人工大理石とは?人造大理石や黄ばみ対策なども解説
人工大理石は種類ごとの特徴や使うときの注意点を知っていれば、シンクの黄ばみや傷を防ぎやすくなります。でも人工大理石の種類や、どんなことに注意して使えば良いかわからないという方も多いでしょう。
そこで今回は人工大理石の種類とその特徴や、普段使うときの注意点、汚れや傷の直し方などを解説します。読んでいただくと人工大理石を選ぶべきかどうか、判断できるようになるはずです。
まず、この記事のまとめポイントです。
- 人工大理石は樹脂を固めたもので、天然大理石の水に弱いことや金額が高いことを解消した素材である
- 高級感があり色や形を作りやすいメリットを持つが、傷やシミができやすいという欠点もある
- 人工大理石には汚れに強いアクリル系と、安価だが傷や黄ばみができやすいポリエステル系がある
- 人造大理石は樹脂と砕いた天然大理石を混ぜたもので、天然大理石に近い質感だが曲線を作ることが難しい
- 普段の掃除は水拭きや台所用中性洗剤で拭くことできれいになり、割れや黄ばみは補修で直せる
1. 人工大理石とは?
まず住まいのさまざまなところに使われる、人工大理石とはどんな素材かやその特徴をお伝えします。
1-1. 樹脂を固めた素材
人工大理石は、アクリルやポリエステルなどの樹脂を工場で固めて整形した素材です。さらに色を出すための顔料や、柄を出すための骨材を混ぜることもあります。家の中ではキッチンのワークトップや、洗面台のカウンター、シンク、お風呂の浴槽などに使われます。
1-2. 高耐久で低価格
人工大理石は、天然大理石に比べ高い耐久性を持っています。天然大理石は水に濡れると曇ってしまい、さらに酸性やアルカリ性の食材や調味料に触れると劣化してしまいます。しかし人工大理石の材料である樹脂なら、水や食材で傷むことはありません。
また天然大理石は採取できる場所が限られ、加工に手間もかかるためとても高価です。一方の樹脂は広く出回っている材料のため、特別高価なものではありません。人工大理石は決して天然大理石の模造品ではなく、欠点を解消した全く別の素材なのです。
2. 人工大理石のメリット
人工大理石は天然大理石の欠点を解消する以外にも、次のようなメリットを持っています。
2-1. 高級感がある
人工大理石はとても高級感のある素材です。特に石粒やマーブル柄を再現した製品は、天然大理石にとても近い雰囲気があります。キッチンに使われるステンレスや浴槽のFRPなど他の素材は、人工大理石と比べると重厚さに欠けるように感じます。
そうしたテイストが合う住まいのデザインもありますが、より品の良い高級感のある雰囲気にするなら人工大理石が最適と言えるでしょう。
2-2. さまざまな部屋に合う
人工大理石は多くの色や柄があるため、さまざまな部屋のデザインに合います。白系の人工大理石なら、モダンテイストの部屋から木の素材感があるナチュラルな部屋まで幅広くマッチします。
またグレーやブラックの人工大理石は、シックで落ち着きのある部屋やシャープなデザインの部屋をよりスタイリッシュにするでしょう。どんな部屋にも合いながら上質な雰囲気にしてくれるのは、人工大理石ならではの魅力です。
2-3. いろいろな形が作れる
人工大理石は樹脂を型に流し込んで作るため、いろいろな形ができます。そのためキッチンのワークトップのような平らな部分だけでなく、キッチンや洗面台のシンク、お風呂の浴槽といった曲線のある部分にも使えます。
天然大理石も曲線や凹凸を作れますが、高い技術が必要でさらに高額になってしまいます。手の届く価格でさまざまな部分を高い質感にできるのも、人工大理石の大きなメリットです。
3. 人工大理石のデメリット
多くのメリットを持つ人工大理石ですが、次のような注意点もあります。
3-1. 傷が付きやすい
人工大理石は柔らかく、すり傷などが付きやすい欠点があります。これは材料の樹脂の特徴であり、硬い天然大理石に比べるとどうしても劣ってしまいます。
しかし天然大理石は傷には強いものの、鍋などの重く硬い物がぶつかると欠けたり割れたりすることがあります。これは人工大理石も同じですが、より硬い天然大理石の方が修繕に手間がかかり高額な費用になります。
3-2. 天然大理石の質感とは違う
天然大理石は丹念に磨くことで、滑らかな手触りと見事なツヤが生まれます。しかし材料が樹脂である人工大理石は、磨きをかけても天然大理石ほどの質感になりません。天然大理石の石粒やマーブル柄などをリアルに再現した人工大理石もありますが、天然大理石の透明感と深みまで再現するのは難しいようです。
繰り返しになりますが人工大理石は天然大理石を再現した物ではなく、別の物と考えておいたほうが良いでしょう。
3-3. シミや曇りの恐れがある
