「庇(ひさし)」の役割や種類を紹介!後付けで失敗しないためのポイントも
今回は、庇(ひさし)について、建物における役割や種類、そして後付けで失敗しないために抑えておくべきポイントを紹介していきます。
昨今は、窓性能の向上・デザイン性の観点からも採用が減ってきている庇。
活用方法や、必要に応じて使うことで便利な面もありますので、特に後付けをする方が気になる注意点や費用面までみていきましょう。
まず、この記事のまとめポイントです。
- 庇(ひさし)とは、玄関・窓の開口部の上部についている、屋根とは分離された出っ張り(屋根状のもの)を指す
- 庇の出幅に関しては、季節・地域・方位・目的などを複合的に考える必要があり、実は非常に奥の深い世界
- 庇には様々な材質・種類があるが、雨漏りなどの観点から DIY はオススメしない
- 建築家に依頼する最大のポイントは、建築側の設計次第でデザインを損なわず、日除けや雨避けといった機能面が解決できる提案ができること
1. 庇(ひさし)とは?
庇とは建物の窓・玄関などの上に取り付けられる小さな屋根で、目的としては日除けや雨除けをするものを指します。
まずは、この庇(ひさし)に関してのキホン的な内容をおさえていきましょう。
1-1. 軒(のき)と庇の違い・役割
かんたんにお伝えすると、
- 軒:屋根が伸びているもの
- 庇:玄関・窓の開口部の上部についている、屋根とは分離された出っ張り
「軒先(のきさき)」と言うことがありますが、屋根である軒が延長された先端部分を言います。
それに対して庇は、玄関や窓といった開口部(壁ではない部分)の上に設置されている出っ張り(屋根状のもの)を指します。
写真の事例は、窓部に設置された「庇」になり、屋根とは独立しています。
そして庇の役割は、主に雨よけ・日よけとしての役割になります。
日射については、特に「夏の日射だけ」を遮るための役割として、方角・出幅・角度まで考えられえて設計されることもあります。
庇の出幅を多く(約 900mm ~ 600mm )取ると、大きい窓でも影が大きくとれ遮熱効果が高いですが、暗くなったり冬に陽が取り込みにくいという側面も。
一方、出幅が短く設置されている庇は、日射を遮る目的よりむしろ、雨垂れの防止・開口部の劣化を防止する役割などで設置されることもあります。
庇の出幅に関しては、季節・地域・方位・目的などを複合的に考える必要があり、実は非常に奥の深い世界です。
1-2. 下屋(げや)との違い
もう 1 つ似たような部位が「下屋(げや)」です。
1 階の方が大きい 2 階建ての家を想像してもらうと、「 2 階に覆いかぶさる屋根」と「 1 階部分に覆いかぶさる屋根」が出てきます。
下屋とは「下の屋根」という意味で、この 1 階部分に被さる屋根の部分を指します。
例えば、2 階に対して玄関部分だけが面積上、大きい場合は玄関庇を兼ねる形で下屋が設計されることがあります。
こちらの事例は、玄関庇ではなく「下屋」となります。
1-3. 庇の必要性
結論から申し上げると、庇は最低限、必要に応じて設計すれば大丈夫と言えます。
理由としては、窓部に日陰を確保しようとすると相当な出幅が必要でデザインとの兼ね合いが取れなかったり、窓の遮熱効果も格段に高くなっているためです。
ただ、玄関における庇は雨の日に外出するとき、また帰宅時にカギを取り出したりするときなどに必要なケースが多いでしょう。
そのため、必要に応じて庇は最低限は必要ですが、目的とデザインなどをトータルで考えることができる建築家に設計を依頼すると良いでしょう。
そして建築家に依頼する最大のポイントは、建築側の設計次第でデザインを損なわず、日除けや雨避けといった機能面が解決できる提案ができることです。
2. ひさしの種類(玄関庇・窓庇)
実は庇も様々な種類があり、家のデザインに応じて選ぶ幅は広いです。
素材によって印象も大きく変わるため、家のデザインによって取り入れる素材も選んでみましょう。
2-1. アルミ製庇
軽量でスタイリッシュなデザインに仕上がるアルミ製庇です。
モルタル外壁から、ガルバリウム外壁まで外壁とも合わせやすい形状が多いです。
後付けも対応しやすいため、リフォームの際も採用されることが多い庇の種類です。
2-2. ガルバリウム鋼板庇
素材として、耐久性が高く軽量で人気の高いガルバリウム鋼板を使ったタイプです。
