建築家と建てる木造の家 | 3つのメリットと注意点
日本での建築の主流は「木造」です。その割合は 1 階~ 2 階建ての一般住宅であれば、 88 %にも上ります。(出典:国土交通省 資料)
木造でも様々な建て方がありますが、今回は一般的な木造住宅におけるメリットや、木造ならではの注意点を中心に取り上げていきます。また、建築家や設計事務所だからこそ、木の家の魅力を最大限に引き出せるポイントや、施工事例も後半でみていきましょう。
それでは、まず冒頭で今回の記事のポイントをお伝えしていきます。
- 木造は断熱性能を高く設計しやすく、鉄骨や鉄筋コンクリート造に比べて安価に建築しやすい工法です。
- 木造のデメリットは、耐震性との両立を図りながら大きな空間を取ろうとすると、コストが急激に上がってくることです。
- 建築家で木造を建てるメリットは、唯一無二のデザイン、そして細部までこだわった素材が際立つ木造住宅に仕上がることです。
1. 木造住宅の一般的な特徴と誤解
まずは木造住宅における一般論としての特徴や、よくある誤解について解説していきます。
1-1. 断熱性能を高く設計できる
住宅の建築躯体の素材としては、主に「木材」「鉄」「コンクリート」の 3 つになります。
ここで、冬の夜に木材・鉄の塊・コンクリートブロックを屋外に置いておくと、どれが一番冷たくなるか想像してみてください。
雰囲気としても、金属である鉄が一番冷たくなるような気がするのではないでしょうか。この冷たくなりやすい=熱を伝えやすいということになり、鉄骨住宅の場合、骨組みがこのような熱を伝えやすい素材であるがゆえに、断熱性能を高めにくいデメリットがあります。
一方で、 3 種類の素材で一番 ” 熱を伝えにくい ” 素材は「木材」です。木材は素材の特徴として、中に細かい空洞を持っていることで熱を非常に伝えにくくなっています。
家は外壁や断熱材などの素材を組み合わせるため、単純にこの数値とおりの差が出るわけではありませんが、骨組みが熱を伝えにくい木造は冬にあたたかく、夏は外気の熱を伝えにくい工法であると言えます。
1-2. 鉄骨より火に強い
つづいて、2点目のメリットは意外と思う方も多い、火に強い点です。
木は素材自体が燃えるため、火に弱いと思う方も多いでしょう。
しかし、木の特性として木は周辺から燃えていき、中心まで燃え尽きるまでにかなりの時間がかかります。キャンプやバーベキューで使う薪を想像してもらうと、薪が燃えても折れる程度までボロボロになるまでには相当の時間燃やさないといけません。
※出典: 日本ツーバイフォー建築協会四国支部
一方、鉄は素材自体に着火することは基本的にありませんが、鉄は熱され続けると強度が低下する性質があります。また、その温度に達すると急激に変形するため、火事の際に家が崩壊する原因になります。
木材は倒壊するレベルに至るまでには時間がかかるため、一気に崩れる可能性は低いですが鉄骨にはそのリスクがあり、意外と実際の火事には強いと言えます。
1-3. 建築コストが他構造と比べて安価
3点目は建築コストについてです。
同じ面積の家を建てる際に、鉄骨造や鉄筋コンクリート造と比較すると、一般的には木造が一番安く建てることができます。もちろん、構造躯体として必要な強度は間取りによって異なり、鉄骨造や鉄筋コンクリート造でできる建物が必ずしも木造でもできるとは限りません。
しかし、コストの側面から言えば最も現場で扱いやすく、そして加工がしやすい素材でなおかつ安いことから建築の主構造として、現在でも人気が高いです。
2. 木造住宅を建てる際の注意点(デメリット)
それでは、メリットだけでなくデメリットも見ていきましょう。
2-1. 大きな空間を取りにくい
1点目のデメリットは、鉄骨造・鉄筋コンクリート造と比較して 1 つの大きな空間が取りにくい点です。
リビングを大きく設計したり、大きな吹き抜けにする場合、スパンと呼ばれる柱で支えない間隔を長くしないといけません。このスパンが長ければ長いほど、木造は梁背(梁の太さ・高さ)が必要になってきますので、インテリアにも影響が出やすいです。
