車スペースと、玄関までのアプローチをピロティを通過していく設計です。
特に玄関アプローチは、雨よけになる機能的な面と同時に、ピロティによって家の格式を上げる役割も果たしており、ピロティを最大限活用した事例です。
6-7. 芦ノ湖の別荘
こちらの事例は、敷地面積としては 1447 ㎡に対して、延床 167 ㎡の別荘です。
ゆとりのある大きさの住宅ですが、ピロティを設けていることで圧迫感を減らして、スタイリッシュな印象を創り出しています。
ピロティ内部も間接照明によって荘厳な雰囲気になっており、訪問する人の印象・期待感を上げています。
7. まとめ
titel(タイテル)の建築家による事例 7 選をご覧いただくと、どれも空間を実用的かつデザイン性を高める設計としてピロティが活用されていることがわかります。
今回の記事を通して、ピロティの本来の役割と活用の仕方、そしてピロティを設計する上で気を付けなければならないポイントなどを紹介してきました。
それでは、最後にピロティの設計で失敗しないためのコツをおさらしておきましょう。
- ピロティを設計する上では、耐震性に配慮して構造計算をしっかり行うことが重要。構造計算をしっかり行っていれば、ピロティがあっても耐震強度はクリアできる。
- ピロティを導入すると建築コストとしては全体的に高額になるので、建築家とコストとのバランスはしっかり協議して設計しましょう。
- 階段を上らないと居住スペースに行けないことから、将来的なバリアフリーが必要になった場合のことも考えておくと尚よい。
- 建築家の事例を参考にして、機能性とデザイン性を兼ね備えたピロティを検討してみてください
titel(タイテル)では、一級建築士による無料相談 を無料で受け付けております。もし判断に迷った場合は、ぜひお気軽にご相談ください。
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