気になる農地転用(農転)の費用と新築する時の注意!
ご自身でお持ちの農地を、農地転用(農転)して新築したい!という方が気になる、農地転用に関する費用に注目してきます。
申請にかかる費用の相場観や、だれが負担するのか?といった基本的なポイントから、農地に新築を建てる場合、申請にかかる費用以外のコストも見落とさないように注意しましょう。
その他、農地転用に関するスケジュール上の注意点なども紹介していきます。
それでは、今回の記事のポイントを冒頭にまとめてみました。
- 農地転用(農転)とは、農地を宅地などにして家を建てられる状態にすること。
- 農地を購入して申請する場合には約 20 万円~、一方で自己所有の農地を農地転用する場合は約 10 万円~、となっています。
- 農地を購入して建築する場合、申請にかかる費用は建築主が必要経費として負担することが多い。
- 注意すべきポイントは「農地転用の申請以外にかかる費用」で、造成工事・地盤改良工事やライフラインを引き込む工事(上下水道・電気・ガス)を事前に考慮すべき。
- 費用以外に注意すべき 2 つ目のポイントは、農地転用申請に時間がかかることです。
1. 申請費用は約 10 万円~
まずは気になる費用としては、様々な状況により異なりますが、申請用の書類などを揃えるために約 10 万円〜数十万円(行政書士の費用)となります。
それでは早速、パターンごとに費用の相場を見ていきましょう。
1-1. 自分の土地を農地転用する場合は約 10 万円(農地法 第 4 条)
まずはご自身で農地を所有しており、その土地に住宅などの建物を建築するために地目を変更する場合です。
農地の種類にもよりますが、農地転用ができる種類の土地であればそこまで難しくはありません。
また費用の相場としては、安い場合は 4 万円前後〜、平均的には約 10 万円の費用で申請ができるでしょう。
農業委員会への申請自体は無料ですが、ここでかかるコストは主に登記簿などを取り寄せるための必要経費や、行政書士にかかる手数料になります。
1-2. 農地を購入して農地転用する場合は約 20 万円~(農地法 第 5 条)
元々、農地だった土地を購入して、新築などを行う場合は農地法の第 5 条に該当します。
上記と同じように申請自体は無料ですが、ここでも申請に必要な書類を揃えるためのコストがかかります。
自分の土地を農地転用する場合に比べて、所有権移転登記なども必要になってくるため、コストも高くなります。
費用の相場は約 20 万円〜とお考え下さい。
1-3. 費用負担は建築主側が一般的
つづいて、農地を納入して新築を行う場合、農地転用にかかる費用は誰が払うの? という疑問も出てきます。
一般的には、買い主(建築主側)が支払うことが多いです。
法律上、売主・買主どちらが負担するという規則はありませんが、土地の所有権移転登記などにかかる費用も、必要経費として買い主側で負担することが一般的です。
そのため、農地転用にかかる費用も同様の位置づけとなり、買い主側が負担するケースが世間的には多いですが、交渉してみても良いでしょう。
1-4. 行政書士への依頼がオススメ
手続き自体は、市役所の農業委員会へ申請書類などを揃えていくと可能ではありますが、各種の書類を揃えることが大変なため、農地転用など不動産に強い行政書士へお任せする事がよいでしょう。
地元に根付いて仕事している行政書士であれば、必要な書類などの段取りもよく、農業委員会の事情までよく知っている事務所さえあります。
また農地転用の申請は 1 ヶ月に 1 回のため、書類不備などで受理されないと次月の申請まで待機しないといけません。
農地転用が完了していないと着工もできないため、その分だけ着工の時期などに影響してきますので、慣れた行政書士または建築家に相談しましょう。
1-5. その他コストがかかる場合もある
農地転用自体の申請にかかるコストは約 10 万円〜数十万円となっていますが、実際に住宅などを新築する場合には、様々な費用がかかる可能性があります。
むしろ、こちらの費用の相場は、場合によっては数百万円単位になることもあります。
申請以外の費用も、建築家や不動産屋とあらかじめ相談して農地転用の手続きを行いましょう。
◆開発許可申請
市街化区域内で、基本的には 1,000 平米を超えて土地の区画形質の変更を行う、大規模な宅地開発などは、事前に都道府県知事に届出・許可を得なければならない規則があります。
◆造成 / 地盤改良 など
※費用の相場: 100 万円~数百万円
元々農地であることから、建物がしっかり建てられる土地かどうか? を調査しないといけません。
土地の形状などにより、擁壁(土地を支える壁または隣地に土などが流れていかないようにするための壁)を設けたり、地盤改良が必要な場合が多いことも忘れてはいけません。
上下水道・電気の引き込み
※費用の相場:数十万円~
住宅を建築するためには、上下水道や電気が最低限必要です。
農地の場合、生活のためのライフラインが整っていないことも想定されますので、建物本体の費用以外にかかる「付帯工事」が大幅に高くなることも想定できます。
ライフラインが全くない土地で、極端な場合は 1,000 万円以上の費用になることも考えられます。
◆ガス引き込み
必要に応じてガス管を引き込む必要も出てきます。
昨今はオール電化住宅が増えてきましたので、ガスは必須ではなくなってきていることや、プロパンガスでの運用も可能です。
2. 農地の区分で農地転用の可・不可がほぼ決まる