また木造では一般的に 5.4 m(3間)程度までのスパンが現実的には限界で、6 mを超えてくると不可能ではありませんが、躯体のコストが極端に上がる可能性が高いです。
ただし、昨今は保育園・介護施設・事務所などを木造で設計するケースも多く、非住宅物件には、CLT建築(直交集成材)という工法で、このような大空間を創り出すこともできますので、参考程度にご覧ください。
2-2. 耐震性との両立
木造は耐震性が低い、というイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
ここではデメリットとしてあげていますが、まず一概に木造が鉄骨造や鉄筋コンクリート造と比べて弱いとは限りません。木造が弱くなるポイントは、他の工法と比べて接合部の弱さがあげられます。
例えば鉄骨造であれば、ボルトで強固に締め固める方式で接合部を強くすることができます。一方、木造の場合も一般的には金物工法が浸透してきており、鉄骨と同様にボルトなどで固定します。
しかし、家の構造で 1 ヵ所に地震エネルギーなどによる負荷が集中すると、素材と金物が破断しやすいことから、耐震性については鉄骨造・鉄筋コンクリート造に比べて配慮が必要です。
木材は鉄に比べて、圧縮・せん断(引っ張られる力)に強い特長や、鉄やコンクリートに比べて軽いことから、しっかり構造計算をかければ、他の工法に引けを取らない耐震性を実現できます。そのため、プランおよび耐震性の両立には、機能面とデザイン性を両立できる建築家に依頼することで防げると言えます。
2-3. シロアリ対策は必須
昨今は鉄やコンクリートまで侵食するシロアリも現れている為、他の工法でも油断はできませんが、特に木造についてはシロアリ対策は定期的に必須になってきます。
新築から一般的には 5 年間隔で薬剤散布などを行い、シロアリが家に住み着くのを防止します。中には 10 年効果が持続できる薬剤もありますが、いずれにしても定期的なメンテナンスが必須事項になります。
3. 木造住宅の坪単価(目安)
それでは、みなさんが気になるポイントであるコストを見ていきましょう。
3-1. 一般的な木造住宅は50万円 / 坪~
坪単価という表記は、住宅のコストをお伝えする上では、本来は正確な数値ではありませんが、一番相場がわかりやすく伝わるため、坪単価でお伝えします。
建築家で建てる木造住宅の坪単価は、目安として約70万円~です。この金額は建築家によって決めているわけではなく、同じ建築家でも仕上がりや使う素材、工法などによって大きく変わります。
ただ昨今は、ウッドショックや各設備機器の値上げラッシュに伴い、現在ではこの価格は意外と難しいこともあり、坪単価100万円~になる建物も珍しくありません。ウッドショック自体は、素材や設備機器すべてに言えることのため、建築家に限らず建築業界全体にとって非常に苦しい状況になっています。
また、坪単価はあくまで目安として考えましょう。ご自身が無理なく建てることができる返済負担率や、光熱費まで含めた月々の出費額といった、様々な観点から冷静に考えていくとよいでしょう。
4. 建築家で木造住宅を建てるメリット
それでは、一般の住宅会社でなく建築家で木造住宅を建てるメリットを紹介していきます。
4-1. 唯一無二のデザイン性と素材感
建築家でつくる木造の最大のメリットは、デザイン性と素材感です。
木材は他の素材と異なり、やさしさや素材としての安心感があります。この木のぬくもりを最大限に活用することで、唯一無二のデザインを創り出すことができます。また木材には数多くの樹種があり、建築資材としては杉・ヒノキが一般的に使われますが、用途によって異なる樹種を使うことで、表現力が豊かになります。
4-2. 完全オーダーで大空間も可能
木造住宅のデメリットで紹介した、大きな空間を取りにくいという点ですが、建築家による設計であればバリエーションは広がります。
上図では、吹き抜けと全面開口部となっている開放感の高い別荘の事例ですが、一般的な住宅会社の設計ではここまでの設計はできません。特に、ハウスメーカーでは「型式認定」といって、国交省に登録された設計ルールに基づいて設計・建築されるため自由度にどうしても限界があります。