外壁でもガルバリウム鋼板を使った設計も昨今は増えてきているため、素材や色目などを合わせる形で設計すると、より一体感を出せます。
2-3. ポリカーボネート製庇
ポリカーボネートとは、耐衝撃性や耐久性にすぐれた樹脂(プラスチック系)素材です。
透明度が確保でき、扱いやすいことや軽量であることからも、よくカーポートの屋根部分にも採用される素材となっています。
DIY などでも後付けで設置しやすいタイプです。
2-4. ガラス製庇
スタイリッシュなモダンの家に最適なガラス製の庇です。
ガラスであるがゆえに、透明・半透明をえらぶことができ、デザイン性に優れた商品が多いです。
ただ、日射の透過率は高いため、雨避けとしての役割が高くなってきます。
2-5. 木製庇
和風の家にマッチしやすい木製の庇です。
使われる木材は耐水性の高い木材を使い、屋根部分については銅板やガルバリウム鋼板で覆っています。
他の材質に比べて、雨風で変形・劣化はしやすいデメリットもありますので、メンテナンスサイクルは早くなりがちです。
3. 庇を後付けするときの注意点
庇の必要性は入居してからしばらく生活をして気づくことが多く、後付けしたいというニーズも少なからずあります。
後付けの際に注意すべき事項をまとめていますので、参考になさってください。
3-1. 建ぺい率に注意
建ぺい率とは、その敷地面積に対してどれぐらいの面積まで家を建てることができるか?という割合です。
建物本体から飛び出ている「庇」は、この建築面積に含まれるか?含まれないか?という点が注意ポイントです。
建築面積に含まれない出幅は 1m 以下となっており、出幅の長い庇の設置の際には建ぺい率違反にならないか考える必要があります。
また、当たり前の話しではありますが、隣地境界線を越境しないような配慮も必要になってきますので、建築基準法を含めて建築に関する知識が必要です。
3-2. 日差し避けか雨避けか目的に応じた寸法選定を
庇を設置する際に、目的が日除けなのか?雨避けなのか?で出幅や設置寸法を考える必要があります。
例えば、日除けのつもりで設置しても西日には効果がないなど、方角や出幅によっては期待していた効果がない場合も想定できます。
そのため、日射を防止するためにはどれくらいの出幅が必要か?季節の応じた太陽の高さを地域や建築場所によって考える必要があります。
実際、建築専門家でも悩む難しいポイントのため、専門業者へ設置したい目的を伝えながら相談するとよいでしょう。
3-3. DIYはオススメしない
後付け庇は DIY で設置できなくはない、と思います。
しかしハッキリお伝えすると、 DIY での後付けはオススメできません。
理由としては「防水がしっかり確保できる保証がない」ことです。
庇を後付けする場合、外壁に穴を開ける必要があり、適切な雨仕舞いをしないといけません。
雨仕舞いが甘かったりすると、設置場所から雨漏りなどを起こす可能性もあり、日曜大工感覚での設置はオススメできません。
また、下地材に固定しないと取付強度が確保できずに台風などで落下したりするリスクもありますので、建築家など専門業者に相談をオススメします。
3-4. デザインをこわさないように注意
昨今は窓ガラス自体の遮熱効果が高まっていることもあり、庇を設置しない家もあります。
デザインと機能面どちらを優先するか?は各々での価値観によりますが、特に後付けの際は全体的なデザインを考えて設置しましょう。
外壁の色・素材と合うかどうか、家全体のコンセプトに干渉しないかを、建築家に相談するとよいでしょう。
3-5. 庇を後付けする場合の費用は約 20 万円~
専門業者に依頼をする場合、素材や設置するタイプにもよりますが、約 20 万円から設置可能( 1 階設置)です。
2 階へ設置する場合は足場代が加算されるため、大幅にアップしてきます。
外壁の塗り替えなどと同じタイミングでお願いすると足場代が兼用できるため、リフォームの際に考えると割安に設置が可能でしょう。
4. 建築家が手がけた事例の紹介
つづいて、titel(タイテル)でご紹介している建築家での庇の事例をみていきましょう。
単純な庇ではなく、建築でデザインと機能を兼ね備えたデザインへ設計している点にも注目してください。
自分に合ったデザインをしてくれる建築家と話がしてみたい・紹介してみてほしいという方は、タイテルの建築家紹介 も便利です。
