【実例付】建築家が作るローコスト住宅は何が違うのか
ローコストでも満足できる家にするには、おしゃれにしながらコストダウンできるテクニックを持つ建築家に頼むことをおすすめします。しかし初めて家を建てる方にとって、建築家が作る家はローコストメーカーと比べ何が違うか、わかりにくいかもしれません。
そこで今回は、建築家が建てるローコスト住宅の実例と、ローコストメーカーが作る家との違いをわかりやすく解説します。読んでいただくと、おしゃれで使いやすいローコスト住宅を建てるには誰に相談すれば良いか、きっとわかるはずです。
まず、この記事のまとめポイントです。
- ローコストメーカーの家は材料や設備の大量発注で価格を下げているため、どの家も同じようなデザインや仕上げになりやすい。
- ローコストメーカーは人件費のコストダウンのため、打ち合わせ期間を短くしている。そのため完成したらどんな家になるか、事前にイメージすることが難しい。
- 建築家の建てる家はコスト配分が自由なので、こだわりの部分に費用をかけ、その他のところは一般的な材料などを使ってコストダウンできる。
- 建築家は機能を絞ったキッチンにしたり、内装をシンプルにしたりなどでコストダウンする。そのためデザインや使いやすさが犠牲にならない、満足度の高いローコスト住宅が実現できる。
1. 建築家が作るローコスト住宅の事例
まず建築家が作った、ローコスト住宅の実例をご紹介します。建築家のこだわりを見れば、コストダウンをしても十分におしゃれな家にすることがわかるはずです。
1-1. モダンなかたちでコストを抑えた家
凹凸が少なく窓も最小限の、モダンでシンプルな形にすることでコストを抑えた実例です。シンプルながら周囲とくらべると独創的なかたちであるため、十分に存在感を放っています。
また外壁に白と黒のコントラストを作ることで、単調になりがちなシンプルデザインに変化を加えています。
1-2. シンプルでローコストな内装
内装の装飾をできるだけ省くことでコストを抑えています。ともすると味気ない印象になるシンプルな内装ですが、階段の底面を見せることで変化を加えています。
また奥のカウンターや右手に見えるラックに白を使い、スクエア感をプラスしてモダンテイストもプラスしています。
1-3. 目的を絞り低コストなキッチンに
キッチンを天板とコンロ、オーブン、水栓とシンクに絞り、コストを抑えたキッチンです。収納の扉をなくすことで、大きなコストダウンにつながります。
通常は下にある収納や本体のフレームも無い最小限の機能ですが、十分に料理することができます。
下部がオープンなので、住みながら自分たちの使いやすいようにラックやワゴンを加えアレンジもできます。
1-4. 現し仕上げで費用を抑えた平屋
1 階に屋根がかかる平屋の特徴を活かし、天井を貼らず骨組みを見せる「現し仕上げ」にした例です。木材の素材感が住まいをナチュラルな雰囲気にし、さらに個性もプラスしています。
また右の収納は壁と兼用しながらラワン合板のまま仕上げることで、デザインに統一感を持たせながらコストダウンに成功しています。
1-5. 壁を最小限にしてローコスト化
壁を最小限にして費用を抑えながら、外の景色と室内が一体になるようにデザインされた住まいです。壁が少なくても決してチープには見えず、むしろ壁で視界をさえぎることが惜しいとさえ感じます。
室内の装飾も最小限で、コストを過剰にかけなくてもプランニングでおしゃれにできる好例と言えるでしょう。
1-6. 躯体を活かすリノベーションで費用削減
天井などはマンションの躯体をそのままにして、コストを抑えたリノベーションの事例です。コンクリートの素材感をあえて見せることで、作り込みすぎないラフな雰囲気を醸し出しています。
また室内に置かれたグリーンが古びたコンクリートを質素に感じさせず、リゾート感すら加えている点は大いに参考にしたいポイントです。
2. なぜローコストメーカーは安いのか
ここからはローコストメーカーが、極端に安く家を作れる理由を解説します。頼む前にその理由を知っておけば、住んでから「こんなはずではなかった」と後悔してしまうことを防げます。
2-1. 材料や設備の大量発注
