耐震等級 3 にするために必要な費用を分析!お金をかけるメリットは?
家を建てるとき、または大規模にリフォームする時、耐震性は気になるポイントの 1 つですよね。
せっかく建てるのであれば、最高レベルである耐震等級 3 で建てたい!という方も多いですが、耐震等級 3 にするために費用はかかるの?という疑問にお答えしていく記事です。
結論から言えば様々な部分で費用が掛かりますが、一概にお金が掛かるだけでなくメリットもあります。
今回は、耐震等級 3 を取得するための費用の内容と相場、そしてお金をかけてまで耐震等級 3 にするためのメリットまでみていきましょう。
それでは、記事の重要なポイントを冒頭にお伝えします。
- 耐震等級 3 を取得するためにかかる費用は主に 2 つで、「構造計算にかかる費用」と「第三者機関への申請費用」で、合算して約 40 万円〜が相場です。
- 建築基準法相当である一般的な「耐震等級 1」と比べると、「耐震等級 3」を目指す場合、強度を上げる建築費用が数十万円~数百万円追加になるケースが多い。
- 耐震等級3は、家族を守る上でも自分の財産を守るうえでも重要性が高い。
- 地震保険が割引になったり、売却する際に資産価値の高い家と認定されていることから、経済的なメリットや売却の後押しになる可能性がある。
1. 耐震等級 3 とは?
まず耐震等級とは、家の耐震性を 3 段階の等級で表す指標です。耐震等級 1 が建築基準法と同等レベル、耐震等級 2 がその 1.25 倍の耐力、耐震等級 3 が 1.5 倍の耐力となり、耐震等級 3 が最高のグレードとなります。
そして、この計算を自社で行うだけでなく、「住宅性能評価制度」に則って、第三者機関(住宅性能評価機関)へ提出・申請して認証をもらうことで客観性かつ公正な認証となります。
1-1. 耐震等級 3 にする理由
さて、お金をかけてまで耐震等級を導き出したり、耐震等級 3 へこだわる必要があるの?と思う方もいるのではないでしょうか。ここでは、カンタンに構造計算を行う必要性に触れておきます。
構造計算をしっかり行う理由は、ズバリ「その家に住むご自身のため」です。構造計算は自分の家・家族の命を守るために重要な計算です。
耐震等級 1 でも建築基準法を満たした基準であり、ダメというわけではありませんが、耐震等級 3 を取得してもらう方が安心感としては高いと言えます。ただ、耐震性を優先させ過ぎると、開口や開放感が少ない間取りになる可能性が高いため、プラン・費用・耐震性のバランスも考えて建築家に相談しましょう。
なお、耐震等級 3 「相当」という謳い文句が巷にはありますが、これは耐震等級 3 ではありませんのでご注意ください。
2. 耐震等級 3 にするためにかかる費用
それでは、耐震等級 3 を取得するための費用について紹介していきます。
2-1. 構造計算のための費用: 20 万円 ~ 40 万円
まず耐震等級を決めるために、構造計算と呼ばれる複雑な計算をプランごとに行います。それを構造計算(許容応力度計算)と言い、ここに費用が発生します。
構造計算は、建築することを前提に自社で構造計算を安価に行う会社も稀にありますが、基本的な費用相場が 20 万円~ 40 万円です。
建築基準法を満たすためには簡易的な計算である壁量計算と、より詳細に計算を行う許容応力度計算があります。一般的に構造計算とは、詳細な計算である許容応力度計算のことを言い、壁量計算で算出されるレベルとは正確性が全く異なります。
構造計算は数百枚の計算結果から成り立つ複雑な内容で、これらの計算を行うために専門の会社に依頼したり、高額なソフトなどが必要になってきます。
2-2. 住宅性能評価の費用: 10 万円 ~ 40 万円
「住宅性能評価制度」を利用すると、実際に評価を行う専門家が、一定の基準に沿って現場まで見て建築中の家を確認する作業もあり、第三者の視点からしっかりとした設計・施工が行われていることが証明されます。この「住宅性能評価制度」の申請および書類作成で、約 10 万円〜 40 万円かかります。
