現代日本を代表する歌人、俵万智氏の初の本格個展「俵万智 展 #たったひとつの「いいね」『サラダ記念日』から『未来のサイズ』まで」の会場構成を手掛けた。本展は俵氏の短歌界の最高賞である迢空賞(ちょうくうしょう)受賞を記念し、角川武蔵野ミュージアム内エディット アンド アートギャラリーにて開催された。
35年にわたる歌業から厳選された約300首の短歌を、『サラダ記念日』、回廊、『未来のサイズ』の3つのエリアに分けて展示し、来館者は普段は目にすることのないスケールで展示される俵氏の言葉と世界観を楽しめる。ベストセラー『サラダ記念日』のエリアではピンクをテーマカラーとし、恋愛歌20首が施された大きなハートの什器や、学生時代に家族に寄せたはがきや手紙が巨大サイズに引き伸ばされて展示されている。これまで歩みをたどる会場中央の回廊エリアでは、平成の30年を代表する100首がアクリル板に浮かび上がる。壁面両側に設置されたミラーが合わせ鏡となり、個人史と社会史が蛇行する床に描かれた年表を映し出すことで、連綿とつづく時間の流れが描きだされる。年表にそって歩みを進めると展示室中央に柱がそびえ、その4面には各面が向かうエリアの年代を象徴する短歌が印字されている。柱を超えた先の鏡には反転文字が映し出され、来館者は鏡越しに文字を読み、展覧会場の広がりが感じられる。『未来のサイズ』エリアでは、俵氏の心象風景でもある石垣島の映像を投影し、来館者はこれを4面にミラーを貼った家型の什器越しに望む。天井からは短歌の書かれた「空気の器」が300個吊り下げられ、短歌が風になびくよう演出した。
会場内に展開する俵氏の言葉の中を歩くことで、膨大な資料とともに歌の世界を体験し、新たに言葉や歌と出会える空間を目指した。
主要用途: 展示会場構成
施工: 角川大映スタジオ、サインアーテック、クリオ、裕和、福永紙工
クレジット: グラフィック: アフォーダンス
所在・会場: 角川武蔵野ミュージアム エディット アンド アートギャラリー
延床面積: 304㎡
設計期間: 2021.04-2021.07
施工期間: 2021.07
会期: 2021.7.21-2021.11.7
写真: 小川真輝
ウェブサイト: https://kadcul.com/event/42