人工大理石は汚れをそのままにしておくと、染み込んでしまう恐れがあります。これは人工大理石の表面に、目に見えないほどの小さな穴が無数に空いているからです。そのため調味料などが付いたときは、できるだけ早く拭き取るようにしましょう。
また汚れを落とそうとして研磨成分の多いクリームクレンザーや、研磨剤の含まれたスポンジでこするとツヤが落ちて曇ってしまうことがあります。そうした物でこすらないよう注意し、汚れ落としでは柔らかい布と食器用中性洗剤を使うようにしましょう。
4. 人工大理石の種類
人工大理石は材料の樹脂の種類によって、アクリル系とポリエステル系の2種類に分かれます。それぞれに異なる特徴があるため、人工大理石を選ぶときはどちらの樹脂か確かめるようにしましょう。
4-1. アクリル系
アクリル系人工大理石はポリエステル系に比べ汚れが染み込みにくく、表面が滑らかでお手入れがしやすくなっています。また透明感のある見た目が天然大理石に近く、ツヤの出にくいポリエステル系に比べ高級感があります。さらにさまざまな形にしやすく、キッチンや洗面のシンク、お風呂の浴槽などにも使われます。
4-2. ポリエステル系
ポリエステル系の人工大理石は価格が手頃なため、設備以外にも家具の天板などで使われ広く普及しています。しかしアクリル系に比べて柔らかいため傷が付きやすく、さらに熱い鍋などを置くと変色することがあります。さらに紫外線の影響を受けやすく、長く使っていると黄ばんでしまう恐れもあります。
キッチンなど住まいの設備は長く使うため、できるだけアクリル系人工大理石を選んだ方が良いでしょう。
5. 人造大理石とは?人工大理石との違い
人工大理石と似た名前の素材に人造大理石があります。この2つは作り方や材料の一部に共通する点はありますが、異なる面も多くまったく別の素材と言えます。
5-1. 天然大理石に近い
人造大理石は樹脂やセメントに、粉砕した天然大理石を混ぜて作ります。ほぼ樹脂のみで作られる人工大理石に比べ人造大理石の方が石目や柄がはっきりしており、より天然大理石に近い見た目になっています。
5-2. 曲線を作るのは難しい
人造大理石は天然大理石の成分が多く硬いため、シンクや浴槽のような曲線を作るのが難しくなっています。このため板の形で使われることが多く、キッチンや洗面台のワークトップ、ホテルの受付カウンター、床材などに用いられます。
5-3. 価格が高め
人造大理石は人工大理石よりも価格が高めです。材料に高価な天然大理石を使い、さらに材料を混ぜたり入念に磨いたりする作業が増えるためです。価格は高い順に、天然大理石>人造大理石>人工大理石となっています。
【コラム】アイカ工業も扱う「コーリアン」とは
人工大理石の代表的な製品に、アメリカのデュポン社が開発したコーリアンがあります。コーリアンはアクリル系人工大理石ですが、一般的なアクリル樹脂よりも透明度の高いメタクリル樹脂を使います。
その高い透明感から光を通すとまで言われ、アート作品に使われることもあります。また耐久性も非常に高く屋外のモニュメントやベンチなどにも使われ、その品質の高さから世界130カ国で販売されるほどの人気です。
日本ではクリナップなどのメーカーキッチンで、コーリアンのワークトップやシンクを採用しているモデルがあります。またコーリアンの日本法人や、建築用の化粧板などを扱うアイカ工業などから部材を購入もできます。例えばキッチンをオーダーメイドにして、ワークトップにコーリアンを使うのも良いでしょう。
より高品質な人工大理石を使ってみたいなら、コーリアンも検討してみてはいかがでしょうか。
6. 他の素材と比較
キッチンや洗面台、浴槽などには、人工大理石以外にもさまざまな素材が使われています。それぞれの特徴を知り、目的に合ったものを選ぶようにしましょう。
6-1. ステンレス
金属のステンレスは、人工大理石に比べ汚れが染み込みにくくなっています。また熱にも強く、熱い鍋などを置いても跡が付くことはほとんどありません。費用は人工大理石よりも抑えめですが、エンボス加工やヘアライン柄など高級感のある仕上げの製品は人工大理石と変わらないこともあります。
ただし固いものがぶつかれば凹み、鍋などを引きずれば細かな傷が付きます。特に凹みは補修が難しいため、物を落とさないよう注意が必要です。
6-2. ホーロー
ホーローは金属板の上にガラスを焼き付けた素材で、キッチンの扉やお風呂の浴槽に使われます。汚れや熱に強く、金属タワシでこすっても傷つかないほどの強度があります。また表面がガラス質のため肌触りが滑らかで、浴槽ととても相性の良い素材になっています。
ただし万一傷が付くと、ガラス質の再塗装をすることになり高額な費用がかかります。また製造には特殊な技術と専用の設備が必要なため、価格が高めで選べるメーカーも少ないのが現状です。