※出典: 株式会社 日本住宅保証検査機構
2-1 で紹介した構造計算を行った計算結果を、第三者機関である住宅性能評価機関へ提出・認可をもらって、はじめて公の「耐震等級 3 」となります。
評価機関が費用をもらって行う作業は、大きくわけて 2 つあります。
1つが、計算結果に不備などがないか確認する書類上の確認作業で、「設計性能評価」と言います。住宅性能評価制度は耐震だけでなく、耐久性など 10 個の項目を確認します。
そして2つ目が現場の確認作業で、「建設性能評価」と言います。書類だけでなく、現場で設計通りに施工されているか、の確認を行ってくれますので、そういった検査費用も含まれます。
どちらも公的に有効な書類ですが、性能を証明する範囲の違いです。
- 性能証明書:耐震に関する内容であれば、耐震に関する事項のみが記載
- 住宅性能評価書:耐震以外に耐久性など 10 個の項目を評価して記載
費用だけであれば、耐震性能のみを監査する住宅性能証明書の方が安いですが、補助金申請や長期優良住宅申請などで使う場合、住宅性能評価書は全てを網羅しているため使い勝手は良いでしょう。
2-3. 耐震補強するための工事費用:数十万円 ~
建築基準法相当である一般的な「耐震等級 1」から、最高レベルの「耐震等級 3 」へグレードアップしようとすると、もちろん耐震のための補強に工事費用がかかります。
一概に相場としては決められませんが、おおよそ数十万円〜、場合によっては数百万円単位の追加費用が出る場合はあります。こちらの費用は、一邸一邸事情が変わるため建築家としっかり確認しましょう。
プランによって一概にどこをどれだけ補強すると耐震等級 3 になるか?は異なりますが、工事内容としては壁や柱の追加、構造用合板の追加、梁を太くするといった工事になります。
構造計算は基礎から躯体、屋根や家のバランスなど非常に多方面から計算を行うため、補強は 1 箇所だけでなく様々な部位を補強する必要が出てきます。
3. 耐震等級 3 にする費用的メリット
それでは、耐震等級を取得するとどんなメリットがあるの?という観点から見てみましょう。
3-1. 地震保険が50%割引
耐震等級が高い家は、地震で倒壊・損傷するリスクが少ないことから、地震保険の保険料が割引になります。(耐震等級割引)
割引率は以下のとおりです。
- 耐震等級 3 :50 % 割引
- 耐震等級 2 :30 % 割引
- 耐震等級 1 :10 % 割引
地震保険の保険料は構造・都道府県によって左右されますが、代表的な相場を掲載します。(イ構造:耐火建築物・準耐火建築物・省令準耐火建築など / ロ構造:イ構造以外)
- 東京都 / 千葉県 / 神奈川県 / 静岡県: 27,500 円(イ構造)/ 42,200 円(ロ構造)
- 北海道など: 7,400 円(イ構造)/ 12,300 円(ロ構造)
- 大阪府 / 愛知県 / 三重県: 11,800円(イ構造)/ 21,200 円(ロ構造)
※ 2022 年 3 月時点 / 出典: 地震保険料算出機構・地震保険基準料率のあらまし
地震保険は保険会社によっての差はなく、また火災保険とのセットで最長でも 5 年加入です。例えば、東京都のロ構造の住宅であれば、5 年間で 211,000 円の地震保険料が 50 %割引になりますので、耐震等級 3 の取得で 105,500 円の節約になります。
なお耐震等級 1 でも建築基準法と同等レベルの耐震性ではありますが、より詳細な構造計算を行っていることから、耐震等級という認定を受けることで信頼性が増すことから割引を受けることができます。
3-2. フラット 35 S 利用なら優遇金利
※ 出典: 住宅支援機構
固定金利や、幅広い層に融資ができる点が魅力のフラット 35 ですが、耐震等級 3 を取得していると金利 A プランという最大の優遇が適用されるプランを利用できます。
