垂れ壁の必要性とオシャレに仕上げた事例 10 選!
垂れ壁はインテリアのデザインとしても、なくしたいと思われる傾向にあります。
デメリットに焦点が当たりがちな垂れ壁ですが、アーチ型にして洋風に仕上げるなど、作り方によってはメリットを出すことができます。
また、垂れ壁をおしゃれに仕上げている施工事例も参考にしてもらえるよう、titel(タイテル)の建築家による垂れ壁のある家も紹介します!
それでは、まず今回の垂れ壁について、抑えておくべき重要なポイントをみていきましょう。
- 垂れ壁は天井から下がっている壁のことで、下がり壁とも言われる。
- 躯体の構造・建築基準法・消防法など様々な理由で設けられ、影ができる等のデメリットがある一方、アーチ型にしたりカーテンを活用するなど工夫次第ではオシャレになる。
- 垂れ壁は、視線の抜けを確保しつつ「空間の縁を切る」ことができる。
- 設計士の腕次第で、デメリットである圧迫感もインテリアに馴染ませて軽減できる。
1. 垂れ壁(下がり壁)とは
垂れ壁とは、天井や梁から床面へ向かって垂れ下がっている壁のことです。
役割・用途によって、厚みや下がり寸法などは建物によって異なってきます。
垂れ壁の役割は、構造躯体の剛性(躯体の曲げ・ねじりの外的な力に対する変形のしづらさ)を上げるためであったり、火事のときに煙が室内に広がらないようにするための防煙壁として設けられたりと様々です。
例えば防煙の場合は、規模の大きい建物の場合で使用される防煙用の垂れ壁は、消防法で 50 cm 以上〜 80 cm 以下と寸法が決まっていたり、建築基準法で不燃素材を使用するといった項目が定められています。
一般的な住宅で設けられる垂れ壁は、木造住宅では 2 × 4 工法や 2 × 6 工法で多く見られます。
理由は、柱でなく壁で構成している構造躯体の為、パネルで仕切っているラインの強度を上げるため、垂れ壁が出てくることがよくあります。
役割ごとに、垂れ壁の内容を掘り下げていきましょう。
1-1. キッチン用 防煙壁
キッチンは下がり壁が出る可能性がある箇所です。
室内で火を扱う場所の為、建築基準法で内装で使う部材の規定が細かく決められています。
しかし、この規定は 2009 年に緩和され、戸建住宅はコンロ周りを不燃材(一般的に用いられるキッチンボードなど)で覆えば防煙壁を作る必要がなくなっており、今ではほとんど防煙壁は設けられていません。
そのため、キッチンまわりで垂れ壁が出てくる可能性は、構造上の理由以外はほとんど考えなくてよいでしょう。
1-2. 2 × 4 工法( 2 × 6 工法)の垂れ壁は躯体剛性 UP
先ほど少し触れましたが、 2 × 4 工法は柱でなく壁で支える工法です。
そのため、耐力壁のラインを中心に開口を設ける際に、垂れ壁を設けて耐力を確保することがあります。
これは内部および外壁ともに建築基準法上で様々な制約があるため、一般的には 2 × 4 工法などのパネル工法は在来工法等に比べて、大きな開口をもうけにくいデメリットがあります。
その分、地震に対する耐力は確保されますが、開口の大きさで開放感を重視する方には比較的不向きな工法と言えます。
1-3. RC造の垂れ壁の用途は様々
鉄筋コンクリート造(RC造)も同様に、梁として垂れ壁が室内に出てくる可能性があります。
RC造には、四角柱の柱でなく柱の代わりになる壁、そして床で建物を構成する「壁式構造」という構造があり、壁式構造の場合は特に垂れ壁が出てくる可能性が高いです。
これは、壁の量を増やすことで建物の強度を確保するために発生するもので、見た目は垂れ壁のように見えても「壁梁(かべばり)」と呼ばれる構造部材です。
壁梁は梁として荷重負担することを想定した構造上、必要な部材となっており取り除くことができません。
また、RC造においては防煙壁としての役割を果たすために垂れ壁を設ける場合もあり、いずれにしても法規上、構造上で必要な壁になります。
1-4. 垂れ壁の種類
木質系であれば、リビングと廊下の間のドアは高くする方もいますが、垂れ壁があるとドア開口を大きく高く取れません。
ここの部分に一般的なドアを設けても良いですが、インテリアによってはドアを設けずにアーチ型の開口にしておくことも良いでしょう。
上図の写真のように、パントリーのようなコンパクトな場所はドアを設置しなくとも、用途上は特に問題はなく、むしろドアがない方が使い勝手が良いと言えます。
長方形の開口に比べてアーチ型にすることで、意匠デザイン上もナチュラルでやわらかい印象を与えることができます。
一方で、和室は垂れ壁が多い部屋でもあります。
