二世帯住宅の間取りのポイント+メリット・デメリットを解説

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「両親が高齢になって、介護が必要になった」「共働きだが、子供のためにより良い育児環境を作りたい」「実家の広いスペースがもったいない」「固定費を下げて節約したい」など、さまざまな理由から「二世帯住宅」を選ぶ人が再び増えてきています。二世帯住宅にはさまざまなタイプがあり、どのような間取りにするかで暮らし方や快適性が大きく変わってきます。

ここでは、二世帯住宅の間取りのポイントや、それぞれの間取りのパターンに対するメリット・デメリットをご紹介します。「自分たちのケースではどのような間取りがぴったりなのか」を考えながら、読み進めてみてください。

<目次> 二世帯住宅の間取りのポイントとメリット・デメリットを解説

  1. 1. 二世帯住宅とは?
  2. 2. 二世帯住宅の間取りの種類とメリット・デメリット
    1. 2-1. 完全分離型
    2. 2-2. 部分共有型
    3. 2-3. 完全同居型
  3. 3. 住んでから失敗しないための、間取りの考え方のポイント
    1. 3-1. 家族構成・ライフスタイルに合わせて考える
    2. 3-2. プライバシーをどのように確保するか
    3. 3-3. 長期的な視点で考える
    4. 3-4. 費用の分担についてあらかじめ話し合っておく
  4. 4. 二世帯住宅を建てる価格
  5. 5. 二世帯住宅は税金が優遇される?
  6. 6. まとめ

1. 二世帯住宅とは?

親世帯と子世帯が一つ屋根の下で暮らすためにつくられた住宅のことを指します。似たような言葉に「同居」というものがありますが、厳密にはそれぞれの意味は異なります。 二世帯住宅では、間取りによって暮らし方にいろんなバリエーションをもたせることできますが、同居はあくまでも「一緒に生活する」ということです。必ずしも「二世帯住宅=同居」ではないのです。

2. 二世帯住宅の間取りの種類とメリット・デメリット

二世帯住宅は、大きく 3 つの種類に分けることができます。「完全分離型」「部分共有型」「完全同居型」です。ここからは、それぞれの種類の特徴と、メリット・デメリットについて説明します。

(間取りによる税制上の優遇措置については、5. 二世帯住宅は税金が優遇される?にてまとめて解説します)

プライバシー 介護・子育て 費用 家計の分担 将来的な自由度
完全分離型
部分共有型
完全同居型

2-1. 完全分離型

それぞれの世帯ごとに生活ができるように、親世帯と子世帯の生活空間を完全に分けた間取りです。玄関、LDK 、水回りは世帯ごとに設けられており、別々で使用します。一つ屋根の下とはいえ、「同居」ではなく、マンションのお隣さんのような「超近居」の暮らしとなります。

上大崎の家|Kamiosaki House (建築家 : 武富 恭美) の作品画像 上大崎の家|Kamiosaki House (建築家 : 武富 恭美) の作品画像 上大崎の家|Kamiosaki House (建築家 : 武富 恭美) の作品画像
上大崎の家|Kamiosaki House 武富 恭美 | d/dt Arch./ディーディーティー

こちらの事例は、左右対称の形をした完全分離型の二世帯住宅です。建物は一つですが、隣り合わせで 2 棟建っているようにも見えます。

【メリット】

「プライバシーを確保することができる」というところが完全分離型の一番の特徴です。生活空間が完全に別れているため、世帯ごとの生活リズムの違いを気にする必要もありません。完全分離型がおすすめなのは、家族みんながまだまだ元気で、お互いのプライバシーやライフスタイルを守りたいご家族です。一方でお隣同士なので、困ったときにはすぐに駆けつけることができるという安心感もあります。

電気やガス、水道のメーターを2つに分ければ、それぞれの世帯で光熱費を分けられるというメリットもあります。またメーターを分けておくと、将来的に二世帯のうちのどちらかが空き家になったときに、賃貸に出すこともできます。

【デメリット】

「費用がかかる」という点が、完全分離型の最大のデメリットです。家を建てるにはある程度広い土地が必要になりますし、建設費用も普通の家の倍近くかかることもあります。
さらに生活費もそれぞれでかかるので、「二世帯住宅にすることで節約したい」と考えている方にはおすすめしません。

2-2. 部分共有型

生活スペースの一部を2世帯で共有する間取りが、「部分共有型」と呼ばれるものです。よくある間取りしては、2 階建ての住宅の 1 階に二世帯共有の玄関を設け、1 階は親世帯、2 階は子世帯で暮らすというケースが挙げられます。その他にも、「お風呂を共有する」「メインのキッチンは親世帯エリアにつくり、子世帯エリアには最低限のミニキッチンを設ける」「それぞれのリビングは確保した上で、共有のセカンドリビングを設ける」「渡り廊下で内部を行き来できるようにする」など色々なパターンが考えられます。

