東京国立近代美術館で開催された高松次郎(1936-1998)の回顧展「高松次郎ミステリーズ」の会場構成。
この展覧会では、3人のキュレーター(桝田倫広・蔵屋美香・保坂健二朗)がそれぞれ初期・中期・後期の3章を分担した。各章ごとにスタイルの異なる作品群を、関連性を追って丁寧に見せながらも、全体としてはひとつの大きな広場を散策するような、おおらかな展示空間が求められた。
展覧会の導入部となる、「影ラボ」と名付けた細長い展示空間は、体験型のインスタレーションの場とした。異なる光源で影が二重に見えたり、回転する椅子の影が投影されたりと、4つのテーマで高松の中期の作品のポイントを体感的に知ることができる。
影ラボを抜けるとメインとなる展示室にたどり着く。もともとこの展示室には、断面形状の異なる6本の柱が林立している。そこで、この6本の柱を、構造体としての存在を消しつつも、展示空間全体の風景を構成するヴォリュームとして扱えないかと考えた。近接する柱と同じ断面形状の疑似柱5本と展示什器を新たにつくり、既存柱の存在を紛らわせる計画とした。大小の白いヴォリュームが点在することで、次の展示エリアが見え隠れし、一体の展示空間の中に適度な分節を与えている。
3章の最後には、展示室の中央にある大きなステージにたどり着く。1章のエリアから視界に入っていた中央の白いヴォリューム内部は、高松のアトリエを偲ばせる木質系の表情があらわになっている。中央のステージからはこれまで見てきた作品群を俯瞰することができ、腰壁に配された高松の言説とともに、これまでバラバラに見えていた作品間の関連性に気づかされる。ステージ上は休憩のためのスペースで、晩年のスケッチから再現した形のクッションに腰を下ろして図録を読むことができる。このステージの大きさは、ちょうど高松が制作活動を行っていたアトリエと同等の大きさで出来ており、高松の制作の空間を象徴的に重ね合わせている。
約200点に及ぶ作品群を通じて高松の思考を追体験しながら、その背後にある関連性を読み解いていくようなミステリーを空間で演出したいと考えた。
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©The Estate of Jiro Takamatsu, Courtesy of Yumiko Chiba Associates
主要用途: 展示会場構成
施工: 東京スタデオ
クレジット: 主催:東京国立近代美術館/グラフィック:菊地敦己/「影ラボ」の照明:遠藤照明
所在・会場: 東京国立近代美術館
延床面積: 1118m2
設計期間: 2014.02-2014.10
施工期間: 2014.11
会期: 2014.12.2-2015.3.1
写真: 阿野太一
ウェブサイト: http://www.momat.go.jp/Honkan/takamatsujiro/index.html