旧来からの床の間は垂れ壁を設け、建築用語では「落とし掛け」という名前もついています。
和室の建具である襖も、 1.8 m 程度に鴨居の高さが設定されていたりと、空間の重心を低くするため垂れ壁をあえて設ける場合もあります。
2. 垂れ壁のメリット
垂れ壁を設けるメリットとしては、2 × 4 工法や RC造においては構造躯体の強度を上げる役割以外に、インテリアや実生活などの側面からメリットを紹介していきます。
2-1. 空間の仕切り
垂れ壁は一続きの空間でありながら、空間を仕切りたいときにピッタリな手法の 1 つです。
例えば、上図における事例をもとに紹介しますと、リビングと隣接しているキッチンはドアもなく開放的な一続きの空間になっています。
そこの天井部に垂れ壁があることで、視線の抜けを確保しつつ、キッチン空間とリビングとの「空間の縁を切る」ことができています。
ドアは毎回開け閉めすることも面倒くさい、でもなんとなく空間としては分けたい、というニーズにマッチしています。
なお、子供部屋を将来的に分ける目的として、新築時にあらかじめ垂れ壁を設けておく場合があります。
しかし、実際には天井・床・壁それぞれに下地が入っていれば、工事としては垂れ壁の有無でそこまで施工性は変わりませんので、最初は一部屋で作る場合は垂れ壁は不要でしょう。
2-2. 洋風の住宅にはアーチ形がピッタリ
欧米では元々、木造であれば 2 × 4 工法が主流であるため、アーチ形の開口はよく使われていました。
インテリアとしては、北欧系のインテリアやかわいい感じのナチュラルなインテリア、トラディショナルなインテリアなどにマッチします。
単純な開口では味気がないですが、アーチ形にするだけで開口部が特徴的なインテリアのワンポイントへ変わり、オシャレさもアップします。
また単純な垂れ壁にしておくことより、丸みを帯びた形状に仕上げることで、室内の圧迫感を無くす効果もあります。
3. 垂れ壁のデメリット
一方、垂れ壁自体のデメリットもみていきましょう。
3-1. 圧迫感を感じる
鉄筋コンクリート造などで梁として出てくる垂れ壁は、厚みもあると圧迫感を感じてしまうこともあります。
また、背の高い方であれば視線には入る範囲も広くなり、圧迫感を感じやすくなることも想定されます。
この場合はアーチ型にする、もしくはクロス・照明などで工夫をしたり、空間の仕切りとして役割を明確化させるなど設計でカバーしていくことが重要です。
3-2. 影ができる(照明との兼ね合い)
垂れ壁のある周辺の照明設計は、場所によっては陰影を生んでしまい、より暗く感じてしまう要因になりかねません。
垂れ壁の場所や寸法などにもよりますが、垂れ壁の手前より奥側の方が明るいと、手前側に影が出来て、より一層垂れ壁の存在感が増します。
そのため、垂れ壁がある箇所の照明設計は気を遣って考える必要があります。
4. titel(タイテル)の建築家による事例
それでは、 titel(タイテル)の建築家による垂れ壁がある住宅などの事例をみていきましょう。自分に合った垂れ壁のデザインをしてくれる建築家と話がしてみたい・紹介してみてほしいという方は、タイテルの建築家紹介 も便利です。
4-1. パブリックとプライベートを両立したオープンな二世帯住宅
フロアを 1 つのオープンな空間で仕上げた 2 世帯住宅の事例です。
自然の日射や通風を考えられたオープンな設計になっており、内部~外部とのつながりを感じられる設計になっています。
この中で 1 つの空間に、それぞれのエリアごとの部屋の役割を持たせるため、垂れ壁と腰壁が活用されています。
一方、この垂れ壁は単純な垂れ壁でなく、垂れ壁を格子状に組むことで 1 つの大きな空間を生み出すための構造部材(梁)でもあります。
梁である垂れ壁と腰壁を、空間設計と組み合わせることで、構造とエリアの区分けと両者の役割を上手く活用している事例と言えます。
4-2. ホワイトを基調にしたナチュラルモダンの家
2 例目は、アーチ型開口を活用した事例です。
全体的にホワイトを基調としたやさしい雰囲気をベースにして、所々にアーチ形開口を取り入れることで、特徴的なインテリアを創り出しています。
キッチン背面のパントリーは空間の仕切りと、モノをだし入れるする際ドアがない方が利便性良く使えるため、機能性とデザイン性を兼ねていると言えます。
2 つ目の階段下のアーチは、本来であれば斜めに階段を支える構造材がそのまま出てきますが、アーチにすることで圧迫感なく仕上げた事例です。
4-3. 斜め天井の開放感がある天然素材を活用した家
こちらの事例は、天然の塗壁材、自然塗料、無垢床材などの天然素材を使用して、小さなお子さんがいる家族の健康にも配慮した住宅での事例です。
