ガルバリウム屋根・外壁の知っておくべき耐久性や選ぶときの注意点
今回は、最近外壁や屋根の素材として人気が高い「ガルバリウム鋼板」について紹介していきます。
ガルバリウム鋼板の屋根、そしてガルバリウム鋼板の外壁を使うとメンテナンスがラクになると聞いたけど本当?
ガルバリウム鋼板を外装材として採用する時の注意点など、気になるポイントをみていきましょう。
まずは、今回の記事の結論からです。
- ガルバリウム鋼板の屋根および外壁は、耐久性の高い素材だが、定期的なメンテナンスが必要。
- ガルバリウム鋼板の屋根および外壁の、一般的な耐用年数は 20年 前後。
表面塗装を行ったり、錆びがひどい場合は重ね張りなどが必要。 - メンテナンスや適切な塗り替えを行うことで、長期間の耐用が見込める。
- 断熱材一体型のタイプをオススメ。
家のデザインは、シンプルモダンにしないと違和感が出る。
1. ガルバリウム屋根・外壁は高耐久な素材
ガルバリウム鋼板は、鉄合金の板に金属メッキ加工を施したものを指します。
建築業界ではよく「ガルバ」という略し方をしており、屋根・外壁ともに「軽い・高耐久」ということから人気が高くなってきている素材です。
ガルバリウムとは、一般的なメッキに比べて耐久性の高い素材になっており、成分としては アルミニウム・亜鉛・ケイ素(シリコン)を特定の割合で合わせたメッキです。
ガルバリウム鋼板の主な特徴としては、こちらの 3 点。
- 金属なのでヒビ割れることはない
- 軽いため耐震性の面で有利、なるべく柱や耐力壁を減らして、自由な間取りへ
- モダンな外観がつくれる
デザインも金属ならではの質感や色が選べるため、シンプルモダンな住宅に選ばれやすい素材になっています。
まずは、気になるガルバリウム鋼板の屋根・外壁のメンテナンス性について見てきましょう。
1-1. ガルバリウム鋼板の屋根・外壁は 15~20年 で塗り替えが必要
ガルバリウム鋼板は耐久性が高いことが特徴の1つですが、メンテナンスが全く不要なわけではありません。
メンテナンスフリーと言う話しも聞きますが、それは間違いで定期的なメンテナンスが必要です。
一般的には、早くて約15年~平均では約20年で、錆び取りや専用塗料での塗り替えといったメンテナンスが推奨されています。
こういった定期メンテナンスをすることで、ガルバリウム鋼板の本来の耐久性を引き出すことができます。
種類やグレードなどにもよりますが、錆び取り・専用の塗装などを適切に行うことで約40年以上の耐用性があります。
最終的に錆びがひどくなってきたり、雨漏りなどが発生するような場合は、上から同じようにガルバリウム鋼板を被せる「カバー工法」や、張り替えでメンテナンスを行います。
一般的なサイディング外壁や、瓦などの場合は上から重ねて貼ることができませんので、元々あった素材を取り除いて、張り替え・葺き替えになるため手間なども多くかかります。
ガルバリウム鋼板の場合、上から貼るだけのメンテナンスが可能であれば、工事費用や期間も抑えることができます。
1-2. 錆びさせないために気を付けること
そして、ガルバリウム鋼板のデメリットの1つでもある、「錆び」を発生させないために日々気を付けた方が良いポイントがこちらです。
- 砂や落ち葉などの汚れを日々のお手入れで洗う必要あり(高圧洗浄器はダメ)
- スコップなど金属のモノを立てかけない(貰い錆びの防止)
- 強い衝撃を加えない
まずガルバリウム鋼板は素材の性質上、水だけで錆びることはありません。
しかし、砂ホコリや落ち葉などを長期間放置しておくと静電気を帯電して腐食の原因にもなりかねません。
そのため、ホコリを洗い流すような簡単な掃除を数ヶ月~1年ごとに行うことを推奨しています。
ただ、このとき高圧洗浄機やデッキブラシなどで強く洗わないよう、表面の砂ホコリを水で洗い流す程度にしましょう。
そして、金属であるがゆえに気をるつけたいポイントは「もらい錆び」です。
半分錆びてきているスコップや、鉄パイプなどを立てかけておくと、そこから錆びてきてしまうこともあります。
また、ガルバリウム鋼板は薄い金属鋼板のため、モノをぶつけたりすることで変形してしまいますので、こういったキズ・凹みにも注意です。
