都心にありながら、どこにいても豊かな自然と、
クラフトやアートを感じられる家が求められた。
東京の閑静な住宅街に建つ3 階建てのRC 造住宅である。敷地は都心の屋敷跡ということもあり、周辺には豊かな緑が蓄えられていた。
クライアントはそのエリアに長く住んでおり、その土地の良さも環境も深く理解していたが、借家では叶わなかった所有しているアートや家具などを美しく魅せることや、近隣環境を取り込んだ豊かな家を作ることを望み、プロジェクトがスタートした。
配置計画と建築計画は、そうした豊かな周辺環境を考慮し、外部環境との関係から組み立てている。まず、できるだけ効果的な庭をつくるため、建物は敷地の北東側に寄せ、南西側に細長く庭をとっている。2階にはゲストルームとマスターベッドルームの緩衝地帯として、またリビングへ光を落とすために開放された中庭を設けた。3階は北東側に大きく庭をとり、外部からの目線が切れる程度に生垣を配し、アウトドアバスルームと隣家の緑が借景となるテラスを配置。アウトドアキッチンと一体でつくられた階段を登っていくと、都会の景色と涼風を楽しむためのテラスがあり、外部で使用できるソファを配置した。近隣の植栽による借景を活かしつつ、プライバシーを守りながら建物内外の植栽と一体化し、新たな住環境、そして近隣環境をもつくりだしている。
クライアントが所有する版画や家具を鑑賞できるスペースについても、設計当初から検討した。アートが美しく生活と混ざり合う、あるいはアートがあるべき空間として、特に材料、さまざまな建築的なディテールには細心の注意を払っている。 竣工後、数年が経ちクライアントは西側の隣地を買い増し現在は庭として整備されている。庭の中心に小山を作り、リビングから見えてくる庭の距離感を整え、その奥にガーデンハウスを作っている。庭のみならず10年の間に小さな改修工事を繰り返し進化している。それ故でもあるのだが、10年経っても全く古びることなくいつも心地よい空間で迎えてくれる。
Site: 東京
Architect: 芦沢建築設立事務所
Project architect: 芦沢啓治/本条理恵
Structural engineer: ASA 鈴木啓
施工: 松本コーポレーション
Photo: Daici Ano