都市デザインシステム(UDS)の中国上海支店オフィスの内装計画である。今後同 社により展開される中国でのプロジェクトの起点となる場だ。通常の打ち合わせ室の他に、協力業者が日本から来た際に使用できる空間を持たせること、そしてそれらの空間と執務空間とは音や視線を分節することを要求された。
半透明なガラスなどで86m2程の小さなオフィスをほぼ半分に区切ると、とても狭く感じてしまう。そこで、空間を分節しながらも視覚的に拡大する境界面をつくり出す方法として、透明板ガラスにストライプ状の模様を蒸着したミラーで目隠しとする間仕切を提案した。この間仕切を通して見ると、ガラス越しの風景と、ミラーに映り込む手前の風景とが同一平面上に交互に隣り合って混在する。ミラーに映る自分があたかも向こう側の風景に溶け込んでいるような、実像と虚像の倒錯がおき、増幅した自分の分身がひとり歩きしてガラスの向こう側で別の人と会話をしているかのような錯覚を抱かせる。ストライプ状のミラー面の裏側は、壁と同色の白に塗られており、オフィス側から見ると壁と同化した白いストライプの隙間越しに、打合せスペース側の人の行き来を垣間見ることができる。 また、室内に差し込む外光により、ミラーが反射しその前面に映し出す光と、ミラー面の裏側に落とす影とが交互に織り成す美しい模様をつくり出し、時間的に絶えず変化する光景が生まれている。
デスクは、間仕切をまたぎ、壁伝いに一周する帯のような形状とした。仕切られた両方の空間を唯一横断していることから、実像として、またミラーに映る鏡像としても存在し、実像と虚像の倒錯をさらに強めている。床に敷いた芝色のカーペットは、窓から見える緑に連続し、視覚的にオフィス空間は拡大される。
上海は今ものすごいスピードとエネルギーに渦巻いている。ストライプ状のミラーにより手前の空間と奥の空間とが混在した風景はあたかも、対立的なものが隣り合わせになっている上海の風景そのものであるように感じる。
主要用途: オフィス
施工: SHANGHAI VESSEL DESIGN & ENGINEERING
所在・会場: 中国 上海
延床面積: 86.4m2
設計期間: 2005.8-10
施工期間: 2005.11
写真: 阿野太一