6-3. FRP
FRP は樹脂にガラス繊維を混ぜたプラスチック素材で、主にお風呂の浴槽や洗面台のシンクに使われます。ボートの船体に使われるほど防水性と強度に優れており、しかも価格が抑えめという特徴があります。
ただ表面が塗装で仕上げられているため、人工大理石ほどの高級感はありません。また他の素材に比べ傷付きやすく、年数がたって塗装が劣化してくると色がくすんだり汚れが付きやすくなったりします。
7. 人工大理石のお手入れや補修方法
人工大理石の普段のお手入れは決して難しくなく、傷が付いたり汚れたりしたときも他の素材に比べかんたんに補修ができます。
7-1. 掃除は水拭きと中性洗剤で
人工大理石は濡れたフキンなどでしっかり拭けば、十分きれいになります。調味料などのこびり付きは、水で薄めた台所用中性洗剤をフキンに染みこませ丁寧に拭けば落とせます。またアクリル系人工大理石なら、除菌用のアルコールスプレーを使っても問題ありません。
ただし調味料などをこぼしたままにしておくと、シミになる可能性があります。そのため汚れたらすぐに拭く習慣を付けておくと良いでしょう。
7-2. 黄ばみや割れは直せる
もし人工大理石に黄ばみやシミ、割れや欠けができても、部分補修で直すことができます。黄ばみやシミは磨いて、割れや欠けは樹脂で埋めて元の姿に戻せるため、ワークトップやシンクを丸ごと交換する必要はありません。
ただし黄ばみやシミを研磨剤入りのクリームクレンザーなどでこすってしまうと、曇ったような跡が残ってしまいます。また割れや欠けは埋めるだけだと、直した跡がはっきりわかってしまいます。
そのため黄ばみなどができたら、早めに専門の補修業者に連絡するようにしましょう。経験の豊富なところなら、黄ばみや割れを跡が残らないようにきれいに直してくれるはずです。
7-3. コーティングで汚れ対策
人工大理石をきれいに保つなら、表面にコーティングをするという方法があります。コーティングで人工大理石の表面に膜を作り、汚れや黄ばみ、傷ができにくくするのです。
最近は家を新築したとき、床にコーティングをする方が増えています。同じように人工大理石のワークトップやシンクにも、コーティングしてもらうことができます。あるいは初めからコーティングが施してあるカウンタートップやシンクもあるため、そういった製品を選ぶのもおすすめです。
8. 人工大理石を使ったおしゃれな住まい 7 選
実際に人工大理石を使った、おしゃれな住まいの実例を紹介します。
8-1. 2 つの内装を馴染ませるキッチン
わずかに色味を含んだオフホワイトのキッチンワークトップです。ベージュの床や壁と白い天井、背面収納の中間にあり、2 つの内装をグラデーションで馴染ませています。
8-2. シックなグレー仕上げのワークトップ
シックなグレーに仕上げられた、キッチンのワークトップです。キッチンの扉や床の色と統一感があり、しかもマットな質感が高級感を加えています。
8-3. 使う人に合わせた形のワークトップ
車椅子で生活されるご家族が鍋をのぞき込みやすいように、コンロ部分の高さを下げています。使う人に合わせて自由に加工できる、人工大理石のメリットを活かした事例です。
8-4. 優しい曲線を描いたキッチン
キッチンワークトップの端を柔らかな曲線に加工し、木目を多用した優しい雰囲気の内装とマッチさせています。また淡いベージュの入った色調が温かみを感じさせます。
8-5. カウンターとシンクを一体化
洗面台のカウンターとシンクを一体で作り、継ぎ目をなくしてお掃除を楽にしています。またデザインもすっきりしているため、とても清潔感のある雰囲気になっています。
8-6. 高級感のあるブラック仕上げ
深みのある黒と石目のおかげで、とても高級感のある洗面台のカウンターになっています。人工大理石はさまざまな色や柄にできるため、シックから明るめまで幅広い内装に対応できます。
8-7. 天然大理石のようなマーブル柄
天然大理石のようなマーブル柄が、薄く入った洗面台のカウンターです。シンプルなデザインの中にさりげなく高級感を加えています。自由に柄の濃淡を調節できるのも、人工大理石の強みです。
9. まとめ
人工大理石は樹脂を固めて作られ、天然大理石よりも耐久性があり価格も抑えめという優れた素材です。天然大理石を混ぜた人造大理石の方が風合いは勝るかもしれませんが、シンクや浴槽などさまざまな形にできるのは人工大理石ならではです。
普段のお手入れは水拭きなどでかんたんにでき、もし傷やシミが付いても専門業者に頼めばきれいに補修してくれます。さらにステンレスなど他の素材に比べ高級感があり、いろいろなデザインの部屋に合わせられる柔軟性もあります。
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