キズや凹みができた箇所から、塗装が剥がれて錆びの原因になります。
他の外壁と大きく異なる、金属製ならではの気を付けるポイントを抑えておきましょう。
2. ガルバリウム鋼板の屋根・外壁のメリットとデメリット
他の屋根材や外壁材と同じように、メリットもあればデメリットも存在します。 メリット・デメリットをしっかり理解して採用しましょう。
2-1. ガルバリウム鋼板の屋根・外壁のメリット
まずはガルバリウム鋼板のメリットがこちらです。
- 軽く耐震上は有利
- 断熱材一体型のガルバリウム鋼板は断熱性能が高い
- 他の外装材に比べると、メンテナンス周期が長く色あせに強い
- 家のデザインがモダン・洋風のデザインに仕上がる
ガルバリウム鋼板の最大のメリットは、軽いということです。
家は外壁や屋根に囲われて構成されていますが、住宅そのものの重要な要素である「耐震性」に大きく関わってきます。
屋根や外壁が軽いと、地震で横に振られる時のエネルギーが少なく済み、建築基準法でも屋根に重い素材(例えば和瓦など)を用いる場合、軽い屋根に比べて耐力壁や柱を多く必要となります。
具体的には耐震基準における「壁量係数」というもので、1 階で 29(屋根が軽い家)に対して、33(屋根が重い家)の壁量が必要です。
重い屋根は、およそ 1.1 倍の壁もしくは柱で支える必要があり、自由な間取りに影響してきます。
ガルバリウム鋼板(重量では特に屋根)は、住宅全体の重量を軽くして耐震性能を上げる役割も果たすと同時に、間取りの制約条件も緩和してくれます。
2 点目はよくある勘違いですが、金属であるため断熱性能が低いという点。
工法により必ずではありませんが、屋根も外壁も外壁材と防湿シートの裏側に、湿気を逃がすための通気層があります。
その通気層の内側に断熱材を設けますが、断熱計算では外壁の種類によって、断熱性能が変わりません。
理由は、通気層の内側で計算をしているからで、断熱材がしっかり入っていれば、外壁材の種類によって左右されません。
外壁種類 | 熱伝導率(W/m・K) |
---|---|
Danサイディング(旭トステム) | 0.03(0.02) |
ALC(軽量コンクリート) | 0.15 |
窯業系サイディング | 0.17 |
モルタル | 1.30 |
※出典:旭トステム
むしろガルバリウム鋼板は、裏面に発泡系の断熱材とセットになっているタイプがあり、断熱材一体型のガルバリウム鋼板であれば他の外壁に比べて断熱性能は高いです。
真夏に触ると、確かに表面が暑くなることは事実ですが、他の外壁材でも同じことで心配不要です。
3 点目のメンテナンス性に関しては、「1. ガルバリウム屋根・外壁は高耐久な素材」で紹介しましたので、割愛してデザイン性を解説します。
4 点目のガルバリウム鋼板の屋根および外壁の特徴は、他の外壁ではあまりデザインされない、モダンなデザインが特徴です。
ガルバリウム鋼板を採用した住宅では、ブラックやシルバーといった色だけでなく、青・赤などのカラフルなコーディネートも可能。
アメリカンスタイル、スタイリッシュな外観など、様々な外観にマッチするオシャレな外壁・屋根としても注目されています。
メーカーやシリーズによっては、サイディング外壁のようなデザインや木目調タイプもありますので、メンテナンス等にメリットを感じたものの、金属の見た目を懸念される方にも安心です。
2-2. ガルバリウム鋼板の屋根・外壁のデメリット
ここまでは、ガルバリウム鋼板の良い点を紹介してきました。
新築やリフォームで、ガルバリウム鋼板の屋根・外壁を選ぶ時の注意点としてのデメリットも、正しく抑えておきましょう。
まずはデメリットのポイント一覧です。
- 塩害地域(海岸近く)や粉塵が多いエリアには適していない
- 価格がサイディング外壁、スレート屋根に比べると高い。
ただし、メンテナンスのランニングコストも考えて導入を検討しましょう。 - 衝撃で凹んだりキズがつく(キズから錆が発生)
- 表面デザインが単調になりがち(シンプルなデザインの家であれば問題なし)
まずは、建築地域によっては避けた方が良いエリアがあります。