一方、建築家による木造住宅は、それぞれで設計を行うため間取りや空間の自由度も高いと言えます。間取りやスタイルを徹底的にこだわって新築したい方は、建築家による設計がオススメです。
5. 建築家での木造住宅の事例
それでは、建築家によるデザイン性が際立つ木造住宅の事例を紹介します。
5-1. 木の良さを最大限活かす古民家リノベーション
1 つ目の事例は、古民家リノベーションの事例です。いわゆる長屋と呼ばれるタイプの住宅のリノベーションですが、木造の良さを最大限に活かしています。
和室の写真では太い梁をあえてオープンな形で魅せることにより、古民家のダイナミックな雰囲気を創り出しています。間接照明を上側に向けて照らすことにより、空間のひろがりや奥ゆかしさを表現しています。
5-2. 木の構造躯体を魅せるオープンな木造住宅
2例目の木造住宅の事例は、木造の構造体を魅せる形で設計された事例です。
屋根の垂木が、室内~テラスとのつながりを生み出しています。設計思想として、テラスを部屋の一部のように行き来きしたいという思いから、家族が集う2階の大きなリビングに、三角形のテラスが大胆に割り込む計画 となっています。
2階にリビングを設けることで、日当たりもよく明るい室内になり、木のぬくもりが創るナチュラルな雰囲気が木造ならではの事例です。
5-3. 木が創るナチュラルテイストの木の家
ナチュラルな住宅の事例です。
モダンな住宅であれば、鉄筋コンクリート造がデザイン的にも向いていたりしますが、こちらの事例は木造ならではのテイストを活かした住宅です。天井部分に梁を一部みせることで、全面的にクロスで仕上げるよりインテリアにも、コントラストが生まれています。
階段の側面にはベニヤの木目、キッチンも突板等の素材を使うことで一層、居心地のよい空間を演出しており、落ち着いたカフェのような雰囲気がステキな事例です。
5-4. 焼き杉が創るモダンナチュラルな木の家
こちらの事例は、外壁に杉の下見板貼りで仕上げており、ブラックなモダンな雰囲気ではあるものの、どこか木が生み出すやさしいテイストになっています。木の外壁はメンテナンスをしっかり施すことで、経年による色や素材の変化も楽しむことができ、時間の経過と共に異なる印象が出ます。
室内は各部屋の雰囲気に合わせてデザインされますが、お茶を点てる和室をピックアップします。雪見障子越しに縁側、そして竹林を背景にした和の庭に癒される部屋になっています。
5-5. 高級料亭のようなオトナの木造住宅
5つ目の事例は、高級料亭のようなたたずまいが魅力の木造住宅の事例です。
日本古来の建築にはわびさびが重んじられてきた歴史があり、こちらの事例では和のテイストで仕上げられています。床面も石材を活用して土間のような雰囲気を演出、純和風から和モダン寄りのインテリアになっており、おしゃれになっています。
クライアント様には、「私のいえには、気に入った場所がたくさんあります。日々の暮らしの中で、求めていた和の心地よさを感じています」と、気に入って頂けています。
5-6. 海岸沿いの開放的な木の家
最後の事例は、柱や梁をそのまま魅せる開放的な構造が特徴の家です。
海岸沿いに建つこちらの住宅は、海岸側を全面的に開口にすることで日当たりもよく明るい家に設計されています。内装には、柱を化粧せずそのまま採用していますが、要所要所に構造躯体をそのまま魅せる形で設計されているため、むしろそこがオシャレなポイントになっています。
木造ではこのように躯体をそのまま魅せても、違和感のないデザインに仕上げることができることも魅力と言えるでしょう。
6. まとめ
それでは、建築家で建てる木造住宅のまとめです。
木造住宅は事例でご覧いただけたように、木が創り出すやさしさ・和の雰囲気・ナチュラルなテイストを建築家たちは最大限に引き出します。木造では、断熱性能や建築コストが比較的安価、という機能的な側面はもちろんですが、木で作る雰囲気やデザインが魅力と言えます。
さらに一般的な住宅会社では出せない魅力が、設計事務所など建築家では創り出すことができ、唯一無二の理想の木造を建てることができます。
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