湯沢の二世帯住宅 〜土間と廻り廊下の空気層〜 (建築家 : 納谷 学) の作品画像 湯沢の二世帯住宅 〜土間と廻り廊下の空気層〜 (建築家 : 納谷 学) の作品画像 湯沢の二世帯住宅 〜土間と廻り廊下の空気層〜 (建築家 : 納谷 学) の作品画像
湯沢の二世帯住宅 〜土間と廻り廊下の空気層〜 納谷 学 | 納谷建築設計事務所

こちらの事例では、親戚が集まり土間から直接入れる仏間を中心に、子世帯と親世帯に分けました。仏間の裏側には共有する水周りを配し、二世帯を緩やかにつなぎ、分けています。

【メリット】

ある程度プライバシーを保ちながら、程よい距離感で生活できる点が大きなメリットです。それぞれの家族の希望に合わせて、「どのような距離感で暮らしたいか」「どの場所を共有するか」ということを話しながら柔軟に間取りを決めることができます。内部で行き来できることで、例えば子世帯に暮らす小さな子どもたちが、学校から帰ったときに親世帯のおばあちゃんの家へ行ってしばらく面倒をみてもらうということや、家事・育児の協力もしやすくなります。

【デメリット】

どの部分を共有しているかにもよりますが、他の世帯に対する多少の配慮は必要になってくるでしょう。例えば玄関を共有している場合、働き盛りの子世帯の帰りが遅いと、早く寝たい親世帯にとってはうるさいと感じるともあるかもしれません。また家の行き来が自由にできる場合は、簡単にプライベートな空間に立ち入ることもできてしまいます。

設備を共有している場合は、世帯ごとの光熱費がはっきりとわからないため、事前に費用負担について話し合っておく必要があります。

また部分共有型の間取りは、「将来的に売却したい」と考えている場合にはあまりおすすめできません。例えばキッチンやお風呂が 2 つもある住宅は、基本的には二世帯住宅としてのニーズしかないからです。もし賃貸化を見据えるのであれば、玄関はあらかじめ分けておき、内部を行き来できないよう後から壁をつくれるようにするなどの方法や、シェアハウスとして貸し出すなどの可能性を考えておくと良いでしょう。

2-3. 完全同居型

寝室以外の生活スペースや設備を、すべて共有する間取りです。玄関や LDK 、お風呂などは1つのものを共有します。親世帯と子世帯とで分かれることなく、「全員同じ家で一緒に暮らしている」という感覚を持つことができます。

【メリット】

お互いの様子が常にわかる安心感と、大家族のにぎやかな暮らしが完全同居型ならではのメリットです。共働きの忙しい中、子育てを手伝ってもらったり、将来的に高齢の両親の介護をしたりなど、お互いに助け合いながら生活がしやすくなります。みんなが同じスペースを使うので、家事を全員で協力することもできます。

ローコストで二世帯住宅を建てたいケースや、小さい家をリフォームする場合にも、完全同居型の間取りはおすすめです。すべての部屋や設備を共有することで、家を建てる費用や生活費を安く抑えることができます。普通の家よりも寝室や LDK のスペースを少し増やすぐらいで、広い土地も必要ありません。

また将来的に一世帯になった時もそのまま住み続けられますし、他のタイプの間取りに比べると売却もしやすいというメリットもあります。
特に「子世帯+母一人」など、ご高齢な片親と住む場合には、安心感と費用のどちらの面からも完全同居型が向いているケースが多いと考えられます。

【デメリット】

一番の懸念は、プライベートな空間が少ないことや生活リズムの違いにより、ストレスを抱えやすいという点です。LDK が共用であれば、一日のほとんどを一緒に過ごすことになりますし、友人を招いたりするのにも気を遣うことでしょう。

また世帯ごとの光熱費や生活費の割合があいまいなので、どのように費用を負担するかどうかで揉める可能性があります。二世帯が同じ家計で生活していくケースでは問題ありませんが、「それぞれの家計をきっちりと分けたい」という人にとってはあまり向かないでしょう。

3. 住んでから失敗しないための、間取りの考え方のポイント

「完全分離型」「部分共有型」「完全同居型」それぞれにメリットとデメリットがあることがお分かりいただけたかと思います。そこでここでは、「 3 つのうちどのパターンを選べば良いのか」「自分たちの求める暮らしにはどんな間取りが適しているのか」を判断するためのポイントをまとめました。