ローコストメーカーでは 1 年間に何百軒、何千軒もの家を建てています。そのため材料や設備を大量に発注し、建材メーカーから割引してもらうことで価格を下げています。
これはコストダウンの面ではとても効果のあることですが、「ローコストメーカーの家はどれも同じに見える」と言われる要因にもなっています。
2-2. 人件費をカット
もう一つのローコストメーカーの安さの理由は、人件費をカットしていることです。具体的には、次の 2 つの方法によって人件費を削減しています。
2-2-1. 打ち合わせの短縮
ローコストメーカーでは、少人数のプランナーやインテリアコーディネーターで多くのお客様を担当できる仕組みを作り、社員を減らして人件費を抑えています。
例えば間取りや壁紙などの内装は、用意された数パターンの中から選びます。また設備も選べる種類を限定し、打ち合わせが短時間で終わるようにします。中には打ち合わせの回数や、図面決定までの期間に上限を設けているローコストメーカーもあります。
こうして短期間で打ち合わせをこなせるようにして、人件費をカットしているのです。
2-2-2. 現場作業の削減
またローコストメーカーでは家を作る現場の作業が少なくなる工夫をして、大工さんなどの人件費も下げています。
例えば作業をマニュアル化したり、いつも同じ材料や設備を使うようにしたりなどで、できるだけ早く工事が終わるようにしています。こうして 1 軒にかかる大工さんなどの報酬を減らし、コストを削減しているのです。
2-2-3. 監理コストの削減
ローコストメーカーでは見積もりのチェックや施工業者の選定、工事の監理といった、監理の手間を減らしてコストを下げています。これはローコストメーカーが設計と施工を同じ会社で行っており、それぞれのチェックがかんたんに済むためです。
ただこれでは、見積もり金額が適正かや施工ミスや手抜きがないかを、中立の立場でチェックする人がいないことになります。ローコストメーカーに家づくりを頼むときは、相手を前面的に信頼するかお客様自身が注意を払うしかないのです。
3. 住んでみてわかるローコストメーカーの家
こうして作られたローコストメーカーの家は、実際に住んでみると次のような部分で値段を抑えたことがわかります。
3-1. 画一的なデザインや仕上げ
ローコストメーカーの家は、どれも似たようなデザインや仕上げになってしまうことがあります。これは大量に仕入れた同じ材料や設備を使い、間取りやデザインは限られた中から選ぶためです。
間取りやデザインにそれほどこだわりがない、という方には特に大きな問題ではないかもしれません。しかしせっかく家を建てるなら、平凡でありふれた家にしたくないという方は注意が必要です。
3-2. 簡素な材料や設備
ローコストメーカーの家で選べる材料や設備の多くは、低コストでデザインや機能は簡素なものです。これは材料などの一括購入で費用を抑える効果を最大限にするためで、凝ったデザインや高機能なものは割高なオプションになるのが一般的です。
そのためデザイン性の高い材料や機能がたくさん付いた設備を検討したい方は、どんな選択肢が用意されているか事前にしっかり確かめておくことをおすすめします。
3-3. 短期打合せの弊害
ローコストメーカーの家では、「他の家と似たようなデザインになりがち」なことや「簡素な仕上げや設備」に完成してから気付くことがあります。これは打ち合わせ期間が短く、どんな家になるかをお客様がイメージできないまま家づくりが進んでしまうためです。
ローコストな家にしてもどんな家になるか、あらかじめわかっていれば納得できると思います。しかしお客様は家づくりに不慣れなため、どんなデザインになるかや設備が使いやすいかを、短い打ち合わせではイメージできないでしょう。
ローコストメーカーの家の最大の注意点は、「住んでからどこがローコストかわかる」ことです。短期間の打ち合わせでは難しいかもしれませんが、どんな家になるかしっかり確かめながら家づくりを進める必要があるのです。
4. 建築家なら自由にコスト配分できる
建築家の作る家なら、コストを抑えながら満足度の高い家を作ることができます。ローコストメーカーのように大量仕入れや打ち合わせの簡略化でコストを抑えるのではなく、予算の配分をコントロールして低価格化を実現するためです。
