密集した住宅街でプライバシーを確保しながら、
開放的な庭を感じる都心の住宅。
都心の住宅を限られたスペースで実際の面積以上の広がりが感じられるようにする。そのために、庭が果たす役割は大きい。我々は、庭の配置から検討を始めた。
日の当たる敷地南側にまとまった庭を取ることを考えたが、庭に面する南側の部屋と、庭に面しない北側の部屋ができてしまう。そこで、敷地東側に南北に細長い「露地ガーデン」を設け、西側に建物を寄せることにした。すると、庭は、南側からの太陽の光や、風、木々の木漏れ日を敷地の北側奥まで届けてくれることがわかった。開放感あふれる庭に、すべての部屋が面するよう配置した。
メインの「露地ガーデン」の他にも、小さな庭を置いた。お風呂には専用の「バスガーデン」。隣接する建物が迫っている北側には常緑樹を設け、プライバシーを確保しながら緑を楽しめる、開放的は浴室だ。屋上には360度の眺望を楽しむことのできる「スカイガーデン」。密集した住宅街とは感じさせない、空と、緑に包まれた、開放的な屋上庭園である。
地上から屋上まで立体的に続く、「露地ガーデン」「バスガーデン」「スカイガーデン」は、住宅全体を庭で覆うことになる。空から見たこの建物は庭で覆われたまさに「立体庭居」である。
道路から見たこの建物は、道路側に堅牢な壁を設けて街を拒絶する建ち方の住宅とはまったく違った表情だ。「露地ガーデン」が顔を出し、他の二つの庭も道路から見える。太陽の明るさや、木々の揺らめき、水の流れる音が、敷地内で完結することなく街にこぼれだす。そうやって、この住宅は周囲の景観に貢献する「街の庭」となっている。
露地ガーデンは奥行きが約3m、間口が約14.5mある。躯体が立ち上がった時にはなんて狭いスペースだろうと愕然とした。コンクリートの壁があるだけでは、空間に動きが生まれず、人を寄せ付けない雰囲気があった。しかし、植物や、景石、蹲、小川、橋、灯篭などをひとつずつ置いていくうち、狭いと感じていたスペースに、広がりのある動的な空間が生まれていて驚いた。庭を構成する要素は、コンクリート壁とは比較にならない、複雑さと奥行きを生む。解像度が一気に上がった庭を見ると、そこかしこに小さな宇宙が潜んでいる感覚に陥る。常に変化し続ける景色。庭との終わることのない対話が続いていく。















場所: 東京都目黒区
用途: 住居
建築設計: IKAWAYA 建築設計
構造設計: yAt構造設計事務所
設備設計: ZO設計室
施工: ZAE
敷地面積: 176.37㎡
延床面積: 272.94 ㎡
竣工: 2017年
撮影: 川辺明伸