「パティオ」の意味や住宅事例 9 選を解説失敗しないために注意することとは?
この記事のポイント
- パティオとはスペイン語で中庭や裏庭を意味する言葉
- 主なメリットは、プライベート空間をつくれる、光や風を取り入れられる、セキュリティ性が高いなど
- 排水設備や断熱性をしっかりと整えることには注意が必要
- あなたの希望や敷地の条件にあわせて自由にパティオをつくりたいときは、建築家に頼むのがおすすめ
「パティオっていったいどういうもの?」「パティオにはどんな魅力があるの?」と疑問を抱えている人もいるでしょう。パティオとは、壁や窓に囲まれた住宅の中心にある「中庭」のことです。近隣住宅からの視線を気にせず、開放的かつプライベートな空間を楽しめるとして注目を集めています。
本記事ではパティオの魅力や事例、デメリットをご紹介します。この記事を読めばパティオについて深く理解し、後悔のない家づくりができるでしょう。
1. パティオとは?
まずは「パティオ」の意味や、混同されるケースも多い「テラス」との違いについてご説明します。
1-1. 「中庭」「裏庭」のこと
パティオとはスペイン語で「中庭」や「裏庭」を意味する言葉で、「住宅の壁や柱、窓などに囲まれた小庭のようなスペース」を指します。
スペイン南部のアンダルシア地方では真夏になると気温が 40 度を超えるため、暑さをしのぐ暮らしのアイデアとして利用されています。涼しげな井戸や噴水が設置され、周りには美しい花々や樹木が植えられています。
スペインのパティオは古い病院や学校などにも併設されており、通りすがりの人が休憩したり、個人宅では家族や友人が集まっておしゃべりしたりする「くつろぎの場所」として利用されているのも特徴です。
《 日本で見られるパティオは? 》
一方で日本の住宅におけるパティオは「スペイン風にデザインされた小庭」を指す場合もあれば、単純な中庭をパティオと呼ぶケースもあります。集合住宅の場合は、入居者だけが利用できる「屋外の共同スペース」を指すこともあるでしょう。
日本のパティオは、壁や窓で四方を囲んで完全なプライベート空間を楽しめる「ロの字(回廊型)」タイプや、三方向だけを壁や窓で囲い開放感を演出した「コの字」タイプなどがあります。またパティオがある住宅は「コートハウス」と呼ばれたりもします。
1-2. 「テラス」とは何が違う?
パティオは屋根がないオープンな中庭を指し、テラスは地面から一段盛り上げられた場所を指すことが多いです。
パティオもテラスも「1 階部分に設けられている屋外スペース」であるため、同じものと考えてしまう人も少なくありません。
そもそもテラスとは、屋根の有無にかかわらず「地面から一段盛り上げられた場所」を指します。壁や掃き出し窓で室内とつながり連続性がある点が特徴です。床材にはタイルや石などが使われるケースも多く、屋外用のチェアやテーブルを置いてコーヒータイムを楽しんだりできます。
一方でパティオは中庭や裏庭を指しているほか、「空に開かれた中庭」といった意味があります。つまり「屋根がないオープンな中庭」がパティオなのです。パティオの本場・スペインのように樹木や草花などを植えれば、テラスよりも中庭の要素を色濃く映し出してくれるでしょう。
2. パティオつきの住宅の魅力
次にパティオつき住宅の魅力を4つご紹介します。
2-1. 日々の喧噪から解き放たれるプライベート空間
パティオつき住宅の最大の魅力は、近隣住宅からの視線を遮って作られる「自分だけの空間」を楽しめることです。とくに四方が壁や窓で覆われているロの字型のパティオは、第三者の視線がまったく気にならない完全プライベートな空間を堪能できます。
また四方のうち一面だけを囲わないコの字型のパティオなら、近隣住宅の視線を遮りながらもさらに開放的な空間を楽しめるでしょう。
一般的な庭の場合、隣近所から庭の様子が丸見えになるケースも多いため、目隠し用のフェンスを設置する人も少なくありません。庭の前に道路がある立地では、キレイに整えた庭を眺めているときに車や通行人が通ったりとリラックスした雰囲気にはなれないでしょう。
その点、プライバシーを確保できるパティオつき住宅なら「我が家だけの中庭」を実現でき、日々の喧噪から解き放ってくれるのです。
2-2. 暮らしに「光」や「風」を取り入れられる
一般的な住宅に比べて光や風を取り入れやすくなる点も、パティオつき住宅の大きな魅力です。
たとえば「隣にビルが建ってから日当たりが悪くなってしまった」といった経験をされた人も少なくありません。しかしこうした場合でも、パティオがある住宅ならば上方から日光を取り入れられるため周囲の建物の影響は受けにくいといえます。
また日当たりが悪い北側の部屋でも住宅の中心にパティオがあれば、採光性の高い南向きの面が生まれて温かい日の光が当たるようになります。