それは、海岸近くの塩害地域です。
具体的には海岸から約 1km 以内に建築される場合は、どうしても塩害の影響で錆びの発生が早いです。
昨今の商品はフッ素加工などの表面加工技術が向上してきていますが、それでも塩害地域は採用を見送ることをオススメします。
海岸沿いにアメリカンスタイルのカラフルな住宅、はステキでもありますが実用性を考えると他の素材にした方が無難です。
また砂ホコリが多い土地なども、同様に錆がはやく発生するリスクが高く、ガルバリウム鋼板は避けることをおすすめします。
そして 2 点目のイニシャルコストについて。
工務店によって、得意・不得意や仕入れ先の価格によって異なるので一概には言えませんが、木造で最も一般的なスレート屋根・サイディング外壁と比較すると価格が高くなる傾向です。
スレート屋根が平米あたり約 4,500 円~に対して、ガルバリウム鋼板の屋根が約 6,000円 ~となっています。
外壁は、サイディング外壁(窯業系)が平米あたり約 4,000 円~に対し、ガルバリウム鋼板の外壁が約 5,000 円~となっており、屋根・外壁ともに 2~3 割程度高くなります。
もちろん、メーカーやシリーズなどによって異なりますので、気になる方は建築家へ相談する時に相談してみましょう。
3 点目のキズから発生する錆については、 1-2. 錆びさせないために気を付けること にて解説いたしました。
ものをぶつけたり立て掛けたりして、キズをつけないように気をつけましょう。
最後の 4 点目に気を付けるべき点は、デザイン性です。
モダンシンプルな外観にぴったりな外壁と紹介しましたが、住宅全体のデザイン・意匠性を考慮しないと非常に単調な仕上がりになってしまいます。
シンプルと単調は、意匠性によってどちらになるかは左右されますので、外観を見栄えあるものにしたい方は、意匠設計が得意な建築家に相談しましょう。
3. ガルバリウム鋼板の屋根・外壁を採用する注意ポイント
ガルバリウム鋼板を選ぶ上で、気を付けた方が良いポイントをまとめました。
- 断熱材一体型を選ぶとことをオススメ
- 家のデザインをシンプルなデザインに。
凹凸や窓配置でメリハリを付けることで単調にならない工夫が必要。 - 工事・メンテナンスは専門業者にお任せ(板金を扱い専門性が高い)
- 住宅のスタイルに合わせて外壁のカラー選択は重要。
青色(青~藍色)・赤色(ワインレッド)・ステンレス色・ブラック色が人気
ガルバリウム鋼板を採用する場合、発泡ウレタン断熱材が一体になったタイプをオススメします。
既に“ガルバ”と言えば、断熱材一体型が主流ではありますが、念のために確認しましょう。
また住宅の外観デザインも、ガルバリウム鋼板ならではの金属外壁らしい色やシンプルなデザインを好まれる方が多いですが、色の濃淡がなく凹凸も一定のため、外観デザインは意匠デザインに配慮ができる建築家へ相談をしましょう。
そして新築の場合は特に問題ありませんが、特にリフォームの場合、ガルバリウム鋼板の専門業者に工事を依頼した方が無難です。
傷や凹みに弱い素材かつ、塗装も特殊な塗装になっているため、慣れている専門業者に依頼をオススメします。
また、建築家に相談いただければ地元でガルバリウム鋼板が扱える業者にて施工を行いますので、新築・リフォームどちらでも気軽にご相談ください。
3-1. ガルバリウム鋼板の色(カラー)選択
ガルバリウム鋼板を選ぶうえで、色の選び方も重要です。
一般的なサイディング外壁やモルタル外壁では、白色・茶色・グレー色といった落ち着いた色が多いですが、ガルバリウム鋼板はカラフルな色が特徴です。
特に外壁では、金属外壁ならではのカラフルかつスタイリッシュな色が人気です。
ガルバリウム鋼板ならではの青色(青~藍色)・赤色(ワインレッド)・ステンレス色・ブラック色が人気が高いです。
中でも、モダンスタイルの住宅にマッチしやすいステンレス色・ブラック色は不動の人気があります。
モダンなスタイルでも、洋風寄りになってくると、青色(青~藍色)・赤色(ワインレッド)、クラフト調ではブルーグレー色、グレー色なども採用されます。
4. ガルバリウム鋼板の屋根・外壁の実例 9 選