KH house (建築家 : 伊原 孝則) の作品画像 KH house (建築家 : 伊原 孝則) の作品画像 KH house (建築家 : 伊原 孝則) の作品画像
KH house 伊原 孝則 | FEDL

3-1. 家族構成・ライフスタイルに合わせて考える

家族が大人数であったり、二世帯のライフスタイルが大幅に違う場合には「完全分離型」や最小限の「部分共有型」がおすすめです。大人数で暮らすとなるとお風呂やトイレが混みあったり、毎回の食事の準備が大変になったりすることも考えられます。
また家族ごとの生活リズムや理想の暮らし方を整理することで、必要な設備の数や、共用スペースの広さなどを計画に落とし込みやすくなります。

3-2. プライバシーをどのように確保するか

二世帯住宅では、家族の性格や関係性を考えながら、プライバシーを確保する方法をあらかじめ検討しておくことが大切です。お互いが配慮し合うのはもちろんのこと、スマートロックや鍵を用いるのもひとつの手です。
また音が気になるのか、明るさが気になるのか、気配が気になるのかによっても対処方法は変わってくるので、設計士と深く打ち合わせをすることをおすすめします。

3-3. 長期的な視点で考える

今の暮らしだけでなく、将来的に家族や生活がどのように変化する可能性があるのかを考えた上で計画を立てることも大切です。例えば「介護が必要になったときのために、親世帯が住む1階はバリアフリーにしておく」「親世帯がいなくなったら賃貸に出したい」など、設計段階から長期的な視点も取り入れることで、住み始めてから「こうしておけばよかった」と後悔することが少なくなるでしょう。

3-4. 費用の分担についてあらかじめ話し合っておく

住み始めてから光熱費や生活費の分担で揉めないためにも、どのような形で費用負担をするかは計画段階から話し合っておきましょう。それによって設備の数や配管のルート、メーターを分けるかどうかが変わってきます。

4. 二世帯住宅を建てる価格

二世帯住宅を建てる費用は、どのタイプの間取りを選ぶかによって大きく異なります。基本的には、完全分離型 > 部分共有型 > 完全同居型 となります。

完全分離型の間取りは、3 つのタイプの中で最も高額になります。単純に広さや設備が 2 倍に増えるとすれば、普通の家を建てる 2 倍近くの金額がかかると思っておいた方が良いでしょう。完全分離型でコストダウンをするには、広さをできるだけコンパクトにするのが最も効果的です。

部分共有型の場合は、共用のスペースや設備が増えるほど価格は安くなります。費用を抑えたい人は、プライバシーを保つ工夫をしつつ、共有部分をできるだけ増やすことをおすすめします。
参考例として、基本的には LDK や水回りを共有し、追加でミニキッチンやトイレを設ける場合には 100 万円程度がプラスになります。

完全同居型の間取りは、基本的には最も安く家を建てることができます。トイレを 2 つにしたとしても 30 万円程度がプラスになるくらいです。プライバシーについてはそこまで気にならないという人は、完全分離型でコンパクトに暮らすよりも、完全同居型の間取りで広々と暮らす方が快適な暮らしができるかもしれません。

5. 二世帯住宅は税金が優遇される?

二世帯住宅を建てるときには、「不動産取得税」「固定資産税」「住宅ローン減税」などの減税措置を 2 軒分受けることができるケースがあります。

ただし、「独立した構造」であり「独立して利用できる」ことが条件です。これには完全分離型や、鍵付きの扉で仕切ることができる部分共有型が当てはまります。

また、相続時に受けられる減税特例もあります。その特例は「小規模宅地等の特例」と呼ばれるもので、土地を相続するときに、相続人が同居家族とみなされた場合には、「土地の評価額 (土地の価値を金額にしたもの) の80%の相続税が最大で減額される」というメリットがあります。
この特例を受けられるかどうかは、「どのようなパターンが同居家族とみなされるのか」「家のつくりや区分所有登記がどうなっているか」などさまざまな要件から判断されます。さらに自治体によっては助成金を受けることができる場合もあるので、専門家に確認することをおすすめします。

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6. まとめ

二世帯住宅を建てるときには、さまざまな側面から間取りを考えることが大切です。ただし家づくりを進めていく中で、お互いの要望が食い違ったり、意見がまとまらないということも出てくるかと思います。そのような場合には、まずは建築家に相談してみてください。私たちの想像を超えるアイディアで問題を解決してくれることでしょう。

検討するべきことが多い二世帯住宅の設計は、建築家に頼むことを強くおすすめします。建築家はたくさんの条件や要望を汲み取り、細かい部分まで対話を重ねるなかで、あなたにぴったりの間取りや暮らし方を提案してくれます。 「建築家と家を建てる 5 つのメリット」はこちら

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