金利 A プランでは借入金利から 0.25 %の金利の割引が 10 年間受けられます。例えば 35 年・1.7 %・3,000 万円の借入の場合、10 年間での優遇額は約 75 万円です。(参考総返済額:約 3,982万円 → 優遇後 約 3,908 万円)
金利 A プランは耐震等級 3 で適用する他にも、省エネルギー性や耐久性などの指標からも適用できます。フラット 35 を利用される方であれば、経済的なメリットは高いと言えます。
3-3. 資産価値の高い家としての認定
住宅性能評価制度の認定を受けていることで、第三者機関が確認している建物という信頼を得ることができます。万が一、自分の家を売却する際などに不動産屋・買主に対して説明がしやすく、その分売却がしやすいと言えるでしょう。
また住宅性能評価制度では、万が一の建築中・建築後のトラブル発生時に紛争処理機関を利用できます。
3-4. (リフォームでの適合証明)住宅ローン減税
新築をメインにメリットをお伝えしてきましたが、リフォームで耐震が気になっている方も少なくないでしょう。リフォームでは耐震性能を向上させることで、住宅ローン減税のメリットもあります。
条件としては築 20 年以内の中古住宅の購入、そして築年数が 20 年を超えている中古住宅では、耐震性能が現行の建築基準法に適合している適合証明があれば、住宅ローンの減税対象になります。
住宅ローン控除があれば、住宅ローンを組んでいる額に応じて納めている所得税や住民税が確定申告で還付されますので、経済的なメリットとしては大きいです。
4. 適合証明書は約 15 万円~(リフォーム)
耐震等級の話題から少し逸れますが、リフォームでの耐震性能の評価は適合証明書を用いることが多いです。
適合証明とは、既存の家が、現在の建築基準法上、適格かどうかの判定を行い、耐震性能を数値で表すもので耐震等級を決めるための計算ではありません。現在の建築基準法と同レベルであれば 1.0 という数値で評価され、それ以下の耐震性であれば 1.0 以下の数値、それ以上であれば 1.0 以上の数値で表されます。
費用は診断で 10 万円、書類発行申請で 5 万円が相場となっています。
リフォームで耐震補強を行う場合、自治体によっては適合証明書があれば減税が受けられる場合もあり、耐震等級 3 レベルの耐震性能を必ずしも必須としていません。耐震等級 3 は、耐震評点では 1.5 以上に相当しますが、基礎や構造躯体含めて大規模な耐震改修工事を行わないとクリアできないケースがほとんどです。
また行っている計算は、許容応力度計算のような詳しい計算でもありませんので、リフォームで耐震補強を検討している方も気軽に利用できます。
5. まとめ
まとめとしては、「耐震等級 3 を取得するための費用相場は約 30 万円~」、そして必要に応じて「工事費用の相場は 数十万円~」となります。
「構造計算にかかる費用」と「第三者機関への申請費用」が最低でも必要になってくることと、場合によっては建築コストも上がっていきます。耐震等級 3 は自分の財産を守るためにオススメしたい性能の 1 つですが、建築コストやデザイン、そして使い勝手に大きく影響してくる項目です。
建築家との家づくりは完全にオーダーメイドなので、どのレベルの耐震性能を目指すかというのも自由です。耐震にお金をかけ、その他の費用を極力抑える設計にすることで、限られた予算でも耐震性能にこだわった家づくりはできたりと、バランスを考えながら相談にのってくれる建築家を titel(タイテル)から探してみましょう。
タイテルでは専門家との無料相談 も行っていますので、個別のご相談などがある際はぜひお気軽にご利用ください。
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後悔しない家づくりをするためには、プロの意見を一度は聞いてみることがオススメです。