それではガルバリウム鋼板を使った住宅の一例を紹介していきます。自分に合ったデザインをしてくれる建築家と話がしてみたい・紹介してみてほしいという方は、タイテルの建築家紹介 も便利です。
4-1. 神戸の家(建築家:中尾 彰良)
外壁に横葺きの、ブラック色のガルバリウム鋼板を採用している家です。
スマートなラインが入った鋼板を横葺きで使うことで、マットな鉄板のような仕上がりに見える、スタイリッシュな外観が特徴です。
4-2. 旭区の家(建築家:中尾 彰良)
道路面から見える壁一面を、こちらもブラックの横葺きのガルバリウム外壁で仕上げたデザイン住宅です。
窓を1つも設けることなく、玄関もアウトセットの引き戸を採用し、スマートな納まりを実現。
ブラックな見た目とは異なり、インテリアはシンプルかつ明るい配色で、南面はホワイト色のガルバリウム鋼板でコーディネートしています。
4-3. 川沿いのシルバートール(建築家:保坂 裕信)
3 階建てのスクエアなデザインの建物です。
ガルバリウム鋼板のシルバー色で包まれた、近未来的な印象は、一際モダンなデザインを際立たせます。
玄関ドアもガルバリウム鋼板張りで、一続きのデザインがおしゃれです。
4-4. 調布の住宅 〜V字の中庭〜(建築家:納谷 学)
道路面に沿って、直線的に建ち上がっている外観がスタイリッシュな印象を与えてくれる建物です。
ガルバリウム鋼板は室外から連続して、天井に採用されています。
4-5. 空掘の家(建築家:中尾 彰良)
築 40 年の中古住宅を購入され、リフォームをされた事例です。
ブラックの縦葺きのガルバリウム鋼板により、築 40 年とは思えない印象を創り出していると同時に、長く住み続けることができる耐久性を兼ね備えています。
4-6. L-Court House(建築家:田島 則行)
外観・内観共にシンプルなスタイルで構成された住宅例です。
前面のシルバー色のガルバリウム鋼板が印象的な外観を演出している一方で、玄関まわりに木目を取り入れることで単調にならない設計になっています。
4-7. notch house テラスを取り込んだ家(建築家:松尾宗則 ・ 松尾遥)
外壁全面に、ブラック色のガルバリウム鋼板を採用した事例です。
木目・ブラック・ホワイトでベースカラーを統一しており、ガルバリウム鋼板のシンプルさと、木目のやさしさを組み合わせたモダン住宅です。
4-8. 大島の住宅(建築家:鴻野 吉宏)
窓が非常に大きく、開放感抜群のデザイン住宅です。
全体は木目を基調とするナチュラルなスタイルに仕上げていますが、ブラック色のガルバリウム鋼板がアクセントになっています。
外壁をそのまま内壁に繋げている設計が印象的で、ガルバリウム鋼板を内壁のアクセントとしても取り入れています。
4-9. YADOKARI(建築家:伊原 孝則)
縦・横の直線的なラインに縛られない傾いたラインが印象的なデザイン住宅の事例です。
前面道路からの正面および側面~背面にかけてブラック色のガルバリウム鋼板の外壁・屋根を採用し、モダン住宅としてのデザインを高めています。
住宅背面~側面は横張り用のガルバリウム鋼板を、斜めに貼ることで幾何学的な印象さえ創り出します。
5. まとめ
それでは、今回の「ガルバリウム鋼板の屋根・外壁」に関してのまとめを、本文の内容を踏まえてもう一度。
- ガルバリウム鋼板の屋根および外壁は、耐久性の高い素材だが、 年に1~数回、水で洗うなどのメンテナンスは必要。
- キズや凹みに弱く取扱いは繊細に。
- ガルバリウム鋼板の屋根および外壁の、一般的な耐用年数は20年前後。
錆びがひどい場合はさび取り、塗り替え、重ね張りなどが必要。 - 主流の断熱材一体型タイプがオススメ。
表面デザインではサイディング外壁のようなタイプもあるが、 金属外壁らしいデザインでスタイリッシュにまとめると見栄えがする。
ガルバリウム鋼板を使った事例も紹介しましたが、ガルバリウム鋼板を採用する場合は、住宅全体のデザインも合わせたコーディネートが重要です。
昨今は人気も高いガルバリウム鋼板ですが、実用性はもちろんスタイリッシュに仕上げるため、ぜひ一級建築士の資格をもつタイテル建築アドバイザーにご相談 ください。