逆に風がとても強い海辺や山沿いの敷地などで、外からの風を取り入れたいが表に庭を置くと風が強すぎるときなどに、建物の内側にパティオをつくることで適度な風や空気を取り入れることができたりもします。
希望や立地条件にあわせて色々な使い方ができるのがパティオの便利なところです。
2-3. 毎日を癒やし、心を豊かにしてくれる
外界と切り離された空間では、誰にも邪魔されない自分だけの特別な時間を過ごせます。スペインで憩いの場として利用されているパティオですが、日本においてもその活用方法に大きな違いはありません。
上方からの清々しい温かな光に照らされた中庭では、自由な楽しみ方がたくさんあります。たとえば家庭菜園を楽しんでみたり、樹木や草花を植えて自然を身近に感じてみたり、チェアとパラソルを設置して日光浴でリフレッシュしてみたりと人それぞれの楽しみ方があります。
住宅の中に心地よい時間を過ごせる場所ができれば、仕事や家事、育児で疲れ切った毎日を癒やし心を豊かにしてくれるでしょう。
2-4. セキュリティ性が高く、安心して子どもが遊べる
住宅の中心にあるパティオは家の中を通らなければたどり着けないため、第三者の侵入も防ぎやすくセキュリティ性に優れています。そのため子どもやペットとも安心して遊べます。道路に飛び出してしまう危険性もないため、安全にのびのびと過ごせるでしょう。
加えて換気したいときも、時間帯を気にせず窓を開けられます。不審者の侵入を心配して夜は窓を閉めっきりにしている場合でも、パティオなら気にすることなく空気の入れ換えが可能です。
3. 建築家によるパティオの事例 9 選
ここからは建築家によるパティオつき住宅の事例を 9 つご紹介します。中庭でプライベート空間を楽しみたいと考えている人は、ぜひ参考にしてみてください。
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3-1. 自然を堪能できる中庭
こちらの住宅では、各部屋の開口部が中庭に向かうように設計しました。開口には太陽光を優しく取り入れる経木簾戸(きょうぎすど)や障子を選ぶことで、中庭に注ぎ込む光とは別の光の表情が楽しめるようになっています。
また中庭には、ノムラモミジやアオハダといった背の高い樹木を植えて、まるで建物が雑木林のなかに建っているかのようなムードを作り出しました。
3-2. 晴れ晴れした空の下で一眠りしたくなるパティオ
続いてはインナーガレージ付きのコートハウスです。複数本の樹木を植えて緑を身近に感じられる中庭になっています。天気が良い日は備え付けのハンモックに揺られて、リラックスタイムを楽しめるでしょう。
またこちらの住宅では、吹き抜けリビングを利用した圧巻のシアターシステムも設計されているため、ご夫婦で映画を見ながらゆったりした時間を過ごせます。
3-3. どこにいても絶景を楽しめる家
スペースが限られてしまうことの多い東京都心に建つこちらの住宅。狭い敷地でありながらも、屋根のないパティオをデザインすることで効率的に光や風を取り入れています。
開放感を存分に味わうために、中庭は屋内と同じ床材を精選しました。さらに部屋の仕切りや扉を一切設けない独創性によりすべての空間が一つになり、どの場所からも空を見上げて暮らせるようになっています。
3-4. 開放感抜群の大きな窓で四季を楽しむ
避暑地で有名な軽井沢のこちらの住宅では、コの字型のパティオを設計しました。
家族がのびのびと過ごせる広々としたリビングや、明るい日の光を背に受けて料理を楽しめるキッチンなどに囲まれた中庭では、樹木を植えて自然を堪能したり友人を呼んでパーティーを楽しんだりできます。
開放感あふれる背の高い窓は、大きなスクリーンとして四季を彩ってくれるでしょう。
3-5. 家族との会話が弾む洗練された空間
近代的な雰囲気を思わせるこちらの住宅。庭の中央には、居間の延長として利用できるように大谷石を敷き詰めたテラスとベンチを設計しました。
そして周囲には、季節の移ろいを楽しめる豊かな樹木たち。まるで森の木陰にいるかのようなリラックスムードで、家族との大切な時間を過ごせます。
3-6. 地階を利用したスリムなパティオつき住宅
若いご夫婦からご依頼を受けて建築したこちらの住宅は閑静な場所にありました。採光性を良くするために光が降り注ぐ中庭をデザイン。各階はしっかりとプライバシーを確保しながらも、温かなパティオで家族だけの空間を作り出します。
敷地が限られていたため一般的な間取りを採用するのは難しいと判断し、地面よりも床が下にある地階を設けています。
3-7. 無駄を削ぎこだわり抜いた、心和むパティオ
リビングの大きな窓と和室、外壁で囲ったこちらのパティオつき住宅は、庭石や灯籠を配置することで格調高い中庭を演出しました。周囲にはモダンな砂利を敷き詰めて、和の趣を感じられるようになっています。
