2019/ Apartment-house Renovation/ Kanagawa
能動性を引き出す立体住戸リノベーション
駅から続く坂道を越え10分ほど歩いていくと、緑に包まれた小高い丘が現れます。その丘の上にこの白く小さな建物は建っています。Bateau-Lavoir(バトー・ラヴォワール)と呼ばれたここは、フランス人版画家ベルナール・カトランがかつて作品制作のために過ごしたアトリエ兼住居でした。花を好み、独特の色彩で描くカトランのために、庭には桜、梅、紅葉、木蓮、金木犀、椿、藤といった四季折々に色付く木々が植えられていました。
その後カトランが亡くなり、暫く住人のいなかったこの建物を集合住宅へ改修することとなりました。ここで我々に求められたのは、6室設けること、豊かな庭に開くこと、そして猫と共に暮らす住まいを描くことでした。
猫は室内飼いが前提でした。そこで立体的に動く猫の習性に合せて各室を二層構成のL字型住戸とし、奥を感じながら動きたくなる空間を目指しました。また美しい庭木に面して窓を設えることで、窓辺から風に揺れる木々や花が眺められるようになり、やわらかな木漏れ日も室内へ流れ込み始めます。そして花に合せて壁や天井に色をのせ、季節や時間の移り変わりによって変化する表情をつくりました。
かつてカトランが自然の彩に囲まれながら豊かな時間を過ごしたように、ここでの暮らしがより美しいものとなることを期待しています。