食卓とキッチンを囲むための家。
家族の生活を囲う家は、明るさとにぎわいを囲う家になりました。
吉祥寺で40年。いつ暖簾をくぐっても賑わいの絶えない秋田料理屋を営んでこられたご両親とそのご家族は、とにかく客人をもてなすことが好きなのである。
打合せの度に用意してくださる昼食は、料理店をやられるている家族ならではの味と品数。家族6人と僕らとで一つの食卓を囲むのがいつの間にか打合せの楽しみとなっていたほどである。
ご両親と子家族の6人と犬2匹のための家である。
かつてお母さんが育った土地を受け継ぎ建て直すこととなった。
武蔵野の地。玉川上水近くの敷地周辺は畑も緑も残る住宅地。敷地の南側には家が建たない駐車場があり、冬の低い太陽もサンサンと受け止めることができる。
食卓とキッチン。団欒の形から設計が始まった。
近所に住む弟家族も集まれば10人の団欒の場所として、まず大きなテーブルを用意した。
食卓を家の中心と考え、囲うようにキッチン、リビング、水回りを配する。
ダイニングの先には外へと繋がるように、窓先にデッキで作られた中庭が続く。
にぎわいがそのまま外へとはみ出すように、中庭という外の部屋がひとつつながっているように感じさせる。
お店を閉め、家で過ごすことが多くなったご両親の寝室は、中庭の壁の先、離れのように計画した。
子家族のスペースは2階になる。キッチン、浴室は一階に共用としたため、3部屋の居室とサンルームを確保した。
家事スペースとなるサンルームは2階の南側、トップライトを有し、日差しをたっぷりと受け止める。
サンルームから寝室へは外のデッキで繋がっている。まだまだ小さな子どもたちにとっては回遊できることが楽しくてたまらない様子。
子どものための装置としては他に2階の廊下に雲梯(うんてい)を吊り下げた。
成長に合わせて高さを変えられるよう製作した雲梯は、大人にとっても楽しい仕掛けとなっている。
下階の寝室の上には同じように寝室を設け、1階のリビングと水廻りの上にも高さと形状に合わせた居室をそれぞれ設けた。
団欒を囲う家は、外から見ると小さな家々が集まっているように見える。
窓を有した小さな家を囲むように並べ、楽しい団欒を内包するようにした。
陽が沈み、あたりが暗くなれば窓から町へとその団欒が溢れていく。
主要用途:一戸建住宅(二世帯住宅)
構造規模:木造 地上2階建
敷地面積:146.61㎡
建築面積:58.37㎡
延床面積:115.08㎡
用途地域:第一種低層住居専用地域(40%,80%)
防火地域:法22条
設計期間:2019.08~2020.06
工事期間:2020.06~2021.02
所在地 :東京都武蔵野市
設計監理:TAIMATSU
共同設計:山内祥吾(山内建築アトリエ)
構造設計:犬飼基史(佐々木睦朗構造計画研究所)
施工 :株式會社 山菱工務店