例えばキッチンにこだわりがあるならそこには費用をかけ、代わりにお風呂など他の設備はコストを抑えて全体の予算を調整します。
もちろんローコストメーカーのような、極端な低価格にすることは難しいかもしれません。しかし全体の価格は抑えながら、こだわりたい部分には予算をかけ満足度の高い家を作るのは、建築家の方がはるかに実現しやすいと言えます。
5. 建築家がローコストにするテクニック
ここからは建築家がローコスト住宅にする、具体的なテクニックをご紹介します。どんな部分でローコストにしているか、あらかじめわかれば、安心して建築家に相談できるのではないでしょうか。
自分たちの希望や条件にローコスト住宅を設計してくれる建築家と話がしてみたい・紹介してみてほしいという方は、タイテルの建築家紹介 も便利です。
5-1. 必要なものを絞る
建築家が作る家は、こだわる部分とそれ以外を柔軟に組み合わせて価格を抑えます。例えばキッチンでオーブンが必要なら取り入れ、一方で食器洗い機が不要なら取り外して価格を抑えるなどです。
もちろんローコストメーカーでも、同じような組み合わせの変更はできます。しかし設備や材料は決まったものを大量に仕入れているため、規格外の組み合わせは安くならないどころか割高になってしまうことさえあります。
建築家ならお客様のこだわりに絞って予算をかけ、不要な部分の金額を抑えてローコスト化ができるのです。
5-2. シンプルな内装
建築家はできるだけ家の内装をシンプルにして、コストダウンすることもあります。内装がシンプルなら、使う材料の費用と作る職人さんの工賃の両方を抑えられるからです。
しかしシンプルな内装は、一歩間違うとおしゃれさの無い家になりかねません。ところが建築家なら、色やかたち、照明などを工夫して、最小限のコストでおしゃれになるよう設計します。
内装の選択肢が限られるローコストメーカーと違い、さまざまな材料が選べる建築家だからこそできるローコストテクニックと言えます。
5-3. 現し仕上げ
天井や壁を張らずに骨組みなどを見せる、「現し仕上げ」も建築家ならではのローコストの方法です。こちらも天井や壁を作らないことで、材料費や工賃を減らします。
ただし現し仕上げは部屋全体で統一感を持ってデザインをしないと、安っぽい見た目になってしまいます。上の事例では天井の一部を現し仕上げにし、さらに奥に見えるキッチン正面の収納扉や壁なども素材を見せることで、違和感なくコストダウンをしています。
おしゃれに見える現し仕上げにデザインできるのも、センスある建築家だからこそ可能なローコストテクニックです。
5-4. スクエアなかたち
建築家は建物のかたちを、スクエアでシンプルにすることでもコストを抑えます。細かな凹凸が少ない家は材料を細く加工したり、それを組み立てたりする手間がかからないからです。
上の事例のようにスクエアなかたちの家では、外壁をつなぎ合わせる手間代や継ぎ目に施す防水の費用が抑えられます。しかもこうしたシンプルな家でもスタイリッシュな外観にできるのは、デザイン力のある建築家ならではです。
5-5. 仕切りの少ない間取り
建築家は部屋を仕切る壁やドアを、なるべく少なくしてコストダウンをします。こちらも壁やドアの材料費や、職人さんの作業を減らすことで費用を抑えます。
またリビングやホールのように人がよく通る場所は、壁やドアを減らすと移動がスムーズになります。さらに部屋がより広く感じられるため、少ない面積で家づくりを考えている方にもおすすめのテクニックです。
また建築家なら上の事例のように階段のかたちや通路の抜け方に変化を付け、シンプルな中にもおしゃれさを感じるデザインに仕上げてくれます。
6. まとめ
ローコストメーカーの家は材料や設備の大量発注や、打ち合わせを短縮することでコストダウンをしています。そのため平凡なデザインの家になったり、材料や設備が簡素になったりすることがあります。
一方で建築家の作る家はお客様が大切にしたいところに予算をかけ、不要な部分の費用を抑えます。そのため希望の予算内にしながら、使い勝手やデザインも満足できる家を実現することができるのです。
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