ダイニングの上にある垂れ壁ですが、構造上必要なものであるものの、リビングとダイニングを仕切る役割も果たしています。
キッチンが比較的クローズな設計になっているため、ダイニングとリビングの境目がつきにくいですが、居住空間に干渉することなく縁を切ることができています。
4-4. 天井高さの変化で開放感 / 篭り感を生み出す家
人は空間の広さを様々な要素で感じ取っており、床面積だけが広さの指標ではありません。
こちらの事例は、垂れ壁よりむしろ下がり天井によって空間の拡がりを調整している事例です。
天井の高さをエリアごとによって分けることで、開放感と篭り感を使い分けしています。
リビングは開放感を出すため、天井高を高く設計する一方、寝室のベッドまわりなどの天井を下げて篭り感を出しています。
垂れ壁と同じように、天井高を変化させることも空間の区分けに良いでしょう。
4-5. 機能性を兼ねた ”柔らかい境界” が特徴の家
車いすを利用する方に合わせた、フラットに仕上げた住宅の事例です。
特徴的なパーティクルボード状の垂れ壁と腰壁が特徴的で、カーテンの内部が仕事場、写真の右手がダイニング・キッチンとなっています。
垂れ壁と腰壁でも空間の分離をしていますが、カーテンと縦型ブラインドを使うことで個室のように柔らかく領域を仕切れます。
車いすであるがゆえドアなどを極力減らし、移動しやすさを重視した設計になっています。
フロア全体が、 1 つの大きな空間となっているため、このような垂れ壁などで空間を分けることで 1 つの空間の中に複数の役割を持たせることができます。
4-6. オシャレなカフェを併設した素朴な自然住宅
6 件目は、長野県にあるカフェ・ヨガスタジオがある店舗併用住宅の事例です。
飾らない自然派な素材やインテリアに統一されている家の中には、寝室を分離する垂れ壁があります。
ベッドを仕切るように引き戸が配置されていますが、引き戸を開いた状態でもベッドの空間と、部屋としての空間が分離されています。
壁材なども変えることで、より一層空間の差が生まれて一続きでありながら、部屋が 2 つあるような設計を創り出します。
4-7. らせんと曲線美で創る家
こちらの事例は、らせん階段および吹き抜けの形状がカーブで描かれた印象的な住宅です。
事例写真の中に出てくる、欄間のようなデザインに仕上がっている垂れ壁は、奥の構造上必要な鉄骨の垂れ壁と、木の鴨居を組み合わせた設計にされています。
照明も中に仕込んでおり、単純な垂れ壁を鴨居(欄間)と重ねることでデザインに組み込み、機能とオシャレを両立させています。
構造上必要な部材を、デザインと組み合わせて融け込ませることは、設計士の腕にもかかっています。
4-8. 遊び心のあるやさしいナチュラル系の一戸建て
洋風のナチュラル系のインテリアで仕上げられた住宅の事例です。
リビングに設けられたアーチ型開口は、リビング全体をやさしい印象にすると同時に、開口の中には収納スペースがあり機能性を兼ね備えた設計になっています。
4-9. 無垢の構造梁が特徴のシンプルナチュラルの家
こちらは、先述でも取り上げたシンプルナチュラル系住宅における、純和室の事例です。
床の間の落とし掛け以外に、和室は空間の重心が低く落ち着いた設計に仕上げていきます。
リビングとの境界も同様、垂れ壁であえて建具の高さを低くしており、長押と鴨居の高さを合わせています。
和室ならではの設計ですが、垂れ壁にはこのように空間の重心を下げる効果もあるのではないでしょうか。
4-10. 高級旅館のような和風とモダンが融合した家
最後に事例は、高級旅館のような和をベースにした上質なインテリアに統一された戸建てにおける事例です。
キッチンとダイニングを建具ではなく垂れ壁を設けることで、空間の縁切りをスマートにしています。
程よい垂れ壁の、空間を区切りつつも視線の抜けを確保できるメリットを活用した事例です。
5. まとめ
titel(タイテル)の建築家による事例を通じて、構造上どうしても出てくる垂れ壁なども、インテリアに馴染ませることでオシャレになることを見てもらいました。
RC造など、垂れ壁が出やすい構造躯体でもプランニングなどを工夫することで、開放感を保ちつつ1つの空間を複数のエリアに分けることができます。
また、 2 × 4 工法などの場合は、垂れ壁に様々な設計上の工夫で、デメリットからインテリアのワンポイントに変わるアーチ型開口など活用方法は様々です。
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