上原の家

敷地は、農地に囲まれた緩やかな斜面地であり、北から東まで山並みを一望できる好立地である。しかし、将来敷地の北側に大規模な幹線道路が予定されていることから、現在の農地と将来の住宅地という、ふたつの異なる敷地環境を想定して計画する必要があった。のどかな風景として数十年続いていた場所に、ひとつの建物が加わると、それをきっかけに場所の印象は大きく変わる。

作品「上原の家」の画像 その1 (建築家 : 佐々木勝敏)


よって風景を刺激することなく、以前から佇んでいたような建築とはどのようなものか考えることにした。敷地調査の際、少し離れた場所に、丸太の柱と梁に屋根を載せただけの簡素な牛舎と納屋を見つけた。最小限の要素で作られたその建物は、風景に繋がる透明性を備えており、広がる農地のなか、境界が霞んでいた。そこでこの簡素で未完の内部をもつ建築というのが、自然や風景と建築がつながる際の手がかりになると考え計画に採り入れた。

作品「上原の家」の画像 その2 (建築家 : 佐々木勝敏)


まず、最低限必要な柱梁に大らかな屋根を架けた。1階は、軒下や内庭、縁側、寝室が、等間隔な柱割の中で内外を介して段階的に繋がる。地続きの半外部空間は、周辺の風景へと視線が抜け、山からの季節風の通り道となる。主な生活空間は、将来周囲が住宅地となった際にも変わらず景観が望めるように2階に配置。外部のアプローチから浮いたヴォリュームの中に潜り込むように階段を上ると、大らかな気積をもった生活空間が、その先の眺望に繋がる。

作品「上原の家」の画像 その3 (建築家 : 佐々木勝敏)



将来この場所は住宅地となる。その時、大らかに架けられた屋根の下の半外部空間は公私を越えて街の余白として広がっていき、近隣の住宅には、その先の風景や風が届くだろう。住宅地の余白が繋がり、風通しのよい、透過性のある街並みが展開すると、いまある農地とは別の魅力的な住環境が生まれる。この住宅がモデルとなり新たな街並みを作ることが出来たら、暮らしはおのずと外部に溢れ、それが街の風景となる。透過性のある住宅計画が新たな住宅地に向けた提案につながることを願う。


作品「上原の家」の画像 その4 (建築家 : 佐々木勝敏)


作品「上原の家」の画像 その5 (建築家 : 佐々木勝敏)


作品「上原の家」の画像 その6 (建築家 : 佐々木勝敏)


作品「上原の家」の画像 その7 (建築家 : 佐々木勝敏)


作品「上原の家」の画像 その8 (建築家 : 佐々木勝敏)


作品「上原の家」の画像 その9 (建築家 : 佐々木勝敏)






作品「上原の家」の画像 その10 (建築家 : 佐々木勝敏)


作品「上原の家」の画像 その11 (建築家 : 佐々木勝敏)


作品「上原の家」の画像 その12 (建築家 : 佐々木勝敏)




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