渋谷ヒカリエ内、モバイルITビジネスを手がける企業のオフィスの内装計画である。2200㎡のフロアに、レセプション及び会議室を内包する社外スペースと、社員約400名の執務スペースとを持つ、広い空間を活かしたオープンなオフィスが求められた。
社外スペースは、カフェのようなパブリックな場とし、31階の眺望を活かしたエントランスが来客を迎える。社外スペース内の大会議室は、外部のビル群がモチーフのグラフィックを配した可動壁で、会議、パーティなど状況に応じてオープンとクローズをスイッチできる仕組みとした。テーブルやプランターなど什器はすべて可動式で、ミーティングの場をフレキシブルに変化させる。
執務スペースは、長く大きなデスクを大胆に斜めに振って配置していくことで、周囲に変化のあるパブリックな場所を作り出す。パッチワーク状のカーペットが、各デスクや各部署をまたぎ、空間に変化と彩りを与える。角度の交錯する場所をジャンクションとし、縁台や色とりどりの家具を配することで、社員同士のコミュニケーションを誘発するよう計画した。広大なスペースの目印となるよう、デスクの間には、一部を地形や風景に見立てたランドマークシェルフを点在させている。シェルフの染色されたオーク材の表情とピンナップボードの質感が、執務空間に温かみを与え、特徴的なフォルムが、エリアを緩やかに分け、ワークスペースにユーモアと活気が生まれる。
また、什器のランドスケープの中を、超音波加湿器の湯気をポッポッと出しながら走るトロッコは、Androidを搭載しモーターを制御。書類の出し入れ、駅に貼られたマーカーをセンサーで認識し、書類を各部署へ運びながら、社員をつなぎとめるように窓際をのどかに走っている。
広大なオフィススケープに対して、「Creative Farm」というコンセプトを掲げ、渋谷という先進的な街にありながら、自然の素材やモチーフを扱い、温かみを同時に感じるような、アイディアを生み出すプラットフォームとなるオフィスを目指した。
主要用途: オフィス
設備設計: USHIOSPAX(照明)
施工: 東急建設/高島屋スペースクリエイツ/内田洋行
クレジット: プロジェクトマネジメント:明豊ファシリティワークス/家具協同設計:藤森泰司アトリエ/グラフィック:高い山/トロッコ開発、製作:緒方壽人/家具協力:インターオフィス
所在・会場: 東京 渋谷
延床面積: 2268m2
設計期間: 2011.09-2012.04
施工期間: 2012.05-2012.08
写真: 阿野太一/大森有起