リビングで過ごしているときにふと中庭に目を向ければ、日々の喧騒から離れてリラックスした気持ちになれるでしょう。
3-8. あっさりした空間で心和むひとときを過ごす
古民家のような風情を感じるこちらの住宅では、外観とは裏腹にシンプルかつおしゃれな中庭を設計しました。石のタイルと砂利を床材に選定し、植物はシンボルツリー1本であっさりとしたデザインです。
天井まである大きな窓からは、温かい日の光が室内に降り注ぎます。夜になれば、室内照明がぼんやりと中庭を照らし、パティオをロマンチックなムードへと変貌させてくれるでしょう。
3-9. 白で統一された至高の癒やし空間
清潔感のある白を基調としたこちらの住宅は、室内の床材と同じタイルを中庭にも用いることで外と中に統一感をもたせました。
シンボルツリーを1本植えるだけにとどめたデザインによって、オープンな空間を作り出しています。またスッキリとした中庭は、窓からの眺めを邪魔するものがなく夜空を独り占めできる点も魅力。
こうしたシンプルなつくりのパティオでは、チェアとパラソルをセットして読書をしたり、友人を集めてパーティーを開催したりと活用方法も豊富です。
4. 注意しておきたいパティオのデメリット
プライベート空間を存分に楽しめるパティオつき住宅ですが、注意しておきたい難点もあります。ここではパティオつき住宅のデメリットを4つご説明しましょう。
4-1. 排水設備を整える必要がある
まず四面が壁や窓に囲まれたパティオは、雨水が内側にたまらないように排水設備を整える必要があります。水の逃げ場を作らなければ常に水がたまった状態となり、虫が湧いたりカビが生えたりしてしまうため注意しましょう。
また排水設備に土や枯れ葉などが詰まると故障の原因となります。そのため業者に清掃を依頼したり、自分で定期的に掃除したりとメンテナンスも欠かせません。
通気性に優れたコの字型のパティオにおいても、三面は壁や窓に囲まれていて湿気がこもりやすいため排水設備を考えておくとよいでしょう。
4-2. 夏は暑く、冬は寒い?
パティオつき住宅は断熱性に劣ってしまう点もデメリットです。パティオを家の中から眺望するのに、ほとんどの場合が大きな窓を複数枚設置しています。一般的に、外気に触れる窓は熱や冷気を出入りしやすくしてしまうため、夏は暑く、冬は寒い住宅になる可能性があることも留意しておきましょう。
また快適さを維持しようと暖冷房を使いすぎて、電気代が予想以上に高くなってしまうケースも少なくありません。こうしたデメリットを防ぐために、パティオつき住宅を検討する際には断熱性能の高い窓や壁を選ぶようにするとよいでしょう。
4-3. 建築費用に注意:建築家に相談しましょう
3 つ目のデメリットは建築費用が高くなるかもしれないことです。パティオつき住宅は一般的な家に比べて建物の角が多く、それだけ材料や補強材などが必要となり、費用がかさむことがあります。
加えて「せっかくパティオつきの住宅を建てるのだから、オリジナリティのある家にしたい」と材料やデザインにこだわり過ぎてしまう点もコストが上がる要因です。
パティオが付いたこだわりの住宅設計を希望する場合には、家づくりの専門家や建築家に相談してみることをおすすめします。あらかじめ建築家に総予算を伝えておくことで、予算に合わせたパティオ設計を提案してくれるからです。
タイテルでは、パティオつきの住宅建築の相談に乗ってくれる建築家を紹介することができます。パティオが付いたこだわりの住宅設計を希望される方は、ぜひ タイテルの無料相談 をご利用ください。
4-4. メンテナンスの費用や手間がかかる
長期的に見てメンテナンスの費用や手間がかかるかもしれないところもパティオの難点の一つです。
新築の場合、家を建ててから 10〜15 年ほど経つと至る所をメンテナンスしなければなりません。たとえば外壁のリフォームをする場合、一般的な住宅よりも外壁面が多いパティオつき住宅はその分コストが高くなります。
加えて、どの角度からも中庭を眺められるように窓が多く使われていることから、窓拭きの手間も増えます。天井まである大きな窓の場合、上のほうが届かず自分では掃除できないケースもあるでしょう。その場合には清掃業者に依頼する費用や手間がかかります。
5. まとめ
近隣住宅からの視線を遮ったプライベート空間を堪能できるのが、パティオつき住宅の醍醐味です。樹木や草花を植えて自然とふれあったり、友人や家族を集めて中庭パーティーを開いたりとさまざまな楽しみ方ができるでしょう。
しかし魅力たっぷりのパティオつき住宅にも、いくつかの難点があります。これらのデメリットをしっかり理解したうえで検討していくことが重要です。
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