続いて、農地でも農地転用ができる農地と、転用が元々できない農地があります。
農地の種類と転用の可否に関してみていきましょう。
ただし、既に市街化区域内の農地や、農地法の例外規定にあたる農地については、転用許可の申請をしなくても、適法に農地を宅地などに変更することができますので、詳しくは不動産屋や建築家に相談しながら進めましょう。
2-1. 農地転用できる農地は「第2種農地」「第3種農地」
農地には、「農用地区域内農地」「甲種農地」「第 1 種農地」「第 2 種農地」「第 3 種農地」の5つの区分けがあります。
まず農地転用ができる農地は、「第 2 種農地」「第 3 種農地」の 2 つです。
いずれも、近い将来に市街地になっていくことが見込まれるエリアが対象になっていることが多く、駅が 500 メートル以内にあるといった農地になります。
また、農家ではなく個人が耕している農地でもあり、市街化区域内の農地です。
2-2. 農地転用が原則できない農地もある
そして農地転用が原則許可されない農地が、「農用地区域内農地」「甲種農地」「第 1 種農地」の 3 つです。
基本的に、農作物の生産能力が高く農家が所有しているような農地を指します。
市街化調整区域や、市町村が定める農業振興地域に該当している土地が当てはまりますが、これらの土地は農地転用が原則不可です。
例外的に許可される事例としては、農業用の施設(加工・販売など)を建てたり、地域の農業振興に関わる施設の場合は認められる場合もあります。
いずれも、住宅をポツンと建築することは難しく、例外的に何年もかかって許可されるケースもないわけではないようですが、非常に稀な例です。
3. 市町村の農業委員会へ相談・書類提出が必要
市町村の農業委員会が窓口となっていますが、最終的な許可は都道府県知事の許可が必要です。
3-1. 農地転用の意味
元々は、日本の農業生産力を保つことが目的で、一定の農地を確保するための制度です。
そのため、原則的に農地から宅地などへ転用が許可されていない農地もありますので、 2 章で紹介した農地の区分を確認しましょう。
3-2. 農業委員会が窓口
農地転用に関する申請は、各市町村が指定する提出書類を農業委員会へ提出します。
市街化調整区域にどうしても家を建てたい、といった場合の相談なども農業委員会では受けてくれますので、難しそうな案件は建築家とも相談しながら農業委員会へあらかじめ相談しておくと良いでしょう。
3-3. 農地転用で必要な書類
- 各市町村で指定する申請書
- 住民票
- 該当の農地の登記簿謄本
- 公図
- 写真や地図(必要に応じて)
- 所有者の同意書(第 5 条の場合)など
その他、各市町村が指定する書類などが必要になってきますので、こちらもホームページや農業委員会で確認しておきましょう。
3-4. 新築の場合に必要な書類
さらに、新築の計画がある場合は、下記の書類も必要です。
- 設計図
- 資金計画書
- 金融機関が発行する残高証明書
- 住宅ローンの融資決定通知書 など
その他、各市町村が指定する書類などが必要になってきます。
新築を建てる意思、そして資金力がしっかりあるかどうかを見られることになります。
建築家に設計図を描いてもらったり、見積や資金計画書なども必要になってきますので、全ての書類を揃えるためにも、ある程度時間などもかかってきます。
4. 農地転用は時間がかかる
費用や書類に加えて、時間もしっかり確認しておきましょう。
新築を考えている場合は、農地転用は初期段階に行う作業の為、着工・完成のタイミングもふまえて、建築家と相談しながら申請を提出しましょう。
4-1. 市街化区域内であれば認可は 1 週間~数ヶ月
多くの市町村では 1 ヶ月ごとに受付を締め切っており、各農業委員会の設定する締切日を確認しましょう。
1 ヶ月単位の受付の為、農地転用を急ぐ場合は締め切り日には注意が必要です。
市町村にもよりますが、締切日から早いと1週間ほど、遅いと数ヶ月で返答が来ます。
農業委員会でどれくらいで認可が下りるか、あらかじめ聞いておくとよいでしょう。
市街化区域は、基本的に認可が下りることが多いです。
4-2. 市街化調整区域や農地区分によっては数ヶ月~
市街化調整区域は、基本的に市街化を抑制する地域なので、認可が下りにくい地域です。
農地転用許可の申請は、農業委員会を経由して都道府県へ提出されるため、その月の締切日から数ヶ月ほどで認可の可否判断がきます。
また、複雑な案件などの場合は 1 年程度の期間がかかる場合もあり、農地転用は時間がかかる、と考えておいた方が無難です。
4-3. 認められないこともある
当然ですが、認可されない場合もあります。
最悪の場合、 1 年程度かかっても結局認可が下りなかった、ということも想定されるため、農地の区分などによっては代替案などを建築家と相談しておいた方が良いでしょう。
5. まとめ
まとめとしては、農地転用の費用自体は約 10 万円~高くても数十万円となっており、家づくりの資金計画においては、そこまで高額な費用ではありません。
しかし、エリアや事情、土地形状によっては様々な側面で問題が起きることも想定されますので、建築家としっかり相談することが大事です。
長くその土地で仕事をしている建築家であれば、農業委員会の動きも知っている人も多いので、家づくりにおける全体的なスケジュールおよび資金計画含めて、まずは titel(タイテル)の専門家に無料で相談 してみてください。