4-1. 武蔵野の家 | Musashino house
こちらの事例は、庇を建築で建物と一体化している設計事例です。
コンクリート打ちっぱなしの素材で外壁全体をまとめており、1 階部分をセットバック(奥側へ凹ませている)していることで、2 階が庇と同じ役割を果たしています。
1 階をセットバックさせただけでは単調になってしまうため、セットバック部に出幅の少ない庇をつけることで家に凹凸感を出しています。
後付け感がない、建物デザインと一体化したデザイン性と機能性を兼ね備えた庇と言えます。
4-2. 野尻湖の小さな家 | Small house on Lake Nojiri
こちらの事例は 1 階に比べて、2 階面積を大きく設計された住宅です。
長野県野尻湖という豪雪地帯という地域柄もあり、2 階部に多くの居住スペースをもってきています。
この 2 階部が、玄関庇の代わりにもなっており、豪雪地帯にありがちな「雪で玄関から出れなくなる」というリスクを軽減すると共に、デザインなども兼ね備えている設計になっています。
4-3. おおたかの森の家 | Otakanomori house
こちらの事例では、窓に出幅の少ない庇を採用しています。
構造体と一体化した鉄筋コンクリート製になっており、建物と一体感がある設計です。
また 2 方向に大きくとられた窓が特徴的ですが、室内側に本棚を設けることで日除け・雨よけの目的としては最低限の出幅でよくなります。
外観上のデザインだけでなく、室内側の設計も併せて出幅などが考えられた庇と言えます。
4-4. 葉山町の家 | Hayama house
こちらの事例は、庇を平屋の屋根のように設計している点がポイントです。
南面の庇は、平屋の屋根が延長されているように見え、建物との一体感が絶妙です。
庇としても出幅がしっかり確保されており、日陰をしっかり確保すると共に縁側のようなテラスと組み合わせています。
テラスをホワイトにしていることで、室内も暗くなりすぎず日射を遮りつつ、室内がやさしい明るさになります。
4-5. Kiseki no IE | 軌跡の家~
庇を南面に深く設置した事例です。
テラスやウッドデッキを、軒の深い庇の下に設置していることで、広縁のような空間が生まれて広い庭とのつながりを感じることができます。
庭との高低差もあまりないことから、庇とテラスが創り出す空間は、室内から感じる広さを大きく広げる役割も果たしています。
4-6. 瀬田の家 | SETA-HOUSE~
こちらの事例で、最も特徴的なポイントは、窓四方から出っ張っている窓枠です。
通常、庇は窓などの開口部の上部のみに設置されますが、四方を出っ張らせ窓を一段奥にすることによって、日陰や雨避けの効果をもたらします。
また家全体の外観も単調にならず、凹凸およびそれに伴った陰影ができるため、時間や天候によって家の見え方・印象も変えることができます。
5. まとめ
このように「庇」を1つピックアップしても、非常に奥の深い世界があります。
日除け・雨避けの役割が大きい庇ではありますが、建築側のデザイン次第で後付け感・単調な出っ張り感を無くして設計することができることが事例からもわかります。
それでは冒頭のまとめポイントを、もう一度おさらいしておきましょう。
- 庇(ひさし)とは、玄関・窓の開口部の上部についている、屋根とは分離された出っ張り(屋根状のもの)を指す
- 庇の出幅に関しては、季節・地域・方位・目的などを複合的に考える必要があり、実は非常に奥の深い世界
- 庇には様々な材質・種類があるが、雨漏りなどの観点から DIY はオススメしない
- 建築家に依頼する最大のポイントは、建築側の設計次第でデザインを損なわず、日除けや雨避けといった機能面が解決できる提案ができること
単純に庇と言っても、窓や玄関にくっつければ良い、というモノではなく「デザインおよび機能を兼ね備えた」提案が、建築家では可能です。
日差しがきびしい地域など、日射角などのパッシブ設計を意識した設計によって、庇によって過ごしやすい家にもなります。
外観・機能面両方をしっかり考えて家づくりをしたい方は、ぜひ titel(タイテル)の建築家に相談してみてください。タイテルの一級建築士の資格をもつ建築アドバイザーが、あなたのご要望・条件に合わせてぴったりの設計事務所をご紹介 します。